『ゲーマー』という言葉について

 子供の頃、ゲームが好きだった。駄菓子屋ゲーセンに通い、よく先生に見つかって叩かれたりもした。住んでいる場所が田舎だったので「ゲーセン」と呼べる場所がなく、電車に乗って「ゲーセン」に行っても1Play¥100だったので、遊べなかった。家でファミコンをするようになり、パソコンもかじった。中学生の頃、マイコンベーシックマガジンという本を買っていた。巻末のチャレンジハイスコアを見て「凄いなぁ」と憧れていた。ゲーセンのゲームを1コインクリアなんて夢のまた夢だった。

 大学生になって、こっちに来た。ゲーセンは¥50だし、ハイスコアボードはあるし、自由に使えるお金はあるし、天国のようだった。...そして、今では立派な(?)ゲーマーに...な〜んて、うさんくさい昔の話は置いといて「ゲーマー」という言葉についてである。

 基本的に「ゲーマー=ゲームをする人」であり、スコアをやりながら匡体をしばく人も、対戦で「死ねや〜」と叫んでいる人も、家でグッズに囲まれながらときメモやってる人も、イヤホンを装備してエロゲーをしながらディスプレイの前でセンズリこいている人も、みんなゲーマーである。

 さて、メモラーとセンズリストは我々には関係ないので、横に置いといて「ゲーセン」の「ゲーマー」についてである。普通「ゲーマー」と言えば、大抵はゲームの上手な人の事である。シューティングがメインの昔なら、いわゆる「スコアラー」と呼ばれる達人たちの事であった。しかし、ここ数年の格闘ブームは「ゲーマー」という言葉を「対戦の強い人」にかえてしまった。しかも、バーチャファイターの人気は「鉄人」なんていう人を作り、まるでゲームで飯を食ってる様な印象を世間に与えた。さて、問題はこの先である。

 次の世代の「ゲーマー」とは、一体誰のことを指すのか...

 最近、急速に伸びてきているゲームのジャンルにプライズゲームがある。もちろん、それ自体は子供の頃に遊んだであろうデパートの屋上などにあった景品(主にお菓子)をとる「ゲーム」から連綿と受け継がれているいるわけで、今でも対象年齢が低いスーパーの中のゲームコーナー等では活躍している。
 数年前から始まったUFOキャッチャーのブームは、ゲーセンの大半がクレーンゲームと化してしまった店もあった。ターゲットは子供よりはお金を持っているカップルや女の子... そう、セガが開拓しようとした「お金を使う」客層である。景品には原価500円以下のものしか置けないという法律の中で、欲しいと思わせて数千円単位でお金を入れさせたのは「売ってない」「ここだけでしか手にはいらない」というプレミアのせいである。「あれ取って」「よし、まかしとけ」...数千円投入...「あっ、取れた取れた、すご〜い」という微笑ましい(?)光景があちこちで見られた。

 このブーム、去年あたりからプリクラの方へ移っていったが「プレミアム」と「欲しいものには金に糸目をつけない」といえば、避けては通れないのが「マニア」の存在である。そこに目をつけたのが最近出回っているポスタードリームという機械である。3桁のデジタルが揃えばポスターが貰えるという、ゲーム性、テクニックほとんど”0”のプライズマシーンだ。今、東京の秋葉原や大阪の日本橋などという奴らのメッカにはこのポスタードリームやセル画が当たるプライズマシーンがところ狭しと並んでいる。もちろん腐った魚のような目をしたオタクどもが、ウヨウヨしているのだ。

 以下、バンバン専門学校生、現在東京在住の「M.T氏」からの報告である。

「店内に、何かを持っているような怪しいヤツが数人ウロウロしていて、人が(ポスタのゲームを)やった後にハイエナのように寄ってきてやっていく。『一人_プレイまで』と貼ってある店もあり、ひどい店では置きクレジットをしている店もある。どうやら一度当たると、次はすぐに当たらないらしく、そのために置きクレジットをしている台で当たりが出ると、そいつらは「チッ」と舌打ちしながら、そのコインを引き払っていく。」

想像してほしい。この殺伐さ、陰湿さ、反吐がでそうである。パチンコ屋でもここまでひどくはないぞ。

 しかし、最初に言ったように、こういうヤツらも行く店は「ゲーセン」であり趣味は「ゲーム」だから、つまりは「ゲーマー」となるわけで、定義としては我々と全く同類なのである。しかも、着実に伸びてきている勢力なのである。いつしか、ゲーセンの半分以上がプライズマシーンと化してしまい、ボードには新しいグッズの入荷予定がかかれ、ノートには「交換しませんか?」などという文章が並び、我々は隅のほうに追いやられるのだ。そして「ゲーマー」という言葉は、狂ったようにグッズを集める人のことを指すようになり、その不可解さを「評論家」に解説される日も、きっと遠くはないだろう。

著者:FAD-IDA