つぶれても仕方がない企業
 

 古山さんが、僕の
 「大企業倒産はやむを得ない。延命措置はとらない方がよい」
という主張は、しごくまっとうなものだと思います。---と書いてくれました。

 ただ、経済をマクロ(全体)の数字で見て、「日本経済全体から見ると、この分は
不必要だ」というような冷徹な学者、エコノミストとは違うことを分かって下さい。
 その例として、僕がよく名指しで取り上げるダイエーについて、書きます。

 ダイエーの(有利子)負債は2000年2月期末には1兆2千億円だったのが、2001
年2月期末には2兆6千億円に増えました。主力のUFJ、三井住友、富士銀行は新
たに1兆4千億円という(桁が間違っているのでないかと思うような)信じられない
額を融資しました。
 しかし、2002年1月の「新3カ年計画」では、4.200億円の実質的な借金棒引きを
しました。(プラス、普通株についても50%減資)
 これって、常識で考えられますか?主力銀行はそれまでの融資額を上回る1兆4千
億円もの巨額融
資をして、それから1年で4.200億円の借金棒引きをしなければつぶれる状況になっ
たのです。今、中小企業が1000万、いや100万円を借りるのに、どれだけ経営内容を
説明しなければならないか。それに比べて、1兆4千億円の融資をする
時に、銀行はダイエーの何を審査し、OKを出したのか。
 いま、その1兆4千億円が新たな不良債権になりました。千億円の単位で預金者の
お金をドブに捨てたのです。(普通の会社ならば、これだけで解雇か左遷です)。

 僕がダイエーを「倒産するのは仕方がない」と言うのには理由があります。ダイ
エーは出店に際して、周りの土地を買い、出店で地価が上がると、それを担保にし
て、また出店してきました。だから、ダイエー・グループは5.000億円以上の土地を
保有する不動産業者でもあり、地価上昇をテコに、バブル的な経営をしてきました。
イトーヨーカ堂などは「流通業は不動産業になるべきではない」と、本業に力を注い
できました。
 以上のことで分かってもらえると思いますが、ダイエーは本業をおろそかにして、
土地投資(投機?)をしてきました。そして、UFJ銀行などはダイエーの土地購入
と地価上昇で利益をねらった出店に積極的に融資してきたのですから、責任の半分は
あります。
 ダイエーの中内会長は外されましたが、主力銀行の経営者たちは、ダイエーがつぶ
れると(会社更生法の適用など)、責任を取らなくてはなくなるので、自分たちの責
任を回避するために1兆4千億円もの金額を新たに融資し、そしてすぐに4.200億円
の借金棒引きをしました。
(長崎屋はダイエーを真似して経営危機になりましたが、借金がダイエーよりはるか
に少なかったので、銀行から支援を切られ、つぶれました)。
 金融庁をはじめ、政府はこれに対して何も言いません。新聞も本質を問うことはし
ません。皆でなれあっています。ダイエーは「大きすぎて、つぶせない」のではな
く、「主力銀行が貸しすぎているので、つぶせない」だけです。
 僕は、こういう企業や銀行はつぶれてもいいと言っているのであって、多少間違っ
た投資をしたくらいの企業がつぶれてもいいと言ってはいないのは、分かって下さ
い。
 

                [ふくろうの眼]