JARVIS 通信11月中旬



11月20日(土)
 ケーブルテレビが引かれてあるので、約40ほどののチャンネルをみることとが出来る。しかし、実際に見るチャンネルは限られている。大体良く見るのはCNN(2種類ある)と地元のチャンネル7、そして History チェンネルくらいだろうか。アニメもあるが、日本のものはないようなのでほとんど見ない。面白いのは History チェンネルで、映像がある時代に限られるので現代史が中心なのだが、かなり興味ある内容を放送している。このての番組ならかなり英語が分かるのでありがたい。ただ残念ながらスペイン語などの外国語のチャンネルはないようだ。
 

11月19日(金)
 新約では現在パウロの書簡を読み進めている。訳の問題もあるのかもしれないが、どうもイエスにおいては「世に属する」ものとして否定されていたものが、「肉に属するもの」に置きかえられている気がする。いわば霊と肉との二元論になるのだが、肉は世と同じではない。人間の身体としての「肉」は自然の所産、キリスト教の立場で言えば、神の造りしものだが、「世」は人の造りしものである。ニーチェがイエスではなく、パウロに敵対的だったのはここに理由があるのではないか。ニーチェはキリスト教を否定したことで有名だが、ある意味でキリスト教をこれほどまでに理解した人はいない。彼が否定したのはあくまで人の造りし社会に埋没したキリスト教なのであって、信仰そのものではない。私は彼の哲学を通じてキリスト教に導かれたといっても過言ではない。

11月18日(木)
 今日、Mangram さんのクラスでNHKの「四国八十八ヶ所」の番組を紹介した。Mangram さんは韓国で仏教寺院を見学した経験があるのだが、Jarivis の学生にとっては初めて見る世界である。少し時間があまったので、般若心経と観音経を朗誦した。最近、お経を読んでなかったので久しぶりの朗誦だったが、何とか読めた。クリスチャン系のこのカレッジでお経を読んだのは私が初めてだろう。
 その後の Wellmon さんの授業ではゴジラについて書いたエッセイをあらためて紹介してもらった。Wellmon さんが撮った日本の原発事故を伝えたニュースのビデオを使っての解説つきである。ゴジラそのものは一人の学生にしか見せることが出来なかったが、今回は全員そろっていた。英語には自信がないが、自分が書いたものをあらためて紹介してもらえるのはうれしいことである。
 

11月17日(水)
 テレビを見ていて気づいたのだが、ここではポケモンが爆発的ブームである。日本語の授業でもポケモンの知名度の高さには気づいていたのだが、映画の公開に伴ってニュースやコマーシャルでも出てくる機会が多くなったようである。アニメはある程度見る機会が限られているが、ゲームの方は広く子供たちに普及しているようである。
 ところで、新約の方はすでに「ロマ書」を読み終え、後半部分に入っている。「使徒言行録」からそれまでの雰囲気ががらりと変わった。舞台がエルサレムを中心とした中近東世界から地中海世界に入ったせいもあるが、旧約の預言者やイエスが孤独な単独者として神と向き合っていたのに対し、それ以降は初期キリスト教会が共同体として神の使命を受ける形になっているからだろう。これはマックス・ウェーバーが「古代ユダヤ教」の中で指摘している。ニーチェはイエスを受け入れながらも、パウロを否定したが、この原因もここにあるのだろう。パウロが前面に出てくる部分では、教会共同体のマネージメントに関する事柄が主になる。パウロなしにキリスト教が異邦人に受け入れられることは不可能だったろうが、個人的にはイエスや預言者の孤独が好きである。
 

11月16日(火)
 何とか Mangram さんのクラスで古事記の神話の話をすることが出来た。参加者は生徒2人、それに Mangram さんと私を含めて4人のである。ここでは何となく対話をしながら授業が進むので話の内容はメモ書きしたが、プリントは用意しなかった。私は案外この日本の神話が穴なのだが、一般的に日本人は自国の神話に弱いのも確かだ。幸いにも良いHPを見つけたので助かったが、HPでもさほど古事記のネタは比較的少ない。生徒の話では、教会で以前会った日本人が神道に対して好意を持っていなかったということだが、国家神道の影響で日本では神道への関心はがた落ちになっている。特に、プロテスタント系のキリスト教徒の間ではそうかもしれない。授業では国家神道とアニミズムとしての神道の違いを説明したが、キリスト教などの一神教の理解のためにも神道に眼を向ける必要があるだろう。さすがに Mangram さんはそこへんのところを押さえている。
 

11月15日(月)
 Statser さんご一家の授業で先日、話に出てきた経済学の本を貸してもらうことになった。「GOD WANTS YOU TO BE RICH」と言う題で、何となくマックス・ウェーバーが喜びそうな本である。ついでに環境問題に対するアメリカ人の意識も聞いてみると、それなりに高いようだ。ここでは分別収集をしないが、都会ではちゃんとやっているとのことである。ただ、テキサスは田舎で広いのであまり手が回らないとのことである。いろんなことを話しすぎて、あまり授業が進まないのが難である。キシャちゃんは今日は元気だった。こっちは一安心である。
 一方、テレビの方は無事にアンテナ線に接続し見ることができた。ケーブルテレビが引かれているので、かなり多くのチャンネルを見ることが出来る。ただ、あまり多いので全容がつかめない。まずはCNNが主になるか。ドラマ系が多いようである。Wellmon さんに多謝である。
 夕方になって、ムニールさんから電話があり、タイラーにいる九州の人とお会いすることが出来た。他に中国や地元ダラスの方も一緒で、久しぶりに電話以外で日本語を使うことが出来た。何となく食べ物の話が主になったが、そこは九州人どうし、焼酎のことに話が行く。なかなかここは寒くならないので、お湯割はクリスマス頃になりそうだ。
 

11月14日(日)
 すでに日本語を勉強していたとはいえ、周さんの日本語習得能力は大したものだ。やはり外国語をマスターした経験のある人は違う。アメリカの学生の場合、外国の学習経験があっても、日本人の英語に及ばない。日本語に触れる機会があれば、彼女は相当しゃべれるようになるだろう。実際に使う機会がないのが残念である。文法の復習が終ったら、実践的な読み物に移行できるだろう。とすると、ほぼ中級である。さしあたりは論語をやさしい日本語にしてテキストにしようかとも思う。そうすれば、こちらも中国語を勉強できる。来週も Wellmon さんのうちに行くことになった。
 

11月13日(土)
 今日念願のテレビを手に入れる。意外に安い。税抜きで一万円前後で結構良いのが買えた。より小さいものだともっと安い。最近この手の電気製品を買っていないので日本でいくらするかは知らないが、安いと思う。
 午後、散歩の後、Wellmon さんの奥様の周(チー)さんに日本語を教える。すでに周さんは日本語の初級文法は理解しているのだが、日本語を使う機会が乏しかったので、話せるとまではいかない。まず、発音のチェックからはじめるが、やはり「しゃ、しゅ、しょ、・・・」以下は難しいようである。こちらも折角なので、論語などの中国の古典を読んでもらった。広東語は北京語よりも歯切れがいい。
 ところで、夜、70年代前半を舞台にしたテレビドラマを見る。日本でもケンちゃんものなど家族ネタのドラマが流行った時代があったが、これは元祖アメリカの家族ネタのドラマの裏側を回想を元にしてドラマ化したものであった。何となくなつかしかったが、日本もアメリカも同じ時代にあったこと感じた。当時は一方的にアメリカから日本へという流れであったが、最近はそうでもない。それぞれの国の人々がそれぞれの立場から同じ時代的課題に直面しているのがよく分かる。
 

11月12日(金)
 今日もキシャちゃんの調子は今一つである。聞くと体があまり強くないとのことである。ここ数日、暑い日が戻っているので全体的に体調を崩したのであろう。
 ところで、夕方に Wellmon さんのお宅に招待される。実は、奥様は香港出身で広東語が母語である。タイラーの中国料理店で食事をいただき、久しぶりに中国料理を口にする。その後、ビデオショップに寄ったのだが、日本のアニメも結構並んでいた。エヴァやめぞんと並んで、キリコがあったのは意外であった。他にらんまやパトレイバーなど主だったのは目にしたが、なぜか宮崎アニメが見つからなかった。他のところに並んでいたのかもしれない。
 

11月11日(木)
 明日、金曜日から月曜の朝まで Wellmon さんのところに泊まることになった。こちらに来てからはじめての外泊である。Mangram さんの世界宗教の時間で古事記の話もしなくてはならないので、結構時間がない。こちらの方はインターネットでネタを集めたのではあるが、なかなか話の切り口を見出せないのが困ったところである。ネット上では他の神話に比べて、日本の神話を解説しているページは意外に少ない。当然、いくつかのページがあるのだが、体系的なまとまりにおいては聖書の比ではない。いずれにしても、Wellmon さんのところでゆっくり考えねばなるまい。
 
 

[ことばのこと]