ギブソン、フラットアイアン、ケンタッキー、と、マスプロダクトの製品が市場ではやっぱり主流ですが、個人作家にはその製作者それぞれの特性ある作品が見られます。あまり多くを手にしたわけではありませんが、今後の参考にして頂ければと思い、関わりのある製作者から徐々に紹介して行きます。尚、音の感じ方などは、完璧に私の私見です。
Nugget Mandolins
米国ミシガン州セントラルレイク在住 {Michael Kemnitzer P.O.Box 264 Central
Lake MI 49622 U.S.A. +(616)544−5155}の、Michael Kemnitzer作。現時点で私の接した中で、最高の新作マンドリンだと思います。思う様に音が鳴らないのは、私が下手なせいです。低音部はあくまで低く太く、高音部はかなり上のフレットまでしっかりしたサウンドです。特筆すべきはやはり中音域で「B-Bark」
という表現をアメリカ人ミュージシャンが良く使っていましたが、クローズドポジションで
[B] コードを弾くと、本当に犬が吠えているような響きがします。岡山にマイクコンプトンが来た時に何十分間か弾いてみてもらったのですが、まさしく「Woody」なトーンだという表現をして、しきりにチェックしてみていましたが、かなり気に入った様子でした。音質にはかなり神経を使っている様で、また絶対の自信もあるそうですが、仕上げもたいした物です、丈夫な作りでありながら細部は非常に繊細でその上にインレイワークも極上です。製作本数は割合少ないものの、(まだ230本程度だと思われます。)
種類はかなり多く、マンドリン、マンドラ、オクターブマンド、マンドセロ等、それらに、Aタイプ、2ポイント、F-5コピー、ヌーボーデザイン、またそれらに、スタンダード、デラックス、フルオーダーのカスタム、と、その制作意欲はとどまるところを知りません。仕事が遅いのはかなり有名ですが、私ので、14ヶ月の約束が、2年、友人の戎井君は3年、この間メーリングリストで知り合ったアメリカの女性はもう5年も待ち続けてるそうです。特にAモデルに固執しているティムオブライエンの宣伝効果は絶大で、ナゲットといえばあのブラックフェイスのAを思い浮かべる人が多い様です。でも、あるイタリア人のナゲット愛好家に言わせると、2ポイントこそ最高の出来だといいます。ジャズっぽい物に良く用いられるんだそうですけど、日本だとあまり2ポイントを見かけませんよね。やっぱり音的にはAとFの中間に位置するのでしょうか?因みに、風の噂によると、あまりにも注文が殺到して、現在新規の注文は受け付けてないとか。先日、日本国内では、指盤のインレイの関係からリフレットワークを受け付けてもらえなくて、直接製作者の元へ、一人で里帰りの旅をさせました。マイクの
喜びようは大変なもので、「もう会えないと思っていた代表作に再会できて良かった」とFAXまでくれました。半年は覚悟していたのですが、ついでに頼んだインレイ入りのピックガード製作まで含めて、2ヶ月ほどで帰って来ました。不注意で塗装のはげたところも、丁寧なタッチアップをしてくれて、中島云々じゃないけれど、本当にいい仕事してます。一日千秋の思いで作品の完成を待っているウェイティングリスト上の人たちには迷惑がかかったかも知れませんね。1993年製
F-5 Custom #163
http://www.mandolincafe.com/nugget.html
Zeidler Carrara
今春、(98年) 長年憧れだったザイドラーの「Excalibur」を手に入れました。
(注:84年製、フラットトップギター、モデレート(ラウンド)カッタウエイ、ラスバレンバーグの持ち物だったようで、ブリッヂにピックアップ、エンドピンジャックをインストール済み、マンドリンブラザース経由で、値切ってUS$4500.)
宮崎勝之さんに貰ったボストンアコースティックバンドのライブテープの中で、ジョン・ミゲーンが鬼のような形相でかき鳴らしているのがこの楽器でした。大変大きな音量であったので、神戸シャギーのPAが高品質なのかそれとも楽器がものすごいのか、手元に来るまで判断に苦しんでましたが、楽器の勝ちと結論付けましょう。下手な私が弾いても気分はデヴィッド・グリアか、はたまたダン・クレアリー!とにかくそれまで弾いていたマーチンの70年代
D−18がいかに弾きにくく鳴らない楽器か判りました。(ちょっと言い過ぎ?)
そんな John R. Zeidlerが作っているマンドリンが 「Carrara」。 数年前にムーンシャイナー誌の投稿記事で、彼の工房がペンシルヴァニア州フィラデルフィアに在ると知り、80年当時フィラデルフィア在住だった私は大変懐かしく感じたものでした。その時の雑誌の記事ではあまり精密な写真ではありませんでしたが、インターネットで彼のホームページから「Carrara」の写真を見た時には愕然としました。今、宝くじが当たったら欲しい楽器ナンバー@です。斬新なデザインに丁寧な仕事、ギターの出来栄えから想像するに、おそらく良く鳴るトップとバランスのいい大音量が約束されているものと思われます。日本のアコースティック界屈指のプレイヤー有田さんも、ザイドラーの作品をかなりお持ちのようで、多分「ホエールダンス」の中で用いているBanjoもそうだったと思います。
http://www.zeidler.com/
今日、CoMando を見ていて、ザイドラーの住所が分かった。1441 South
Broad Street,
Philadelphia Pa., 19147 : Tel:USA 215-271-6858
Monteleone
おそらく、ギブソンのロイドロアーに次いで、高価な楽器だと思います。・・・(本当は、正に、コレクターズアイテムで、D'アンジェリコだの、ダキストだのといったべらぼうな値段の物もありますが、実用品としての部類では、)・・・ジャズギターに傾倒するようになって、マンドリンの製作をストップしたためか、更に、値段が突出しました。マンドリンブラザースで育ててもらったとの事ですが、詳しい事はまだ調べた事が無いので、良く分かりません。まずは、私の所有する「Grand Artist」について、その特徴を考察してみたいと思います。1985年製、Serial#114.パーツはすべてゴールドプレート。奇しくも私の尊敬するプレーヤーの一人、ポール・グラッセも1985年製のモンテレオーネ”A”タイプを使用しています。グリスマンが気に入ったそのヌーボーデザインは他の追随を許さないものがあります。ギブソンのF-5を頂点とする多くのビルダーがそのコピーをする中で、アールデコ調のデザインを選ぶ者もたくさんありますが、モンテレオーネだけがその成功例だといって差し支えないでしょう。完璧なバランスのシェイプに、絶妙の木目使い、格調高いサンバーストと上品なフィニッシュ。そして例のデザインのテールピースが全体を引き締めます。音色は申し分ありません。しっかりしたレスポンスで立ち上がりはあくまでピックが弦を弾くその瞬間。減衰を感じさせない長いサスティーン。高音から低音まで均一なバランス。ただ一つ音量だけが他の所有楽器に比べると、小さい気がします。パーキングロットジャムには不向きかもしれません。でもマイクを通すとまろやかながらかなりはっきりとしたトーンに満足しています。41Degnom Blvd. Bay Shore NY 11705在住のJohn Monteleone。将来暇とお金が出来たら、是非訪ねてみたいビルダーの一人です。
ここまで上記原稿を書いて、確かモンテレオーネのサイトに「Grand Artist」のイメージがあったはずだと、久しぶりに飛んでみて、びっくりしました。一新された彼のホームページには、今まで見た事も無い形のギターやマンドリンが並んでいたのです。題字横の写真ですが、「Radio
Flyer]というモデルだそうです。これにはある種の衝撃が身体を走りました。何とかして本物を見てみたいものです。
Gary H. Price
バンジョーのテールピースSL−5で有名な(リッチ&テイラー等で)プライスからマンドリン用SL−8が出たと言うアドを読み、資料請求をしてみました。ギブソンタイプのオーソドックスなタイプからサガのモンテレオーネタイプに替えて音が変わったと言う印象を持った経験のある私は、もし出来れば手持ちの鳴らない楽器の改造でもしようと思って、手紙を書いたのですが、彼はパーツはもとより、バンジョーもマンドリンもプロフェッショナルなレベルのものを製作していると言うのです。早速カタログや、いかに自分の楽器が素晴らしいかを、何度も伝えてきました。しばらく考えてオーダーする事にしました。テールピースのスペックについてはアクセサリーのページを参照してください。大まかに別けて3タイプあります。’A’’Artist’’Artist
Deluxe’です。Artist Deluxeを選んで、些少の改造を試みました、フィニッシュはサンバーストのつや消し仕様、指盤にアーチを付けて、いつもの通りラベルには私の名前とCustom
Made の文字。カールトンのケースに替えてこれにも名入れ。ただ今回はエレクトリック仕様にしたかったのでフィッシュマンのPUとプリアンプを一通り加えました。アマチュア無線家なので配線関係はお手の物と言ってましたが、かなりずさんで、すぐ使い物になら無くなり、今はアコースティックで弾いてます。これらで$1200アップの$4500くらいになりました。当時ナゲットやギルクリストは6000から8000くらいになってましたから価格帯はまあリーズナブルだったでしょう。モンテレオーネは10000超ですけど。
形状はF−5とモンテのグランドアーティストとの中間くらいのデザインです。プロトタイプをロンサムリバーバンドのドンリグスビーがエンドースで使ってましたから見た事がある人がいるかも知れません。ただし来日公演には持ってきてませんでした。スクロールはF−5の真ん中のボタンを取り除いてとがらせた形。ペグヘッドも指盤インレイもアールデコ調の柔らかいデザインです。表板はレッドシダー、但しオーダーと材料の在庫によってはシトカ、エングルマン、アディロンダック・スプルースのいずれも可能です。サイド、バックにはかなり細目の虎目模様のメイプルを使用しています。仕上げは、丁度ランディーウッドを見ているような感じの、すこし粗削りですが(宮崎さん、高松の中村さん。失礼!)音量はとにかく大きいと思います。どんなパーキングロットジャムでも目立つくらいアグレッシブな音量です。ただし音質的にはどうも好きになれません。どちらかと言うと粗雑で粗野な感じです。マイク通りも高音ばかりキンキン響くようです。弦高が高いので調節しようとしましたが、ネックとボディーの取り付け角度が急角度なので、あまりブリッジ高を下げるとバズが出てビビ
リます。このことについてEメールで意見交換をしたのですが、どうしても自分の意見が正しいといって、聞き入れてくれませんでした。手持ちの楽器の中で今一番弾いてないような気がします。ただし、これを弾いて他の楽器を手にすると大変弾きやすく感じるので、重宝してます。
Randy Wood
Gilchrist
Phoenix
派手好みの私でさえもこのマンドリンには手が出せませんでした。ヘッドのインレイどころか形自体が不死鳥をかたどっています。