斎戒を成立させるには、次の二点を全うすることが肝要。
@斎戒のニーヤ(意図、気持ち)を持つこと
Aファジュルからマグリブまでの間、斎戒を解いてしまうものを戒めること
<ニーヤに関して>
ニーヤを持つとは、斎戒をしようという気持ちを心の中で持つことである。その気持ちをあえて口にしなくてもよく、意識せずに「斎戒をする」という文言を口にするだけでは不十分。『あらゆる行いは、気持ち次第・・・』(アル=ブハーリーとムスリムの伝承)という預言者さまの御言葉からも分かるように、習慣あるいは単なる動作と崇拝行為を区別するのは気持ちの持ち方次第だからである。
特にラマダーン月の斎戒を自覚するには、次の条件も満たすことが肝要。
@タブイート(床に着く前に気持ちを確認すること)
根拠⇒「ファジュルの前に斎戒の意図を明確にしなかった者に、斎戒はありません。」
(アッ=ダールクトゥニーやアル=バイハキーの伝承)

Aタアイーン(具体化)
心の中でどんな斎戒をするつもりなのか、斎戒の意図の内容を具体化すること。
Bタクラール(繰り返し)
毎晩ファジュルの前にその日の斎戒の意図を明確にすること。ラマダーン月一ヶ月分のニーヤを一度明確にするだけでは十分とはいえず、毎日新たに与えられるイバーダ(崇拝行為)の機会をその都度再認識するためにも、ラマダーン月斎戒の意図を繰り返し明確にする。
とはいえ、任意の自発的な斎戒に関しては、タアイーンもタクラールも必要とはされず、正午前に何であれ斎戒の意図を抱けばよい。
根拠⇒アーイシャさまが伝える預言者さまの御言葉。ある日のこと、「何か食べるものはあるかね。」「いいえ。」「では、斎戒しよう。」(アッ=ダールクトゥニーの伝承)
<斎戒を解いてしまうものを戒めることに関して>
@飲食
少量であれ、わざと食べ物や飲み物を口にした場合は斎戒が無効となってしまうが、自分が斎戒中だということを忘れてうっかり口にしてしまった場合は無効とはならない。
根拠⇒教友アブー・フライラが伝える預言者さまの御言葉。「自分が斎戒中の身であることを忘れて食べたり飲んだりしてしまった者は、斎戒を全うしなさい。アッラーが食べさせ、飲ませてくださったのです。」(ムスリム、アル=ブハーリーの伝承)
A身体の穴から口腔(ジャウフ−食道)に何かが入ってしまうこと
身体の穴とは、口、耳、鼻、性器、肛門のことである。
例えば耳への点滴は、耳が常に開いていて食道につながっているため斎戒を無効にしてしまうが、目への点滴(目薬をさすこと)は、目が食道につながっていないため斎戒を無効にはしない。肛門からの注射は、肛門が穴として開いていて体内につながっているため斎戒を無効にしてしまうが、血管への注射は血管が常に開いているわけではないため斎戒を無効にはしない。
B故意的な嘔吐
C故意的な性交(編注−例えば光の入らない部屋で朝を迎えたとき、と説明されたりはするが、はたして故意的でない性交などあるのだろうか…?)
D自慰行為
E月経および産褥
F発狂および背教
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