TVとお薬2006、Ch 3
Channel 3 HIVのお薬

 以前ほど、TVや新聞に「エイズ」の見出しを見なくなりました。
 しかし、決して、患者さまが減ったわけではありません。
 画期的な治療法が見つかったわけでもありません。

 UNAIDS/WHO は、
 「2005年末の全世界のHIV感染者は4030万人。
 その内、サハラ以南のアフリカでは2580万人、その地域では1年間にエイズで240万人が死亡。」
 と報告しました。



 HIVに対するお薬はいろいろ開発され、充分に満足できるとは言えませんが、かなりの効果が期待出来るようになりました。

 ところで、一昨年から、アフリカでHIVに対するお薬の値段が大きく問題になりました。

 では、その値段とは...

 標準的な治療は、3種類のお薬を併用します。
 日本でのこの3種類のお薬の値段は一日あたり約6200円、一年間では約230万円...もっともこれは実費での値段で、患者さまの実際の負担はこの一部です。

 ところで、日本1人あたりGNI(=Gross National Income:国民総所得)は37,180ドル=約417万円です。
 サハラ以南のアフリカ諸国1人あたりGNIは470ドル=約5.3万円(日本の79分の1)です。

 日本では、230万円は1人あたりGNIの約0.6年分ですが、サハラ以南のアフリカでは1人あたりGNIの実に40年以上分です。
 ちょっと、乱暴な計算ですが...
 サハラ以南のアフリカの方にとって230万円とは、日本人の感覚では、230万円の79倍、即ち1億8200万円です。

 これでは、どんな制度をもってしても、サハラ以南の一般の患者様が等しくHIVの治療を受けられるはずがありません。



 医学的にいくら良いお薬でも、病気の方に使ってこそ、はじめて良いお薬です。

 現代の私たちにはあたりまえでも、あたりまでなかった時代があったこと、今でもあたりまえでない地域があることを、忘れないでください。