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山丹正宗(愛媛)

 今治の寿司屋で、知り合いの社長と新聞社の人々と呑んだ。地方の会社だが、九州、中国、近畿でアイデア溢れる製品を展開しているところの社長。取材をお世話したこともあり、礼を兼ねての奢りである。カウンターに並ぶ瀬戸内海の幸を、大将の説明とともに口にする。
 酒は今治の地酒、山丹正宗の大吟醸が出てきた。
 以前、新聞社に送った酒の中に、山丹正宗を入れていた。新聞社で飲み会をした折、この酒が好評だったと聞いていたから、寿司屋に頼んでおいたのだ。どっしりとした力強い酒である。純米特有の日本酒らしい重みがある。しかし、口の中では爽やかに軽みを持つ。香りは薄いが、存在感を主張する酒である。しかも、瀬戸内の幸、とくに鯛や鱸など白身の微妙な旨味を引き出してくれる。地方の風土にあった地酒の中の地酒なのである。
 皆で酒の話になった。
 「芯のある酒である。どっしりと根付いた酒である」
 日頃、無口な社長が口を開いた。
 「社長業にも芯が必要だ。皆の意見に同調するだけでも、自分を主張するだけでも駄目なんだ。多くの人がともに調和することが発展に繋がる。そう思う」
 社長はそう呟くと、すずしい顔をして、箸と盃をすすめている。
 真面目で真剣なものづくりは、多くの人の心を打つ。
 僕は、酒を呑みながら、そう思った。

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