文化交流 成熟の予感

今年デビュー30周年を迎えるユーミン・松任谷由実が、初めての海外公演を香港で行った(10日)

会場は東京なら武道館とも言うべき香港体育館。
「やるからには日本と同じものを」
と持ち込んだセットは日本人アーティストとしては最大級のコンテナ40台分。
去年の「acacia」ツアーを基本に代表曲の弾き語りやアカペラも織り交ぜた多彩な2時間半。
客席とのトークも全編が「1ヶ月半の特訓」の成果でもある広東語。
メンバーも全員が広東語で挨拶するという徹底ぶりに、
現地客が大半を占めた1万人の客席とも和気あいあい。
はつらつとしたステージを見せた。

彼女には70年代からアジアや中国を題材とした曲もあり、
今までやらなかったことが不思議なくらい。
終演翌日のインタビューでは
「何でも一番でないと気がすまない性格」だからと冗談めかす一方で
「言葉のニュアンスが伝わらない環境」に一抹の不安があったのも事実、と言った。

今回の公演は、駐日時から彼女のファンだったという香港文化大臣の要請もあって実現。
客席には"香港四大天王"と呼ばれるトップスターなど11名をはじめ、
主だった映画や音楽関係者がズラリと顔をそろえ、関心の高さを示していた。

アイドル主体の香港に、彼女のようなキャリアで、
しかもシンガー&ソングライターは多くない。
「ちゃんとした大人の文化であり、
子供たちにもポップスとして聞かれるTWO WAYとして受け入れられることを求めていた」ことの実現。

人気アイドルへの興味だけではなく、成熟した文化として認知される。
「殿堂級的創作女皇」というメディアの評価は、
日本とアジアのそんな新しい音楽的交流を予感させてくれた。

− 田家秀樹

2002年(平成14年) 5月23日 (木曜日) 毎日新聞

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