クルマが好きだから。とにかく人よりは、努力しなきゃ、と思う。

音楽プロデューサー:松任谷正隆

エンジンのかかっている車の後ろに行って、
排気管から流れ出る煙を嗅いではこっちの方がいい匂いがするだのあっちの方がいい匂いがするだの、
僕はそんな子供だった。
車好きの子供にとってあの匂いは本当にいい匂いだったのである。
今生きているところをみると、吸い過ぎはしなかったんだろう。
全く何を考えていたんだか。
あれを吸い過ぎると大変なことになる、ということを知ったのはそれからだいぶ経ってからだ。
「怖い」と思ったときからあの匂いが好きではなくなった。

それでも僕は16歳で車の免許をとった。嬉しくて嬉しくて用もないのに走り回った。
とにかく運転がうまくなりたかった。
僕の夢は車を3台持つこと。
それが出来たら死んでもいい、いや結婚出来なくてもいいとさえ思った。
結婚して何年かして、気がついたら僕は車を3台持っていた。
運転も随分上達したように思う。

程なく車の番組が始まった。
ますます車に乗る機会が増えた。
カーオブザイヤーの選考委員にもなった。
しかし車との生活が自分と密着すればするほど、何か自分の中にこれでいいんだろうか、
という言葉にも出来ない感情が込み上げてくるようになった。
自分ではそれが何だか分かっていた。
一方で社会悪に荷担してしまう自分に矛盾を感じていたのだ。

初めてハイブリッドカーに乗ったとき「ああ、これだ」と思った。
まだスポーティーとはいえないその車に乗りながら、これが未来だ、と思った。
それから僕は踏み切りなど、ある程度予測のつくところではエンジンを切るようになった。
車に乗るのも必要最小限になった。
とにかく人よりは努力をしよう、と思った。

そうやってみて気付く世の中のいろいろなこと。
暑い寒いならともかく、エンジンをかけっぱなしで平気で駐車していられるドライバーの多いこと。
でも僕は注意しない。
まだまだ人様のことを言えるような身分じゃないから。

車は変わりつつある。
排気ガスのきれいな、低燃費のそれでいて楽しい車へ。
たとえエンジンをとめてもエアコンの効く車はもう目の前まで来ている。
でも、それまではちょっと我慢をしてエンジンをとめてみませんか?

2001年(平成13年) 12月1日 (土曜日) 毎日新聞
大気汚染防止推進月間広告(顔写真付き)より
( 環境省公健協会−公害健康被害補償予防協会

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