(October 2003)

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2年生の英語II の Lesson 7 (New Horizon English Course II)
も、いよいよ終わりに近づいてきましたが、最後の方に、メタファーが文学作品で利用されている一例として、シェークスピアの『お気に召すまま』(As
You Like It) が引用されていました。と、言っても、たったの1行、"All the world's
a stage. "だけですが。
実はこの台詞、とても有名(まあ、シェークスピアの劇の中の台詞はどれも有名と言えるのですけど)なので、この1行で始まる1節をこの際読んでみましょう。
All the world's a stage,
And all the men and women merely players:
They have their exits and their entrances;
And one man in his time plays many parts,
His acts being seven ages. At first the infant,
Mewling and puking in the nurse's arms.
And then the whining school-boy, with his satchel
And shining morning face, creeping like snail
Unwillingly to school. And then the lover,
Sighing like furnace, with a woeful ballad
Made to his mistress' eyebrow. Then a soldier,
Full of strange oaths and bearded like the pard,
Jealous in honour, sudden and quick in quarrel,
Seeking the bubble reputation
Even in the cannon's mouth. And then the justice,
In fair round belly with good capon lined,
With eyes severe and beard of formal cut,
Full of wise saws and modern instances;
And so he plays his part. The sixth age shifts
Into the lean and slipper'd pantaloon,
With spectacles on nose and pouch on side,
His youthful hose, well saved, a world too wide
For his shrunk shank; and his big manly voice,
Turning again toward childish treble, pipes
And whistles in his sound. Last scene of all,
That ends this strange eventful history,
Is second childishness and mere oblivion,
Sans teeth, sans eyes, sans taste, sans everything.
(II.7)
<語注>
world's=world is merely...=...にすぎない exit=退場 entrance=登場 part=役 act=芝居の幕割り infant=赤ん坊 mewl=ぎゃあぎゃあ泣く puke=吐く nurse=乳母 whine=泣き言を言う satchel=カバン snail=カタツムリ furnace=かまど woeful=もの悲しい ballad=ラブソング to...=...を讃美して mistress= 恋人 eyebrow=まゆ毛 soldier=兵士 oath=誓い bearded=ひげをした pard=leopard(ヒョウ) jealous
in honour=名誉を気にかける reputation=名声、評判 cannon=大砲 justice=裁判官 fair round belly=見事な太鼓腹 capon=去勢鶏 lined=詰め込んで cut=刈り方 saw=格言 modern
instances=月並みな証拠 shift=移る slipper'd
pantaloon=スリッパをはいた老人のだまされ役 spectacles=眼鏡 pouch=purse youthful=若い時の hose=ズボン saved=長持ちさせた a world=much shrunk=縮んだ shank=脚 treble=高い音 pipe=ぴいぴいという音 whistle=ひゅうひゅういう音 his=its history=歴史劇 childishness=子どもっぽさ mere=完全な oblivion=忘却 sans=without
どうですか? ぼくはいったいどのage にいるのでしょうかね。ぼくが好きなのは、Sans
teeth, sans eyes, sans taste, sans everything.の部分です。
それから、この喜劇は、僕が好きな劇のひとつなのですが、登場人物の中のロザリンドが好きです。シェークスピアに出てくる女性(若い)には、好きなタイプが多いです。コーデリア、デズデモナ、ヴァイオラ‥‥
シェークスピア劇はぜひ見てみるといいですよ。その前に、数年前話題になった映画に、『恋に落ちたシェークスピア』(Shakespeare
in Love) というのがありましたが、なかなか面白いのでお薦めです。それから、黒澤明の『乱』(これは、シェークスピアの『リア王』をベースにしているのですが)も面白かったですね。これもぜひ見てみてください。あっ、そうそうみなさんに、なじみが深い映画としては、ディカプリオの『ロミオとジュリエット』(雑学 No.146参照)がありましたよね。台詞は当時のままで、時代設定を現代にしているのですが、ああいう演出しても、楽しめる。この映画は大好きです。これもまだ見たことない人はぜひ、見てみてください。
『お気に召すまま』からの引用は雑学No.387にもあります。
最後に上の英文が難しいと思う方のために、日本語訳を紹介しましょう。普通の訳では面白くないので、古いですが、有名な坪内逍遥のものを引用します。
人間世界は悉く舞台です、さうしてすべての男女が俳優です。めいめいが出たり入ったりして、一人で幾役をも務める、一生は先づ七幕が定(きま)りです。初めは誰しも赤ん坊で、乳母(ばアや)の手に抱かれて、おぎゃァおぎゃァといって、涎を垂らす。その次は鼻を鳴らして泣く小学生徒。鞄をぶらさげて、起きて洗ったばかりのてらてら顔をして、いやいや学校へと過牛(でんでんむし)のやうに歩く。その次は情人(こひびと)。火炉(いろり)よろしくの溜息をして、其意中の女の眉附か何かを讃(ほ)めちぎった哀れな小唄を口ずさむ。それから、軍人(いくさにん)。奇態な猛烈な誓言が口を衝いて出る、口髭は豹よろしくで。おッそろしく体面を気にして、喧嘩ッ早いこと此上なし、水泡(あぶく)のやうな名誉の為にでも、随分、大砲の筒口へ向って行く。その次が裁判官。賄賂の閹鶏(ケーポン)のお庇で、肚は布袋よろしくだが、目附は閻魔大王、型にはめて刈り込んだ髭、いろんな格言をも知ってゐれば普通の裁判事例は何でも心得てゐて、其役目をも務める。第六となると、痩せこけた、上草履でとぼとぼあるきの道外(どうけ)爺さんに変る。鼻には眼鏡、腰には巾着、丹念に保存したものの、若い時分の筒袴(だんぶくろ)は、其衰へた脛には、滅法界もなく太過ぎる。さうして太かった男らしい声も今は子供声へ逆戻りして、細々と口笛のやう。とどのつまりの、此変(おつ)な、複雑な劇(しばゐ)の大詰は、第二の小児と変って、一切空に帰するのです。すなはち、無しづくし、歯なし、目なし、味覚なし、何(なンに)もなし。(『ザ・シェークスピア』(第三書館)、p.510)