貫いた ユーミン流美学 / 「期待通り」の充足感

■ 貫いた ユーミン流美学 ■

締めくくりの東京公演でこの人ならではの美意識が細部まで行き届いた舞台を作り上げた。
実は今回、いつになくファンからの不満の声が聞こえてきた。
「地味」「選曲が悪い」。
確かに例年より仕掛けは少ない。
軽快な曲とスローな曲の緩急が強過ぎ、ノリきれない場面もあった。
しかしそれを差し引いても満足感は大きかった。
照明と白煙を駆使し、夏の情景を細やかに描き出す。
圧巻は終盤の天井の六連の照明付きリングが下がり、うねる。
確かに今夏の浜崎あゆみの東京ドーム公演はもっと派手だった。
しかし、歌、装置、そして照明と、高い美意識で貫かれた演出はやはりユーミンならでは!!
聴衆の空想力を喚起し、深い余韻を残す。
「体力の続く限り、走り続けたい」。
舞台での一言が印象に残った。
疾走は、まだまだ止まらない。

※一部抜粋

2001年(平成13年) 11月6日 (火曜日) 読売新聞

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■ 「期待通り」の充足感 ■

例年、年末から始まる全国ツアーが、今年は7月から始まった。
10月27日の東京・国立代々木競技場第一体育館まで29公演。動員26万人。
特に最終の代々木を、毎年のように1週間近く(今回は6日)
満席にするパワーはユーミン以外にはないだろう。
JR原宿駅から陸続と向かう聴衆にもまれながら、彼女の魅力を考えていた。

まず、何かを与えてくれる期待がある。
時と空間を超越した夢がある。
どんなステージ、どんな歌−。そして帰路に味わう充足感。
これはファンにとってジャンルこそ違え、かつてのコーちゃん(越路吹雪)に似たものだろう。

一時は、ステージに動くエスカレーター、ゾウ(本物)なども登場させるライブだったが、
今回は「歌」そのものに集約させた。
「ダイアモンドダストが消えぬまに」や「ひこうき雲」
さらには「パール・ピアス」までが登場したのにはうれしくなった。

むろん、新アルバム「acacia」の曲がメーンだが、
硬軟取り混ぜてのにぎやかさは、一種のリラクセーションを感じさせた。
武部聡志以下のバックもソリッドかつ柔らか。
「荒井由実」時代から聴いているが、今回はベストの部類に入るだろう。
来年の全国ツアーは休みという。
今月には初のバラード・アルバムが出る−。 「あの日にかえりたい」(加古明光)

※一部事実と異なる記述がありますが本文をそのまま転載しています

2001年(平成13年) 11月7日 (水曜日) 毎日新聞

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