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温泉愛好者となる前は

 今から9年程前の話。秘湯がブームになりかけた頃の話である。 温泉ビギナーの時代に温泉選びに失敗したことがあった。

 旅行代理店に鄙びた温泉宿はないか、と聞いてみた。 そうしたら、なんと山陰の三朝温泉の旅館を紹介されたのである。 正月休みを利用しての旅。 今ならばもっと気の効いた場所を選ぶのだが、その頃の私は旅行代理店の言うがまま。 三朝に決めた。

 三朝温泉に着いて、吃驚したのはここが鄙びてなかったということ。 歓楽街はある。射的はある。橋のたもとにある露天風呂は宴会あけのグループが浴衣を脱いではしゃぎまわっている。三朝は 大人の遊び場としての温泉だったのだ。旅館は水車で有名なH屋別館というところ。 ここで貴重な、めったに味わえない体験をしたのだ。 原因は担当の仲居さんにあった。

 彼女と二人の旅。つきあいはじめて約1年の頃。温泉旅館に二人で泊まるのも初めて。 ちなみに、彼女との年の差は11歳。そりゃ、私は老けているかもしれん。 彼女は若く見えるかもしれん。で、起こったことというと・・・・・。

 食事の時であった。部屋食。御飯をよそってくれる時に、仲居さんは身の上話をしはじめたのである。 曰く、旦那さんが浮気をし、罰があたって死んでしまった、というもの。 話の間に「やさしいでしょ」だの「男の人はねえ、しょうがない」だのを挟んでくる。 つまり、この仲居さんは私達を不倫カップルだと思い込んでいたのだ。 ちなみに、つきあって1年ぐらいでぎこちなかったかもしれないけど、不倫では絶対なかったのだ。現在、この彼女は妻となっている。 で、この仲居さん、言うことだけいうと、「この天婦羅お熱いですから、気をつけてね」と、出ていった。 天婦羅はとうに冷えていた。

 旅館を出る時、仲居さんが私が肩にかけていたカメラを見つけ、「写しましょうか」。 不快な思い出撮ってもらっても、しょうがないじゃない。 それで、断ると、仲居さん、我が意を得たり、やっぱり不倫だったんだ、と深い意味シンの笑みを浮かべたのである。

 まあ、ひどい仲居さんがいたもんだ。これにより、私達は温泉旅館に泊まることを1年程さけていた。 ただ、三朝のお湯は本当に良かったけどね。疲れがとれる湯ではあった。

 何故、温泉旅館に泊まるようになったかというと、これも偶然なのである。 大分県の長湯温泉に泊まることになった。以前の失敗をさけ、国民宿舎に予約した。 ところが出版社のミスで電話番号が間違っていた。 温泉ガイド本を見ながら、説明で「山を背にして堂々と建つ」というキャプションにここは行きたくないね、といっていた旅館であった。 半ば怒りながら行ってみると、写真よりも数段いいのですね、これが。手入れの行き届いた感じ。 女将さんも愛想が良かった。しかも、宿泊料がただの7千円。料理もこの値段で豊後牛のステーキが出た。 お風呂も小さいけれど露天風呂がある。この旅館は「豊泉荘」。今までのいきさつを忘れて、すっかり温泉旅館のファンとなった。 これからである、温泉旅館を巡り出したのは。

 出版社のミスに感謝。運命の悪戯に感謝。これが温泉ファンになったきっかけであった。

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