WFP作品展登場ルールのまとめ (第30〜41回) 担当:神無七郎

私が担当を開始した第30回以降のWFP作品展で実際に出題されたルールをまとめてみました。
説明の詳しさにバラツキがあったり、例図がないなど、不足な点も多々ありますが、簡易リファレンスとしてご利用いただければと思います。


1. 先後の戦略に関するもの

普通の詰将棋は攻方(王手を掛ける側)が、どう受けられても詰む手を選び、受方(王手を外す側)は手数が最も長くなる受けを選ぶ。
しかしフェアリーでは先手や後手が別の戦略を採ることがある。
「どのような手を選ぶか」という先手・後手の戦略に関わる変則ルールをここに挙げる。

【協力詰】 先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。 [補足]
通称「ばか詰」。詰パラではこの呼称で表される。
ここでは「協力詰」と書いたが、これは「目的」が「詰」の場合である。目的が変われば「協力千日手」のように変化する。
「協力自玉詰」のように、詰める対象が変わる場合もある。
【最悪詰】 攻方はなるべく相手玉が詰まないように王手し、受方はなるべく早く自玉が詰むように応じる。 [補足]
「詰める側」と「詰みを防ぐ側」が通常とは逆になっている。このため用語も逆になっており、「紛れ」を受方に、「変化」を攻方に使う。


2. 目的に関するもの

普通の詰将棋の目的は「詰」(王手が掛かっていて合法的な応手がない状態)であるが、これを変更したルールもある。

【ステイルメイト】 王手は掛かっていないが合法手のない状態にする。 [補足]
「協力自玉ステイルメイト」の形で出題される場合が多い。
単玉の自玉ステイルメイトの場合は、単に合法手のない状態。
【千日手】 先後協力して最短手数で初形局面に戻す。 [補足]
「協力千日手」の形で出題される場合が多いが、理論上は他の戦略にも適用できる。


3. 対象に関するもの

普通の詰将棋で詰める対象は受方の玉であるが、これを変更したルールもある。より一般的に言えば攻方を「目的」の状態にすること。

【自玉詰】 攻方の玉を詰める。 [補足]
「自玉詰」は「自殺詰」とも呼ばれる。詰パラではこの呼称で表される。
「目的」が「詰」以外の場合は、「自玉ステイルメイト」のように変化する。
単玉で自玉がなくても、攻方を「目的」の状態にできるなら「自玉」と呼ぶ。


4. 性能変化

何らかの条件が満たされると駒の性能が変化するルールをここにまとめる。「行きどころのない駒」や、「二歩」の扱いにはくれぐれも注意!

【対面】 敵駒と向かい合ったとき、互いに利きが入れ替わる。
【背面】 敵駒と背中合わせになったとき、互いに利きが入れ替わる。
【騎面】 八方桂の位置にある敵駒の利きに駒の利きが変わる。異なる複数の敵駒がある場合はそれらを合成した利きを持つようになる。
【安南】 味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる。
【安北】 味方の駒が縦に並ぶと、下の駒の利きは上の駒の利きになる。
【安騎】 八方桂の位置にある味方駒の利きに駒の利きが変わる。異なる複数の味方駒がある場合はそれらを合成した駒の利きを持つようになる。
【マドラシ】 同種の敵駒が互いの利きに入ると、利きがなくなる。ただし、玉は互いの利きに入ることはできない。 [補足]
玉が互いの利きに入れ、利きがなくなるものは「Kマドラシ」と表す。
成駒と生駒は別種の駒として区別する


[性能変化ルール全般的の補足]

(1) 二歩について
性能変化ルールで「玉を取ったとき、二歩になる手を有効とするか否か」でルール設定が分かれる。これを有効とするのが「利き二歩有効」、無効とするのが「利き二歩無効」。何も書いていなければ、WFP作品展では前者の設定を適用する。

(2) 行きどころのない駒について
性能変化ルールでは、性能変化により利きが復活しうる位置であれば、一時的に利き所の無い駒の存在も許される。
具体的には以下のようになる。
安南:何も問題なし
安北:一段目の桂香歩は禁止
対面:一段目の桂香歩は禁止
背面:何も問題なし
WFP作品展では他の性能変化ルールでも特に指定がない限り、この方式を適用する。

5. 手の選択に関するもの

条件によって手が制限されたり、禁手の概念が変更されたもの。
「詰み」や「王手」の概念が通常通りかどうか、くれぐれも注意!

【取禁】 手順中に駒を取る手があってはならない。
【全取禁】 駒を取る手は禁手。詰み等の概念も駒を取れないことを前提とする。 [補足]
取禁で詰み等の概念も駒を取れないことを前提とする場合は「全」を付ける。
【成禁】 手順中に成る手があってはならない。
【強欲】 駒を取る手を優先して着手を選ぶ。 [補足]
逆に、駒を取らない着手を優先するのが「禁欲」。
【打歩】 打歩詰以外の詰手を禁手とする。これは先後双方に再帰的に適用される(完全打歩)。 [補足]
打歩以外の詰を禁手とする場合は「完全打歩」、打歩以外の詰を単なる失敗と扱う場合は「単純打歩」と呼ぶ。
【Isardam】 同種の敵駒の利きに入る手を禁止する。
玉を取ると同種の敵駒の利きに入る場合は王手とみなさない。(タイプA)
[補足]
玉を取るとき敵駒の利きに入るかどうかを問わない場合は、「タイプB」。
成駒と生駒は別種の駒として区別する
【千日手禁】 同一局面が4回現われる手を禁手とする。 [補足]
将棋の実戦と異なり、連続王手かどうかは無関係。持駒の駒数が無限の場合は、有限回の増減があっても同一とみなす。
【Koko】 着手は、そのまわりの8マスに何らかの駒が存在するような地点のみ有効。王手にもこの条件は適用される。


6. フェアリー駒

フェアリーでは、通常の将棋駒とは異なる駒を使う場合がある。そのような駒は無限に考えられるが、ここではWFP作品展で実際に出題されたものだけを紹介する。
中将棋系の駒は「成」のルールが面倒なので、成らない設定で出題されることも多い。

【Five-Leaper】(伍) Five-Leaperはフェアリーチェスの駒。
距離5のマスに跳ぶ。
(○が伍の利き)
【麒麟】(麒) 中将棋の麒麟。
斜めと1間跳んだ前後左右に利く。
(○が麒の利き)


7. 復活系ルール

駒を取られたときや取ったときの挙動が通常と異なるものを、ここでまとめて説明する。

【キルケ】 駒が取られると最も近い将棋での指し始め位置に戻される。戻せないときは持駒になる。 [補足]
戻り方等は以下の細則に従う
1) 成駒は生駒になって戻る。
2) 戻り位置が埋まっていたり、二歩や行き所の無い駒になったりする場合は戻れない。
3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で取られ、複数の戻り先候補がある場合、戻る位置を選択できる。
【アンチキルケ】 駒取りがあったとき取った方の駒が、最も近い将棋での指し始め位置に戻される。 [補足]
戻り方等は以下の細則に従う
1) 成駒は成ったまま戻る。
2) 戻り位置に駒があったり、自玉に王手が掛かったりするため、戻れない場合は戻らない。
3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で駒取りを行い、複数の戻り先候補がある場合、戻る位置を選択できる。片方にのみ戻れる場合は強制的にそちらに戻る。


8. その他

以上の分類に属さないものをここでまとめて説明する。

【受先】 受方から指し始める。 [補足]
手数の偶奇やルールから判別できる場合は省略されることもある
【手余り可】 最後に攻方持駒が余っても良い。
【駒詰】 玉が指定駒の性能になる。 [補足]
・指定駒が成れる駒の場合、玉も成れる。
・玉の性能が変わるだけなので、指定がない限り、使用できる駒種・駒数は通常通り。
・ルール名は玉がどの駒になるか分かるよう「駒名+王」で表わす。例えば玉が龍の性能の場合は「龍王詰」。
「駒名+玉」としないのは"大人の事情"。
例えば玉の性能が金の場合…(以下略)。
【二玉詰】 複数の玉のどれかを詰ます。
王手もどれかの玉に掛ければ良い。
王手を外せなければ詰み。
[補足]
玉が3枚以上の「多玉詰」も「二玉詰」で表す。
【非標準駒数】 使用駒の数や種類が通常と異なる。
【持駒:∞】 指定駒を無限に持っていることを示す。
指定が特にない場合は、全種類の駒を無限に持っていることを示す。
【非連続王手】 攻方に王手の義務がない。
(王手をしても良い)
【n解】 解が複数あり、指定されたn個の解を求める出題形式。
【レトロ -m/n手】 m手逆算してn手で詰む手順を求める。
【推理将棋】 将棋についての会話をヒントに将棋の指し手を復元する。