(September 2003)

←『英語広文典』(白水社)
英語IIの教科書(New Horizon)の Lesson 7 "As We Speak" では "metaphor" が扱われています。そこで、今回は比喩(譬喩)についてお話しましょう。
言葉を効果的に相手に伝えるためには、どう表現すればよいか。それを扱うのが、「修辞学」(Rhetoric) で、ヨーロッパでは昔から重んじられてきたました。
以下に、『英語広文典』(白水社)に基づいて、簡単に説明します。(ちなみに、この本は、ぼくが高校時代に読んだ4冊の英文法書のうちの一冊ですが、著者、田中菊男(あの『岩波英和辞典』の編集者)からも想像できるように、とても古い本なので、用語が古くて今は使われていないものもあるかもしれません。しかし、修辞法まで扱われている英文法書をほかに知らないので、これで我慢してください。)
修辞法の3大原則は、統一(Unity)、脈絡(Coherence)、強勢(Emphasis) です。このうち、強勢の手段として用いられる言葉のあや、「詞姿」、を Figure of Speech といいます。
これを分類すると、次のようになります。
A 譬喩法
1 直喩法 Simile
2 隠喩法 Metaphor
3 提喩法 Synechdoche
4 換喩法 Metonymy
5 諷喩法 Allegory
6 引喩法 Allusion
7 声喩法 Onomatopoeia
8 言葉の戯れ(Pun, Play of Words)、別名 字喩法、詞喩法
B 化成法
9 擬人法 Personification
10 頓呼法 Apostrophe
11 現写法 Vision
12 誇張法 Hyperbole、別名 張喩法
13 包喩法 Liotes、別名 緩叙法 Meiosis
C 布置法
14 対偶法 Antihtesis、別名 対句法 Contrast
15 撞着法 Oxymoron
16 漸層法 Climax
17 漸降法 Anti-climax、別名 漸墜法 Bathos
18 反復法 Repetition
19 倒装法 Hyperbaton
20 二詞一意 Hendiadys
D 表出法
21 警句法 Epigram
22 設疑法 Interrogation、別名 修辞疑問 Rhetorical Question
23 咏嘆法 Exclamation
24 反語法 Irony
25 曲言法 Euphemism、別名 好辞法
26 暗指法 Innuendo
27 迂回法 Circumlocution
28 形式的形容辞 Conventional Epithet
何かすごそうに見えますけど、ヨーロッパでは修辞学の伝統があるので、英文学作品には普通に用いられているものです。(ここでちょっと思い出すのが、ぼくが愛媛県の教員採用試験を受けた時に出た、「Oxymoron」とは何か説明しなさいという問題。英文学をやっていれば、どこかで出くわす言葉ですから、説明できて当たり前なのですが。)
さて、今回は、譬喩法の中から最初の4つを紹介します。
1 直喩法 Simile
「あらわに一つの事物を他の事物になぞらえる法」で、「…のように…」などというものがそうですが、これについては、雑学 Nos.38-39で例をたくさん挙げたので、見て下さい。
2 隠喩法 Metaphor
「直喩の「…のようだ、…に似ている」などを省略して「…なり」とずばりと言うもの」です。例、
Ye are the salt of the earth. 汝らは地の塩なり。--マタイ伝5の13
Life is a journey. 人生は旅である。
3 提喩法 Synechdoche
「一部をもって全体をまたは全体をもって一部を表す法」です。例えばsail(帆)をもってship(船)を表したり、「小町」をもって「美人」、「パン」をもって「食物」を表したりすることです。「花見」なんかもそうですね。あの「花」は「桜」ですから。
4 換喩法 Metonymy
「fond of wine(酒が好き)の代わりに fond of the bottle (瓶が好き)というような表現法」です。これは、5つに分けることができます。
(1)記号、または随伴する物で実物に換えるもの
例 horse and foot(騎兵と歩兵)、
The pen is mightier than the sword. (筆は剣に勝る)
(2)結果をもって原因に換えるもの
例 gray hairs (老年)
Death fell in showers.
実は弾丸が降って来たのだが、その結果である死で表している。
(3)容器をもって中味に換えるもの
set a good table (御馳走の代わりにテーブルと言っている)
The kettle is boiling. (沸騰しているのは中の湯)
The lamp is burning. (燃えているのは中の油)
など、普通に使われる。
(4)原料をもって物体に換えるもの
under canvas (帆を張って)
the immortal canvas of Italian art (イタリア美術の不朽の名画)
(5)作者をもって作品に換えるもの
I am reading Shakespeare.
メタファーで思い出すのが、『メタファー思考』(講談社現代新書)という本。言葉の意味の広がりにメタファーが大きな役割を果たしていることなどが、よくわかる本です。
例えば、Do you see what I mean? という文の "see" は、「見る」ではありませんが、もとの知覚的意味をメタファーによって、認識的意味に拡大したものです。みなさんが、熟語テストで覚える "look up to.." にしても同じです。「メタファー思考は、日常のものであって、特殊なものではけっしてない。メタファーは日常世界の中で、私たちの身体的知覚を通して、意味を培う」と著者は言っています。ぜひ、読んでみてください。
クイズ
さて、この本の中の例を使って、以上の復習をしてみましょう。次の表現は、メタファー(隠
喩)、シネクドキ(堤喩)、メトニミー(換喩)のどれでしょうか?( )の中に分類して記入してみましょう。
ヒントとして、『メタファー思考』の203ページにある、「認識の三角形」の図を引用しますので、参考にしてください。分かりやすい図だと思いますので。
月見うどん きつねうどん 親子丼 焼き鳥 メロンパン 目玉焼き たい焼き たこ焼き 赤ずきん 人魚姫 白雪姫 ごはん
メタファー( )
シネクドキ( )
メトニミー( )