ワゴンに乗ってでかけよう Vol.1 瞳を閉じて〜長崎県立奈留高等学校を訪ねて〜

風がやんだら 沖まで船を出そう
手紙を入れたガラスびんを持って
遠いところへ行った友達に
潮騒の音がもう一度届くように
今 海に流そう

「瞳を閉じて」 (アルバム『MISSLIM』収録)

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五島列島地図
ガ イ ド

大小140の島から成る五島列島の一つ。
長崎市の西約100キロの東シナ海に位置する。
海岸線が複雑に入り組み、大小11の湾があって起伏も激しい。
島の南部にある、150種類以上の植物が生い茂る「権現山樹叢」は
国の天然記念物に指定されている。
隠れキリシタンの地とされ、北部には大正時代に再建された木造の教会がある。

関西空港から長崎空港まで1時間5-15分。
奈留島へは長崎港からフェリーで3時間40分。
福江島からだと旅客船で30分。

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● 旅にでたくて / ユーミンが作った県立高の愛唱歌 〜 五島列島に残るメロディー ●

五島列島のほぼ中央、人口4600余りの奈留島。
入り江の岸壁につながれた巻き網漁船が十数隻、柔らかな日差しを浴びてゆったりと波間に揺れている。

そこから椿の花が咲く緩い坂道を20分ほど上がり詰めたところに、長崎県立奈留高がある。
校門を入ると、高さ2.5メートル、高さ2メートルの御影石製の碑が建っていて、こんな歌詞が刻まれている。

風がやんだら 沖まで船を出そう
手紙を入れたガラスびんを持って
遠いところへ行った友達に
潮騒の音がもう一度届くように
今 海に流そう

そう、あのユーミン、松任谷由実さんの「瞳を閉じて」だ。
デビュー間もない22年前、ひとりの女生徒の手紙をきっかけにプレゼント。
奈留高の愛唱歌として、今も歌い継がれている。

「ほんの気まぐれ、遊び心だったんです。なのに有名になってしまって、だか照れ臭い思いです」
1975年卒業で、今は東京・葛飾区に住む二児の母、Aさん(39)は、懐かしそうに振り返った。

当時の奈留高は、南側の福江島にある県立五島高の分校。
本校の校歌は奈留島とは縁遠かった。
2年生の冬、Aさんはラジオの深夜番組に投稿した。

思いがけず、願いはかなった。
曲は校内放送で何度か流れた。
だが、さして話題になることもなく、校歌にするのも「フォーク調なので」と職員会議で見送られた。
Aさんも、ユーミンから届いた楽譜とテープを自宅の机にしまい込んだまま、卒業と同時に上京した。
「こんなちっぽけな島から早く飛び出したい、自由に振る舞える都会で暮らしたい、とばかり考えていたんです」

レストランのウエートレスをしながら夜間の短大へ。就職、そして結婚。
里帰りするのは2、3年に一度ほどになり、国訛りもいつしか消えた。
あれほど大はしゃぎした「瞳を閉じて」だったのに、口ずさむことさえ少なくなった。

そんなある日、電話があった。
島に残って、郵便局の配達員をしている同級生のBさん(39)からだった。
「あの歌、全国の音楽の教科書に載ることになったで。歌碑ば造って、ユーミンも呼ぼうで」

Bさんの呼び掛けに、同級生ら600人から100万円を超すお金が寄せられた。
碑の除幕式は、88年8月14日に行われた。
Aさんら島を離れた卒業生も久しぶりに集まった。
ブラスバンドの演奏に迎えられたユーミンは、碑を見て、教室から海を眺めて、
「あ、私の字。えっ、詞と同じ風景じゃないの」とつぶやき大粒の涙をこぼした。

「あの時のユーミンの感激ぶり、B君らの輝いた顔、忘れません。
今も思い出すたび、ふるさとっていいなって気持ちになるんです」
Aさんは、時折、目をつむり、しみじみと話した。

その後、奈留高では卒業式や終業式、記念行事で、「瞳を閉じて」をみんなで合唱するのが恒例となった。
今年は3月1日、60人が学び舎を巣立つ。
島に残るのは、地元の銀行や病院に勤める3人だけ。
進学に就職に、57人は桜がほころびかけるころ、島を後にする。
親しんだメロディーを心の糧に−。

霧が晴れたら 小高い丘に立とう
名もない島が見えるかもしれない
小さな子供にたずねられたら
海の碧さをもう一度伝えるために
今 瞳を閉じて

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取材の終わりに会ったユーミンは、奈留島をしっかり覚えていた。

「手紙からイメージを膨らませ、遠くに行った友達へメッセージを送るつもりで作ったんです。
時々、奈留島の風景がフラッシュバックします。
あんなにきれいなふるさとがあるのは幸せ。
都会に出ても、『あの美しさを残したい』という思いを大切にしてほしいですね」

文 : 橋本栄二
写真 : 中岡愛彦
夕刊読売新聞 1996年(平成8年)2月14日(水曜日)

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1996年4月27日、快晴−。
前日に福岡入りしていた鯨井は、この日、空路で五島列島・福江空港へ。

福江空港

● 福江空港 ●

そこからバスで20分程の福江港へ。
福江港からは船で約30分。
『ようこそ奈留島へ』という観光案内図が迎えてくれます。

長崎港からもフェリーが出ていますが、休日・祝祭日は大変混み合うので要注意です。
(鯨井は95年のお盆に長崎港まで行ったものの奈留島行きのチケットが買えずに引き返しました)

奈留町観光案内図
● 奈留町観光案内図 ●
奈留町観光案内図・歌詞部分拡大
● 歌詞部分の拡大 ●

港の売店で『長崎県立奈留高等学校』の場所を教えてもらい、テクテクと−。
すると、長崎県立奈留高等学校を示す看板が。

長崎県立奈留高等学校 案内看板

● 長崎県立奈留高等学校 案内看板 ●
この看板の角を右に折れると、徒歩20分ほどの緩い坂道が −

長崎県立奈留高等学校へ続く坂道
● 長崎県立奈留高等学校へ続く坂道 ●
椿の花が散り卒業シーズンが訪れる
Yumin's Song Monument
● Yumin's Song Monument ●
坂の中途には『g』の抜けた愛敬ある看板も

そして長崎県立奈留高等学校へ− 。正門を入って左側に歌碑があります。

長崎県立奈留高等学校

● 長崎県立奈留高等学校 ●

『瞳を閉じて』歌碑

● 「瞳を閉じて」 歌碑 ●
高さ2.5メートル、幅2メートルの御影石製

■ 歌碑の表面にカメラのフラッシュが反射しますので写真撮影の際にはご注意ください

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● 関連サイト ●

長崎県立奈留高等学校 長崎県立奈留高等学校の公式サイトです。
奈留町役場 奈留町役場の公式サイトです。
かんころもちの島 『瞳を閉じて』の誕生をリアルタイムで知る、奈留高等学校出身のZENさんのサイトです。
ユーミンの歌碑をはじめ、奈留島の画像がふんだんに紹介されています。

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