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ロバート・ミッチャムは、犯罪者でした。16歳のとき、ジョージア州サバンナの留置所に収監されていたのです。罪はというと、「鉄道所有地での不法行為」。つまり、ホーボーとして、列車に無賃乗車し、貨車で眠る生活をしていたのです。
また、マリファナ所持で逮捕されたこともありました。(このことは「ハリウッド・バビロン」〈ケネス・アンガー著〉に書かれてあったと思うのですが、手許に本がないので詳しく書けません)
ミッチャムが映画界に入ったのは、25歳から。三流西部劇が彼のデビューでした。
やがて頭角をあらわし、「GIジョー」「眼下の敵」など、軍人役がよく似合う名優となりました。
「情婦」「スパルタカス」の名優・チャールズ・ロートンが監督した「狩人の夜」での偽伝道師・ハリー役は、彼のすぐれた演技も加わり、良い作品になりました。
刑務所で、同室の犯罪者(ピーター・グレイブス)の家に1万ドルが隠されていることを知ったハリーは、その家に向かい、未亡人(シェリー・ウィンターズ)と子供たちに取り入ろうとします。未亡人は心を許すのですが、子供はハリーの邪悪な気持ちを見抜き、なつこうとしません。子供たちは兄妹で、1万ドルは妹がいつも持っている人形に隠されています。
ハリーは周りを信用させ、未亡人と結婚するのですが、妻を殺害。子供たちは、小舟に乗って逃げ出しました。
執拗に追うハリー。子供たちは、孤児を育てているクーパー(リリアン・ギッシュ)を頼りました。ハリーの正体を見抜いたクーパーは、州兵の協力を得てハリーを逮捕します。
この映画の見どころは、ミッチャムの演技。神の名のもとに、周囲の人々をあざむく、うさんくさいハンサムを嬉々として演じています。圧巻は、右に"HATE"、左に"LOVE"と入れ墨した手で、
カインとアベルの説話を語る瞬間。わかりやすさが、うさんくささに変わるよう、演技しています。この入れ墨は、「ブルースブラザース」のエルウッド兄弟(ベルーシ&エイクロイド)が、パロディにしていました。
賛美歌にのって進行するストーリー、川を下る夜空の美しさや構図など、素晴らしい映像火です。加えて、ハリーに対する敬愛と憎悪の180度変わる評価や扇動される大衆の愚かしさも描写しています。
「狩人の夜」でのミッチャムの演技は好評を博し、オファーを得たのが「恐怖の岬」。1991年、マーチン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロが犯罪者を演じた「ケープフィアー」のオリジナルです。
ここでミッチャムは、知能指数の高いサディスティックな犯罪者マックスを演じます。対するは、いかにも誠実そうな弁護士サムのグレゴリー・ペック。
ストーリーは、サムの証言で刑務所生活を送ったマックスが出所し、サムの家族を襲い、復讐を果たそうとするというもの。
ミッチャムは、ここでも怪演し、自己愛から自分の行動を正当化するとても賢い犯罪者を演じています。「羊たちの沈黙」のレクターに似た変質者の王者です。(「ハンニバル」や「レッド・ドラゴン」のレクターではありません)
リー・J・トンプソンの演出は、とてもオーソドックス。当時では見せられない変質者の描写を省略と暗示でうまく処理しています。
ミッチャムは、自分のことを「トカゲの目、アリクイの鼻」と語っているように、自分のことを冷製に判断できる人でした。そのことが、彼を名優の座に押し上げたのてしょう。
ただし、映画界に入ることができたのは、彼が「トカゲの目、アリクイの鼻」を持つハンサムだったことなのですが。
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