JARVIS 通信5月中旬



5月20日(土)
 久しぶりにキャンパスに自分の部屋でゆっくりする。ここしばらく Statser さんの家でお世話になっていたのだが、そのおかげでテキサスの自然を満喫できた。思うに、コンピューターは田舎でこそ使われるべきだ。今の日本の子供は狭い家でコンピューターゲームをしているが、ここに居るとコンピューターゲームの必要性を感じない。というよりは、コンピューターゲームにのめりこまなくてもやることがたくさんあるのだ。思考を少し逆転させて見ると分かるのだが、新しいコンピューターゲームが出て喜んでいた日本人が今度は大きな自然にめぐまれたらどうなるだろう。コンピューターゲームに飽きて野外に飛び出すのではないか。別にコンピューターゲームの面白さを否定するつもりはないが、急に目の前に自然が広がったら、そちらの方が新鮮に感じられるに違いない。そうすれば自ずとコンピューターの世界と現実の世界とのバランスが取れてくる。アメリカでもすでに都会は狭苦しいが、日本に比べればまだ広い自然が身近にある。この余裕がアメリカのコンピューター産業の強みに結びついている気がする。
 

5月19日(金)
 カレッジに来年もいられればと思っていたが、どうもビザの関係で無理のようだ。カレッジ側も特に私が残ることに異存はないのだが、手続きの関係がかなり面倒なので、ほぼあきらめる。私としてはカレッジの方が特に問題なければ日本に帰ることに問題はない。出来れば日本語教育の流れをもっと堅固なものにしたかったが、それはそれで良いであろう。
 ところで、夜 Statser さんの家で日本のプロ野球を舞台にした映画を見る。以前話題になったが、高倉健が中日の監督をやっていた映画である。面白かったが、私が昔、中日ー広島戦を見たのがナゴヤ球場だったので感慨深い。実は、生で野球を見たのは昨日とこれだけなのだ。英語と日本語がかなりチャンポンの映画だが、だいたい言っていることは理解できる。娯楽映画としての無理を差し引けばかなり良い映画ではないかと思う。
 

5月18日(木)
 今日はカレッジの関係者が集まって野外で昼食を取る。実質的な仕事納めというところか。のどかである。
 夕方になって Statser さんと一緒にダラスで TEXAS RENGERS の試合を見に行く。ダラスに行くのは実質的に初めてだが、スタジアムはさすがに大きい。地元 TEXAS RENGERS は BALTIMORE ORIOLES に対して何と6回に6点とって逆転した。まさに野球の醍醐味ここにありという感じだ。当然大リーグの試合は初めてだが、 BALTIMORE ORIOLES でリプケン選手が現役で活躍しているのには驚いた。打順も後の方で、対した活躍もなかったが、まだがんばっていることに感心する。
 

5月17日(水)
 今日成績表を提出し、正課のお仕事は終了する。夕方、 Statser さんと一緒にタルプレイさんの全快祝いに出席する。内輪のパーティでは結構アルコールもありという感じだが、日本人のようにやたらに飲んで騒いだりしないのが良いところである。タルプレイさんはもともと元気という感じではない事を考えると、かなり回復していた。とにかく安心する。いずれにしても、ここ数日いろんな方のお世話になっている。
 

5月16日(火)
 来学期以降の予定については、事務の関係もあって、まだ決まらないらしい。いずれにしても、勉強し続けることには変わりない。
 それはともかく、今日からしばらく Statser さんの家でお世話になることになった。これで食糧の問題はようやく解決した。
 

5月15日(月)
 いやー、まだ私のこのカレッジに来学期以降の滞在はまだ決まっていないようだ。こちらは4月に申告していたし、今までの経過もあるので問題ないと思っていたのだが、多少驚いた。こういうことは早くはっきりしてもらわないと、困るのであるが、カレッジにもいろいろあったので明日まで待つことにしよう。
 

5月14日(日)
 久しぶり昨日酒を飲んだ関係できのうは早く寝て、今朝はゆっくり起きることが出来た。というわけで、生体防御の話の続きである。
 複雑なシステムは多細胞生物のように多数の構成要素からなっている。それは多様な場をその中にサブ階層として内包することで成り立っているのだが、この階層が生体の安定性を作り出している。つまりは、生体内の特定の部分がバランスを逸しても、それがすぐさま全体に広がるわけではなく、その部分に限定され、抗体ー抗原反応などを通じて他とコミュニケーションすることによって、その部分も制御されている。メラニンによる生体防御もこのような多階層システムであればこそ可能なのである。ところが、経済学者の多くは全体の効率化のみを求め、サブ階層の崩壊を容認している。結果として社会全体を非常な不安定な状況に追いこんでいる。
 

5月13日(土)
 散髪に行く。そのついでに食料品を買いこむ。今日でカフェテリアが閉まってしまったが、明日もであると思っていたので、結構痛い。いずれにしても食い物を確保しておいて良かった。
 それはともかく、今日タイラーの日本人の方からメラニンによる生体防御反応についての話を聞く。普通、我々は化学というと化学反応を思い浮かべるが、生体レベルでは触媒作用が重要な意味を持つそうだ。つまり、直接化学反応によって生体を制御するのではなく、間接的に触媒作用の活性度を制御することによって生体防御を行っているというわけである。確かに直接化学反応を生体内で起こしていたら、生体そのものが持たない。だが、経済を生体と考えると、経済学者の多くは触媒による制御は愚か化学反応でさえ理解していないように思える。需要と供給如ル均衡理論は価値の実体性を前提としているが、だいたい価値ほどその場の状況で変化するものはない。缶詰はあっても缶切がない状態を想定してもらいたい。価値そのものは化学反応に似て、その価値を担う物質のレベルでエネルギーの保存則等に制約されるが、価値そのもの情報としてそれに制約されるわけではない。経済学者の中にはこのことに気づいて「錬金術」と称している人もいるが、そのレベルに留まっていると、生体の微妙さを見失いかねない。この危険は私が英語で読んだ Paul Zane Pilzer さんの本に顕著である。彼は科学技術が無限に価値を増殖させることを以って「錬金術」と読んでいるが、そのことがいかに複雑な地球の生体システムに影響を及ぼすかに考えが至っていない。触媒反応の活性化はこのような複雑なシステムに間接的に働きかけることによって、そのシステムそのものを過度に変化させる危険を回避しているのである。
 

5月12日(金)
 今日もで試験科目が一部残ってはいるが、すでに夏休みに入ったという感じだ。現実に暑いのである。私は18日まで残っていなくてはならないのだが、帰国は30日の予定である。早く帰っても良いが、せっかくアメリカにいるのだからということもある。
 

5月11日(木)
 何とか日本語のクラスの最終試験を終えることが出来た。事前にいろいろと手を打っていたおかげで出来は結構良かった。とにかく、これで成績表を提出すればこのカレッジでの仕事は終了するわけだ。あと少しロータリークラブで日本に行く高校生に日本語を指導する仕事が残っているが、公式にはもう仕事はない。帰国は今月の30日を予定しているが、それまでの食事をまた考えねばならない。約2週間カフェテリア為しの生活をするわけである。ただ、せっかくこちらにいるのだから何かしたいものである。
 
 

[ことばのこと]