国債の応札不足、金利上昇
 

  古山さん wrote

>  けさの新聞に、国債が応札不足で、売れ残った。金利が
> 上昇を始めたとありました。
>  ついにやってきた、と思いました。
>  借金を借金で埋めていた人が、ついに借りられなくなって
> きたわけで、長期的には、たいへん健全なことです。
>
>  しかし、現在、金利が上昇することは、とてつもない影響
> があります。大企業、政府、地方自治体が破綻します。
>  政府・日銀にもコントロールしきれない破局がやってくる
> 事態すら、頭に浮かびました。

 早く金利が上がれば、傷が大きくなるのが少しでも防げますが、もう少しズルズル
と行くでしょう。というのは、日本人の貯蓄がまだ少し残っていて、政府や財界が使
えるからです。
 政府や財界(特に建設、金融など)は産業構造の転換が必要なことは分かってお
り、総論では賛成ですが、それをやれば自分たちの既得権がなくなりますから、行動
では反対します。

 縮小しなくてはならない産業分野がたくさんあります。そこは過当競争で、利益が
少ないですから、銀行はお金を貸せません。人々は将来不安から貯蓄を殖やしてお
り、銀行は預金が増えています。でも貸すところが少ないので、元本が保証されてい
る国債を買いまくり、80兆円になろうとしています。99年初めには30兆円程度だった
のですから、ものすごい増え方です。
 保険会社なども国債を買うので、国債の価格は下がっています。国債の利息は最初
に決まっているので、国債価格が上がれば、その国債の利率は下がります。
(額面100円で毎年の利子が6円の国債を例にとります。市場での価格が120円に上が
れば、6円の利子は不変ですから、利率は、6÷120=5%に下がります)。

 その国債金利が先日、1%にまで下がりました。(人類史上、ほぼ最低です)。す
なわち国債価格は高騰しました。そこまで高くなると、買う方もビビリます。高値で
買って、後で下がったら、大損します。
 国債は10年物が普通ですが、財務省は2年物などの国債を増やしています。これな
らば、市場価格がどうであろうと、2年後には政府が必ず額面で払い戻してくれるの
で、少し保有すれば損はしません。銀行はとても新規の10年物国債なんて買えないの
で、2年物国債や、10年物国債でも残存期間が2年とか3年のものを買っています。
そのために、今では10年物国債は新規発行の半分以下になってしまい、資金繰りはも
のすごく不安定になっています。

 財務省はさらに短期の国債を増やすでしょう。それで当分は何とかなりますが、問
題点を先送りするだけなので、後のツケはさらに大きくなります。
 でも退場すべき企業が退場しないので、その産業分野は利益が出ないから、借金も
返せません。一方、福祉、教育、環境保全などの発展させるべき産業には資金が来な
いので、人が移れません。最悪の選択です。
 地方政府は中央政府以上に財政内容は悪いので、破綻は早くなります。地方自治体
の破綻とは、福祉の水準を落とす、ゴミ集めの回数が減る、学校が新しい機材を買わ
ない、などでしょう。僕が米国にいた80年代初めは、ニューヨーク州が財政破綻寸前
で、給料の遅配で警官がストをしたり、ゴミ集めが遅れて異臭が漂ったりしていまし
た。
 でも財政状態は今の日本の方がずっと悪いですから、その辺は覚悟しておくべきで
す。犯罪が増えるのも確実でしょう。
 そういう状態が続き、「もう嫌だ」と本心から思うと、人々は本当の変化を求めま
す。努力し、知恵を出します。そして、全体が変わっていきます。
 70年代後半の英国(20年間以上も小手先の改革をしてきましたが)、80年代始めの
米国はそうでした。
 90年代始めの米国では、財政破綻が人々の関心事で、不況なのに増税をしました。
財政赤字を増やさないために、「歳出を増やすときには、必ず歳入の手当をしなけれ
ばならない」法律をつくりました。そして、将来景気がよくなったら増収になるよう
に税制を変えました。それ以前には考えもしなかったことをしました。小手先のごま
かし改革では、にっちもさっちも行かなかったからです。
 この道筋は避けられないと思います。それを考えて、生活を組み立てる方がいいと
思います。
 といって、将来まで悲観することはありません。10年は悲観ですが、努力して知恵
を出し、社会の組立方を変えれば、その後はバラ色です。
 世界は非条理が満ち満ちており、アフガニスタンなどを見ると気が重くなります。
日本の学校も子どもたちを精神的に去勢しています。でも、これは「産みの苦しみ」
だと思います。私たちは非常におもしろい時代に住んでいると感じます。夜明け前が
一番暗いのでしょう。
 

                [ふくろうの眼]