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焼鳥生態学/お年寄り篇

 ここの焼鳥屋、開店してからもう30年になるかいな。おいさん、若いときからここに来よんのよ。ここが特等席じゃ、ここがおいさんの席。いっつもここに座る。ここが空いてないときは、寂しなるわいの。同じもん食べても、旨い、思えんときがある。

 食べるもん。いっつも同じよ。ここの大将もわかっとるけん、あれいうたらすぐに出てくる。ええ材料が入っとったら、教えてくれるけんな、その時はそれ頼んだらええ。

 30年、ずっと大将を見とるわけよ。大将が機嫌がええか、悪いかがすぐ解るんよ。ほら、見てみ。コテを持つ手の親指。ちょっと立っとるじゃろが。これが機嫌のええ証拠。悪いときは、親指がコテから離れとる。のぅ、ニコニコしとろが。この大将、いっつもブスっとしとるのに珍しいことよ。これもあんたの人徳かもしれん。

 大将や女将さんとは家族同様よ。この店に来るんは、おいさんの家に帰るような気分じゃ。

 30年の間、大将とおいさんは、焼鳥屋と会社と場所が違ごうても、一緒に人生を戦い抜いてきた戦友じゃけんな。戦いに疲れたとき、やすらぎやらいうもんが欲しいときは、この店に足が向いとる。この大将は、人生の戦いでも大将よ。何にもいわんけどの、おいさんらをじぃっと見よる。この店は司令塔じゃ。あぁ、ちょっと酔いが回ってきたんかいのぅ。いわんでもええこというてしもた。

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