愛のサバンナ
作:JUDY鈴木
いちお、説明〜。JUDYさんは"ワイルド・キャット"をケイさんと一緒に書いた人です。
2001/12/24発行『ARE YOU ?』収録
 
「 おいしいです、ビールって」
 大ジョッキ、最後のひとしずくを舐めながら珠里ちゃんは言った。にっこり、天使の笑顔の唇にビール泡。
「そう。よかったね……」
 応じる洪明の顔はひきつっている。彼はまだ二杯目の中ジョッキをすすっている最中。いや、今ちょっと胸やけしてもう飲めない状態なのだが。
「も、イッパイいいですか?」
 小首を傾げておねだりする珠里ちゃんは、日本女性がとうの昔にかなぐり捨てた、大和撫子のつつましさがあり、見る者の心潤わせる。
 でもおねだりしてんのは、生ビール大ジョッキなんだよなあ。
 しくしくと心で泣きつつ、
「あ、おかわりね」
 おねだりを叶えてしまうばかがいた。
「ありがとうございます!」
 嬉しそうに刺しだしたジョッキの把手が、ボキ。
 取れた。
「まあ、ヒビが入っていたですね」
 おっこちたジョッキを取ろうとしてつかんだら、ぐしゃ。
 ジョッキは潰れた。
 飲ませていいものか、己に問いかける洪明である。
 花のよーにかわいい珠里ちゃんは、酔っぱらうと超絶怪力になってしまう美少女であった。
 さすが嘱託のメンバー。珠里ちゃんの特殊能力は図り知れないものがある。
「み、深雪さん……」
 向こうじゃ塾長が事務員を説教している。唯一頼れそうなのは修野を今しも担ぎ上げた、工藤深雪。  しかし、深雪は冷たかった。
「何いってんのよ、セクハラ男が」
 彼女が冷たいのは、考えたくないが修野関係からであろうか。しかし洪明は知らなかったのだ。まさか修野がカルピスサワーの二杯でつぶれる男であったとは。
「知らないですめば、嘱託はいらないのっ」
「ううう」
「そーゆーわけで責任もって、珠里の面倒を見るように。あ、狼になるんじゃないわよ、青少年」
「そんなああああ」
 叫んでいる間に見捨てられてしまった。
「オオカミ?」
 おとなしくビールを待っていた珠里ちゃんはかわいく尋ねた。
「て、このこ?」
「? は?」
 傍らにはいつの間にか狼がいた。
「は?」
 洪明の頭が事態を拒否していた。しかし現実は消えなかった。
「おおお、おまえア ラスカだかどこかに帰ったんじゃ?」
 それは、珠里が動物園から逃がしたはずの人食い狼であった。
「呼んだラきまし た」
「呼ぶなあ、そもそも来るなあああ」
 どうするどうなる天羽洪明。前門の怪力美少女、後門の狼。彼は生きて帰れるのか?
「きゅーん」
 狼がビールをねだった。
「ビール、マダですか?」
 美少女も待っている。
「へい、お待ち!」
 そして運命のビールが……。

城之内ゼミナール
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