教育職員免許法と養護教諭 |
文部省体育局学校健康教育課教科調査官併メンタルヘルス教育専門官
三木とみ子 先生
教育職員免許法の一部改正が成立しました。今回の改正の主な事項は次のとおりです。
1 「教職に関する科目」を充実し、教え方や子どもたちのふれあいを重視し、これにかかわる科目の充実
2 社会人の活用促進のための特別免許状制度・特別非常勤制度の改善
3 養護教諭による保健の授業を担任できることを可能とした制度的措置
4 特殊教育諸学校での教科指導に関する弾力的な措置
5 短期大学専攻科在学者に一種免許状取得を可能とする措置
文部省令における改正のうち、特に養護教諭養成カリキュラムについては次のとおりです。
教諭の「教職に関する科目」の改善方向と同様の観点で、新カリキュラムを構成、その主なものは以下の通りである。(一種免許状の場合)
@ 教師としての使命感等を涵養するための「教師像」=「教師への志向と一体感の形成に関する科目」の新設(なし→2単位)
A 教育課程に関する科目の充実(2単位相当→4単位相当)
B カウンセリングに係わる内容付加に伴う生徒指導科目の充実(2単位相当→4単位)
C 地球環境など今日的課題を指導に生かす「総合演習」の新設(なし→2単位)
D 養護実習の単位増(3単位→4単位、このほか事前事後指導1単位)
(1) 科目の新設
@ 「学校保健」中の養護教諭の職務に係わる内容を「養護概説」(2単位)として独立
A ヘルスカウンセリングに係わる「健康相談活動の理論及び方法」(2単位を新設
(2)科目の名称変更
科目「精神衛生」の名称を「精神保健」変更
この科目設定の趣旨と特質は次のとおりです。
いじめや不登校など、心の健康に係わる問題が増加かつ深刻化していることを踏まえこれらの解決には「心とからだの両面」への対応が今後ますます重要視されることが、この科目新設の趣旨である。また、この科目を特質として次の3点があげられる。
@養護教諭の職務の特質を生かすこと
A保健室の機能を十分に図ること
B関係者との連携を十分に図ること
養護教諭は、学校の教育職員の中で医学的素養・看護学的素養を十分に備えた教員として教育的機能を基盤におき、身体的ケア・精神的ケアを行うことをとおして今の教育の様々な課題に係わる必要がある。この際、養護教諭の立場を十分に生かして関係職員との連携を図り十分な効果を上げるようにすることを忘れてはならない。
養護教諭の免許状を有する者(3年以上養護教諭として勤務したことがある者に限る)で養護教諭として勤務している者は、当分の第3条の規定にかかわらず、その勤務する学校(幼稚園を除く)において、保健の教科の領域に係わる事項(小学校または盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部にあっては、体育の領域教科の一部に係わる事項で文部省で定めるもの)の教授を担当する教諭または講師となることができる。 |
このことは、いじめ、不登校、薬物乱用、生の逸脱行動などの現代的な課題への対応と共に健やかな心身の発達を援助するために養護教諭の持つ専門的な知識や技能を活用するために講じられた措置である。ここで特に強調したいことは次の3点である。
@「養護教諭に対して教科を担任できるような道が閉ざされているか、開かれているか」これは法律改正のもんだいである。
A「授業を自分が持つか、持たないか」これは、学校の協力体制がとれるかどうかが大きなポイントとなる。
B「授業ができるかできないか。(教科としての授業に養護教諭がかかわり、専門性を生かせるかどうか)」これは、養護教諭のそれぞれの特質の問題であり指導力が問われることになる。
すなわち、養護教諭の職制以後このことは大きな変革であり、意義深いことであるが、この場合もっとも大切なことは、明日からすぐに、すべての養護教諭が授業に係わることではないということを、特に留意する必要がある。自校の保健室の状況がどのようになっているか、本来の担当者である「体育、保健体育」の担当者との調整と連携をどのように図るかが重要なことである。
それぞれの養護教諭に望むことは、自校の子どもたちと共に養護教諭のアイデンティを確立すること、また、しっかり向かい合って、何が一番重要な課題なのか、どの課題に優先的に関わるのかなどを主体的に考え判断する必要があるということである。