TVとお薬2006、Ch 1
Channel 1 時代劇

 TVで時代劇を見てると、ときどき病気のシーンが出てきます。

 今でいえばきっとこの病気だろうと見当がつくこともありますし、さて何の病気だろうということもあります。
 お薬も登場しますが、どうしても、効くのかな?と思ってしまいます。



 そんな中で、妙齢の美女が、急にお腹が差し込んで、うずくまって苦しんでる。

 そこへ通りかかった黄門さま、印籠から出したお薬を飲ませると、あら、不思議、痛みはたちどころに...こんな場面ありますね。
 この病気、おそらく胆石の発作じゃないかと思います。

 では、そのお薬とは?

 黄門さまのこのお薬、牛黄(ごおう)と言う生薬じゃないかと言われています。
 牛黄の原料は、牛の非常に珍しい胆石です。
 牛の胆石が人の胆石のお薬になる...何だか面白いですね。
 もちろん、こんな貴重なお薬、古くから黄金より高価で、とても一般庶民の手に届くものではありません。

 熊胆(くまのい)、ちょっと年配の方は聞いたことがあるかもしれませんが、熊胆も昔から胆石のお薬でした。
 熊胆の原料は、読んで字の如く、熊の胆のうです。
 これも貴重なお薬でした。

 牛の胆石や、熊の胆のう、本当に効くのかなと思われるかもしれませんが、熊胆の主成分であるウルソデソキシコール酸は、化学的に合成されるようになってから、今では、胆汁の流れを良くするお薬として一般的に使われています。
 もちろん健康保険が適応されます。



 一方、お金が無くて病気のオトッツァンによく効くお薬が買えず、家族みんなが悲しんでいる場面。

 例えば、けなげな娘さんはオトッツァンのお薬代にともうすぐ身売り...オトッツァンが落ちぶれて貧乏になったのは、あの悪徳代官の...黄門さま〜、早く印篭を...よくあるスキットです。

 高麗人参も昔から万能薬として有名です。
 でも、高麗人参は、江戸時代に「人参飲んで首くくる」と言われたほど高価な薬です。
 一日あたりのお薬代は金一両(現代に換算して約10万円)もしたとも言われています。
 OECDの『世界経済の成長史』によれば江戸時代末期の1820年の日本1人あたりGDPは704ドル(約7万9千円)だそうです。

 「人参飲んで首くくる」...なるほどですね。

 蛇足ながら、我々が普段食べてる人参は、高麗人参とは全く別種の植物です。


 弱者・一般庶民が病気になれば、気の毒な時代でした。

 今の日本、そういう話は全くないとは言いませんが、お薬・医学だけではなく医療も社会も時代劇の時代からは考えられないほど変わりました。