JARVIS 通信12月中旬



12月20日(月)
 カレッジは冬休みに入ったので、電話代の請求の郵便がうまく届くかどうか心配だったが、何とかうまく行った。昨日、教会に行くついでにかなり酒も含めて買いこんだので、食事の心配はあまりないが、ほとんど孤立状態になるので、こういうことが問題なのである。冬休み中、カレッジの事務室などはいちおう開いているが、人はまばらで、半分休眠状態となる。幸いにも、非常時には何とか連絡する先はあるのだが、普通お人には耐えられない状態だろう。以前、名古屋に居たときこれに近い状態があったが、兄弟の多い中で育った人にはこの状況はひどく耐え難いものであるらしい。いずれにしても、あと約3週間、マイペースで生活が出来る。
 

12月19日(日)
 テキサスで「よだきい」や「むげねー」が通じる人に会えるとは嬉しいことである。タイラーのバプティスト教会で20年以上大分にいた人に会った。幼稚園以来、「主は来ませリ」などを歌った。聖書の学習会に出たのだが、その多くは中国人、日本人は私を含めて2人、他にレバノンからの人がいた。学習会の後は、 service(礼拝式) に出て、ここでも歌を歌う。雰囲気はなかなか良い。
 日本では「宗教」というと「宗教的組織」のことを指すらしい。だから、宗教はドグマあるから関わらない方が良いという教義さえ出来ている。しかし、日本の外では宗教は人間やその社会を超えたものとの関わりと見なされているから、日本人が無宗教だというと、何らの道徳的制約も持たず、何らの生きる指針も持たない恐るべき奴だと思われてしまう。以前、日経新聞で読んだネタだが、インドに行ったある人がタクシーの運転手に自分は無宗教だといったら、その運転手になんでも言いから宗教を持つべきだと言われた話を読んだことがある。インドは宗教対立の激しい国だから、君たちと違って宗教を持たない日本人は常に争いから離れていられると開き直って言える人もいるかもしれないが、すでにその主張はひとつの宗教的主張となっている。いずれにしても、宗教を意識せずに暮らして行ける日本の環境が特殊であることだけは理解していた方が良い。日本人が宗教を意識せずに暮らして行けるのは、自らの行動の原理を意識する必要がなかったからだ。しかし、普通の民族は天変地異などの災難、異民族との共存の中で、自らの生き方を明確にしなくてはならなかった。これをせずに済んだ国民は幸福ともいえるが、自らの生き方を問われる事態になるとパニックに陥り、時として人や社会を神としてしまう。宗教はドグマだから宗教のない日本は素晴らしいと多くの日本人は心の中で思っている気もするのだが、無責任な無宗教のツケは、オウム事件のように、いずれ回ってくる。
 

12月18日(土)
 今日、今年最後のカフェテリアでの食事をとる。アフリカからの学生の多くも帰省しているのか、本当に人が少ない。しょうがないのでインターネットと行きたいところなんだが、クリスマスを前にしてえらくつながりが悪い。夕方から夜にかけてのゴールデンタイムにつながりが悪いのはいつもののとだが、昼過ぎでさえ容易にはつながらない。せっかくAOLで使える時間が50時間から150時間に増えたのにもったいない話である。実は、MLで宗教をネタに白熱した論戦を展開してしまったので、そっちが気になるのだ。宗教をネタにして話を進めると、人間がどんな態度で世の中に臨んでいるかがよく分かる。私のような内向的な人間は人の世のことよりもどうしても自然、人間の生み出す社会よりもそれを超えた神と呼ばれてきたものに関心が向く。つまりは宗教的関心が露出しているのだが、宗教というとどうしても「××教」という社会組織をイメージされてしまうことも多いようだ。なかなか話がつながらない。明日、大分にいらした教会の方に会う予定だが、どうもこの方はこの手のすれ違いについてはかなりの経験を持っているらしい。
 

12月17日(金)
 昨日の5ドルの件から、成績のことも何とか今日できりをつけた。後はクリスマスの長い休暇である。案外、これが長いので食料をまた買いこむ必要が出てきた。日曜日には何とかしたいところである。
 ところで、今日初めて日本のアニメをTVで発見した。ポケモンもどきのデジモンというものらしいが、日本のアニメは一目で分かる。久しぶりにTVの画面でカタカナ・漢字の日本の文字を見る。アメリカでは日本のアニメは知られているものの、まだ一般化していない。これはひとえにお子様用アニメが定着していないからである。いかに大人向けの作品が高い評価を得ても、アニメの基盤がまだないのである。ところが、ポケモンの登場でこの事態は一変した。一躍、日本のアニメが売上のトップに出たのでCNNでも話題になったほどである。さすがに、エヴァや Ghost i n the cell が表に出ることはないが、 もののけやセーラームーンは結構話題になる。以前、押井さんが別府にいらした時に、米国のエンターテイメント産業の壁は厚いといっていたが、ここまで儲かることが明らかになった以上、日本のアニメもアメリカの競争原理で普及せざるを得なくなるのではないか。ただ、しばらくはお子様アニメが中心だろう。
 

12月16日(木)
 クラスはなくなったとは言え、成績をつける仕事が残っている。簡単は簡単なのだが、間違いがあるといけないので神経質にはなっている。こっちに来てからほとんどお任せ状態でやってきたが、細かいつめに少し手間取ることはある。実は、今日短い職員のクリスマスパーティがあったのだが、5ドルの寄付金を渡し忘れてしまった。少し気になるので明日確かめてみよう。
 このパーティには Mangram さんと一緒に行ったのだが、それまで時間があったので少しコンピューターの使い方を紹介した。Mangram さんはかなりの年齢なのでコンピューターには縁がなかったのである。案外、お絵かきソフトが受けた。前にも書いたが、アメリカ人だからといって、皆が皆コンピューターを使えるわけではなく、高齢の方の多くはこれを使えないのである。
 私もテキサスの片隅に居るだけなのでたいしたことは言えないが、アメリカ以外の人はアメリカに対して過度の感情を持ってしまいがちである。確かに軍事的にも技術的にも優位に立ち、歴史の先頭を走っている国ではあるが、人間が特に変わっているわけではない。以前、私は日本はアメリカと同じ先進国になったが、それ故にアメリカとともに悩まなければならないと言ったことがある。何でもアメリカのせいにする人はまともにこの国を見ていない。好き嫌いの問題を越えて、この国を真摯に考える必要がある。
 

12月15日(水)
 カレッジのクラスがないということは、仕事がないということだが、実はこのような状態にどうしても忙しくなってしまうのが私である。公務員時代の癖もあって、時間が空くとあれもこれもと勉強のネタをいれてしまうのである。いずれにしても、ここでは忘年会もあるわけでなし、ましてや遊びに出るところもないのであるから、必然的に勉強でもしなくては身が持たないのであるが、出来れば教会等でいろんな人に会いたいところだ。取りあえず、何の予定も入らなければ、是非とも来週の日曜、タイラーの教会に出向かなくてはならないと考えている。Y2K対策のために水も購入せにゃならんし、ついでに年越しのアルコールも欲しい所ではある。
 

12月14日(火)
 久しぶりに天気は快晴、雲ひとつないという感じだが、風が非常に強い。気温はほどほどに暖かい。
 さて、キシャちゃんからようやくメールで課題の回答が来た。なぜか谷山浩子の曲の感想文が課題だったのだが、短いながらもそれなりのコメントが得られた。これで一段落というところか。
 カレッジはもうテストもだいぶん終っているようで、学生は多いが結構静かである。私の方はもうクラスがないので、とにもかくにも「仏教聖典」の読みを進めている。とにかく、スペイン語で読んでいるので、辞書を引く単語数が多い。カウントするのもよだきい(面倒な)くらいである。すでに半分以上読み終わったが、さすがに膨大な仏典から選んできただけあって、よく出来ている。特に、比喩や喩え話が多いのが特徴だ。福音書にしてもそうであるが、かつての宗教書は喩えで物事を説明する場合が多い。その方が説明しやすいだけでなく、考える方も考えやすい。最近の学問、特に社会科学系の学問は数学に頼りすぎているのではないかとも思う。この数日読んでいる所は寓話的な内容が多いのだが、この手の話はユダヤの民話に多そうである。ある意味で、現代の道徳意識が物語を背景に持っていないことがよく分かる。
 

12月13日(月)
 Statser さんのクラスで例のテストをする。かなり出来が悪い。事前に問題形式を確認していなかったためもあろうが、基本的な助詞の使い方が分かっていない。名詞の格や文型を意識したことがないせいだろう。来学期は相当に復習をしなくてはならないが、文型に従って単語を組み合わせれば日本語の文章が出来るようなセット作ろうと思う。これがあれば、単語と文型が同時に覚えられるし、来学期にもし新しい生徒が来たときにも使える。
 それはともかく、今日になって暖房の修理をしてもらった。 まだ、二つあるヒーターのうちの片方しか使えないそうだが、今週中にはヒューズが届くので修理が出来るのではないかということだ。とにかく安心する。煙が出たときには、真夜中とあって、さすがに私も慌てしまった。少なくとも寒い中を寝ることはなさそうだ。
 

12月12日(日)
 教会に行けなかったのはとても残念だったが、久しぶりにゆっくりと土日を過ごすことになる。勉強の方も結構進んだ。暖房が使えないのは痛いが、ここがテキサスであることを幸いとしなくてはならないだろう。もしここがトロントだったら大変である。きのうきょうと2日続けて雨であるが、ここでは冬に雨が降るらしい。しばらくは元の仙人でいたいところである。
 

12月11日(土)
 今日は未明からパニックであった。部屋の暖房がおかしくなって、一時部屋が一面煙に包まれた。何せ真夜中なんでどうしようかと思ったのだが、取りあえずファンをまわしてオーバーヒートしないようにして、校門の警備員さんのいる場所へと向かう。幸いにも途中で警備の人と会うことができたが、結局、ヒーターは自然に切れていた。いずれにしても恐くて暖房は使えないのだが、金曜日の夜というのが不運といえば不運である。おかげで日曜日に教会に行く約束がチャラになった。スイッチを切っていれば大丈夫だろうが、やはり長時間外に出るのはヤバイ。本当に残念である。こちらに来て、外に出ることもあまりなかったのでトラブルには無縁だったが、さすがにこれには参った。月曜日にさっそく誰かに相談しなくてはならないのだが、誰にしたら良いのだろうか。実は、事務のエドワードさんがいないのである。Y2kの問題で水道がヤバイというニュースもあるので、飲料水等も買い込まねばならない。本当によだきい話である。
 
 

[ことばのこと]