医師患者間の信頼と医師への上手なかかり方


患者の権利に関するアメリカ病院協会の宣言

患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言(1981年)

看護婦を困らせる患者 ワースト10
(こんな患者さんはいやがられるようです。治療を受ける側も気をつけましょう。)

患者が求める医療・病院とは   ホスピスケア・がん告知について

木下研一先生の救急医療問題のページ

 自分自身が患者となったとき、いかに自分で満足できる治療が受けられるかは、患者さん自身の自覚にかかっているともいえます。まずは、私自身医師の立場から、医師患者間の信頼やインフォームド・コンセントについて解説し、その後で、患者さんがどのような心構えで医療を受ければよいのかを考えてみました。

診察11.医療提供の理念とは

  医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるべきで、単に治療のみならず、疾病の予防のための処置及びリハビリテーションまでを含む良質かつ適切なものでなければなりません。簡単にいうと、医療提供の原点とは「安心して、いつでも、なんでも」相談できる医療が「近く」にあることではないでしょうか。

2.インフォームド・コンセント(IC: 説明と患者の理解と選択に基づく同意)とは

 注射や手術などの医療行為は、医療の現場では当然のことと思われがちですが、社会的にみると、非日常的、非人間的行為なのです。患者と医師とのこれら非日常的関係の中にこそ、深い信頼関係は不可欠であり、それが医療の実践の根底になければなりません。また、現代型の患者像は、受け身の医療でなく、自らが理解し、納得した治療行為に協力的に参加していくというふうになってきております。患者自身が最も大きな利害関係を持つのですから、専門職自らの判断の中で相手にとって最も適切な治療を考え(医療の裁量権)、相手が理解し得る水準と範囲の中で最大限の情報を提供し、有効な治療法が複数存在するような場合には、その長短、得失を十分に説明し、患者に選択を行わせるべきであり(患者の自己決定権)、これにより患者自身が医療に積極的に参加できるのです。患者に最終的判断の責任を押しつけることを意味するのではありません。これがICです。

3.インフォームド・コンセント(IC)のあり方について

 ICを議論するに当たって、「どこまで知りたいのか」、「どこまで知らさなければならないのか」、「本当に真実を知りたいのか」、「それでよいのか」、「誰に知らせるべきなのか」、「真実を患者本人に伝えることが現在の日本の状況で妥当であるのか」について、欧米と比べて価値観の相違や告知後の支援体制が日本ではまだまだできていないため、医師あるいは患者・家族にも一致した意見はありません。「知らないでいたい希望」もあるはずです。アメリカでは医療訴訟対策としての契約的なICがおこなわれますが、患者のためとは言えません。患者と医師の関係(IC) は「契約」「義務」「権利」「責任」といったものではなく、人間的なものであるべきです。

4.納得へのプロセス-手術を受ける患者の立場から-

 アメリカで肝移植を受ける患者さんの事が雑誌に載っていましたので紹介してみましょう。
 検査の時もすぐに医師が説明をしてくれ、セカンド・オピニオン(他院の医師の参考意見も聞いてよいこと)も提示され、十分なICの後に、手術を決心すると「Wellcome to the team.(これで、君の手術に必要なメンバーが全員そろった。)」といわれ、お願いして診て頂く哀れな患者ではなく、病と戦う最も重要なメンバーであるという意識に、この患者さんはなったのだそうです。
 このように真のICは病気という共通の敵といかに戦うかのための、医者と患者の連携・共同戦線・信頼関係のあかしであり、理解や同意ではなく、納得なのです。病気ではなく、病人を見なければ医療における信頼関係は創造されないのだと思います。
 患者と目の高さを同じにして接し、患者に安心感を与え、情報伝達は損失ではなく利益を強調する説明を行うことで患者は勇気づけられるのです。

●医師への上手なかかり方

診察21.まずは、きちんとした挨拶をしましょう。

 初対面では挨拶が当然のはずですが、突然しゃべりだしたり、診るのが当然だという態度をされる方がいます。こんな方は、本当は帰って欲しいですよね。治療をして行くには、患者医師双方のよりよい関係作りがまず大切なのです。実際に救急病院をしていて思うことですが、救急で来られる患者さんの半数以上は挨拶をされないのが現状です。医師が「どうぞお座り下さい」、患者さんが「よろしくお願いします」、医師が「どうされましたか」と挨拶から診療が始まるのが普通ではないでしょうか。

2.あなたの病気の症状を医師に上手に伝えることが必要です。

 「いつ頃からどのような症状があったか。他にはどのような症状がいつ頃から加わったか。それがどのように変化したか。」話が行ったり来たりしないように、順序よくわかりやすく説明して下さい。事前にメモをしておくのも良いでしょう。どのように医師に伝えるか考えることで、待合室で診察を待つ時間も有効に使えます。そうしていただくことで、医師の方も判断がしやすくなる事で、適切な治療を受けられることにも通じ、患者さんにも好意を持つのです。バラバラで話をされる患者さんがおられますが、こんな場合は実際に私も本音でうんざりしてしまいますし、適切に判断してあげれないこともあります。

3.今後どの程度で良くなるのか、どんな治療をするのか聞いてかまいません。

 自分自身の病気のことなのですから、どんどん聞いてかまいません。大事なことはメモに取ったり、医師にたのんでメモしてもらったりして下さい。医療は専門的な部分が多いため、わかったつもりでも、後になるとどちらだったのか迷うこともあるのではと思います。わかりにくいときは、わかりやすく説明してくれるよう要求してかまいませんし、うやむやにすると後でお互いが困ったり、誤解を生じることもあります。十分にお互いが理解し合うことで、治療に最善が尽くせることになるのです。
 わかっていても念を押すためか、同じ事を何度も何度(通常4〜5回)も聞く人が時々おられますが、これはいい聞き方とは言えませんのであしからず。

4.治ったのかどうかの経過も医師に伝える努力をしましょう。

 例えば、胃潰瘍や糖尿病など、症状が良くなれば、医師に相談せずに自分で判断して薬をやめてしまい、来られない方がおられます。本当に中止して良いのかどうかよく相談していただくことも相互の信頼関係につながります。風邪などの急性の病気であっても、何かの折りに「治りました」とお礼を言われると、またちゃんと診てあげようと思うものです。医師も人間ですから……

 たとえ、最初は相互の理解が不十分であっても、お互いに尊重しあいながら、順序よく相談していくことで、より良い関係が作れ、さらに治療効果が上がることも多く経験するものです。自分の望む医療をしてくれる医師を見つけだすことも大切ですが、医師が上手に治療をせざるを得ないように、皆さんの受診のし方もあらためて考えていただければ幸いです。


かぜの発熱 熱は悪者ではありません。治すために出るものです。