第1回・どこにも出せない普通詰将棋作品展 第5番

出題:6月1日 たくぼんの解図日記

作者: 岩田俊二  


【詰手順】

▲5二銀  △同 玉  ▲5五飛  △5四歩  ▲同 飛 △6三玉  ▲6四飛 △5二玉  
▲5四飛  △4一玉  ▲8五馬  △7四歩  ▲同 馬 △6三歩  ▲4二歩成 △同 玉
▲7五馬  △6四歩  ▲4三歩  △同 飛  ▲6四馬 △同 香  ▲4三金  △同 玉
▲5三飛  △4二玉  ▲5一飛成 △3三玉  ▲3四歩 △2二玉  ▲3一龍  △1二玉
▲1三歩  △同 玉  ▲1四歩  △1二玉  ▲2一龍 △同 玉  ▲5一飛成  △2二玉
▲1三歩成 △同 玉  ▲1四銀  △2二玉  ▲1一龍 まで 45手詰

作者の言葉(投稿時)

私は,どこにも発表できない作品,を作るのが得意なのです。なので,そういう作品の投稿場所があると,とても嬉しいです。
ということで,1作投稿します。
詰パラ大学の手数(45手詰)なのに,内容的に大学レベルに達していないという,困った作品です。


★作者の岩田さんは現在、おもちゃ箱などでよくお名前を拝見します。積極的に条件作に果敢に挑む姿勢は見ていて気持ちが良いものです。
 そういう才能が無い私には羨ましい限りです。
 本作も内容的に大学レベルに達していないと言われてますが、しっかりとした狙いを持っていますので、充分大学発表レベルだと思うのですが、
 こんど詰備会で平井さんに聞いてみましょうか?

 初手〜3手目はこれしかありませんが、3手目5五飛に対する応手が問題です。
 普通に4一玉とするとどうなるか。ここでは8五馬の一手です。(1図)

1図
 

 金銀香桂の74,63での合駒は取った駒を打って詰み。角合も取って5二角、5一玉、6三角成以下簡単。
 またここで7四歩と飛筋を通しても何も変わりません。
 とは言っても5五飛に6三玉は5三金以下簡単。さて・・・
 まあお強い方には見えるでしょう、そうです5四への中合です。
 意味付けは6三玉と逃げた時、5三金 7四玉 8四馬の場面の6五の地点の飛の利きを無くすというわけ。
 5四歩は同飛と取るしかなく、ここで4一玉は前述と同様に詰んでしまいます。
 で6三玉ですが、6四飛、5二玉、5四飛とすれば玉方はわざわざ6四歩を攻方に取らせたことになりました。
 玉方から言えば先手にわざわざ歩を渡すわけですから「不利逃避」という感覚です。
 今度6三玉は5三金で終わりですから、4一玉と逃げます。で8五馬の王手の局面。(2図)

2図
 

 上の図との相違は盤面には玉方・6四歩の有無、攻方持駒歩2枚です、
 何が一番大きいかと言うと、ここで6三歩と歩の合駒が出来るのが大きいのです。
 わざわざ6四歩を取らせたのはこの歩合をする為だったのです。
 では6三歩と合駒してみます。(3図)

3図
 

 しかし攻方にはその代償の2枚の歩を使って6三歩を無力化する手順が生じていたのです。
 4二歩成、同玉、7五馬、6四歩、4三歩、4一玉、7五馬(4図)

4図
 

 あれ3手目に対して4一玉と逃げた局面(1図)になってしまいました。(持駒歩1枚多いけど)
 これでは早く詰んでしまいます。

 2図でもう一つ受け方がありました。それが7四歩!同馬、6三歩の順です。
 狙いは4二歩成〜の上記手順で6三歩が6四に進んだ時に7三歩が無いので飛筋が通り4三歩を同飛と取ることが出来るのです。
 実に巧みな攻防です。
 飛車を奪ってからは収束で上手くまとめたという感じです。
 序の攻防が面白いだけに収束がやや長く感じられるとは思いますが、解答者には概ね好評でした。
 
 5四の中合が6四歩を取らすだけの意味付けだったら凄いなとふと思ったのですが、そんなこと出来るのかな?
 どなたかご教授を。



短評

加賀孝志
駒の捌きが旨い。詰棋の味が良く出ている。
 解答強豪がこの感想ですから、充分投稿レベルじゃないでしょうか
遊星人
どうして、どうして岩田さん。展示室や誌上で拝見する作品群は、軽妙な趣向、趣意豊かな構想で、いつも感心させられています。本作、54歩と中合をして64歩を消す「不利逃避」は面白い。 4枚の歩を使い切るのに冗長の感じですが、大学でも通用する構想でデパートに最適と思った。
 どんどん誌上でも活躍して欲しいですね
隅の老人B
まずまずの出来映えで、序の馬の動きは面白いですよ。 中盤以後に作者の不満?大学に投稿できない、ここに展示は良いけれど、これを見た平井教授はどう思う?今後の選題は、これ以上の作品を出さねばならぬ、辛いなあ。それとも、簡単に「没」で返送?さあ、どちらだろう?おかしなことを考える。
 詰備会で聞いてみます。返事が楽しみです。
DISABLED
手を進めるたびに感心させられました。邪魔な歩を消そうとする妙防に痺れました。一歩のために犠牲になる馬、じっと寄る31竜。ひさびさに中篇が解けるとうれしいです。
 作者はこういう感想が一番嬉しいものです
利波偉
序のやり取りは面白いのですが、最後が流れる辺りが投稿しなかった理由なのでしょうね。でもこういう作品が発表出来る場が欲しいですね。
 収束はやや流れますが序の攻防は面白いですよ!という言い方の考え方はどうでしょう。
小峰耕希
無解です。多分冒頭は、52銀不成、同玉、55飛、54歩合、同飛、63玉、64飛ではないかと思うのですが…。
 う〜む。ここまで解けているのに・・・
おかもと
6手目の不利逃避とか、序盤はよくできているのですが… という評が集まりそう。
 それが狙いとウィークポイントですからねえ。
KUMA
(コンピュータに解いてもらったので略させてもらいます) 簡単に詰むと思ったら4手目の54歩合を見落としてました・・・。テーマは不利逃避ですね。テーマの後始末にちょっと手数がかかりすぎでしょうか。仕方ない部分もありますけど。
 某元国務大臣の発言から「仕方ない」が使いにくくなりました。
風みどり
不利逃避するためにさらにもう1枚歩を渡して、さらにその不利逃避の目的がもう1枚歩を渡すことにある。意味的には角筋を通すための歩の連捨てと同じですが、ひねってあって面白いです。その歩を消費しなくてはならない収束が厳しいですが無理のないレベルにできていると思います。
 狙いを簡単な言葉で説明するのって難しいですね。
冬眠蛙
わざわざ中合するとは、珍しい不利逃避ですね。収束の苦労が覗える労作です。
 構想派の雄もビックリ〜!でも労作って言葉はまさにそんな感じです。