知識を与えるだけの保健の授業から脱出し、ライフスキルを身に付けさせる授業を
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1 小学校保健のカリキュラム案
新教育課程の目玉の1つに小学校の中学年に「保健」が新しく入ることがある。その中で、心の健康、生活習慣病や、薬物乱用防止などが強調されている。
多くの学校では、すでにそれを取り入れた実践がなされている。体育と保健とを一層関連させた取り組みが試行錯誤されていると思う。
ここでは、その小学校の保健領域に絞ってカリキュラム案を提案したいと思う。
授業時数は、3,4年がそれぞれ年間8時間、5年が11時間、6年が15時間とした。
(学年) |
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3年 (8時間) |
● 歯の病気の予防(4時間) ・そしゃく(2)・歯と食べ物(2) ● けがの予防と応急手当(4時間) ・目の病気の予防(1)・けがの防止と手当てのしかた(3) |
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4年 (8時間) |
● からだの発育(4時間) ・身体の成長(1)・運動、休養、睡眠、体のリズム(3) ● 生活習慣病(4時間) ・食生活をチェックする(2)砂糖や油分と健康(2) |
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5年 (11時間) |
● 薬物乱用防止(4時間) ・飲酒防止(2)・たばこと健康(2) ● 交通事故や災害から身を守る(4時間) ・地震や火災から身を守る(2)交通事故から見を守る(2) ● 思春期に入る(3時間) ・第2次性徴(3) |
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6年 (15時間) |
● 薬物乱用防止(3時間) ・シンナーや覚せい剤の恐怖(3) ● ストレスと付き合う(4時間) ・心の健康(2)・ストレスの解消法(2) ● エイズ(3時間) ・エイズの理解と共生(3) ● 食生活(5時間) ・環境と食生活(3)長寿と食生活(2) |
保健の学習は、体育だけでなく、他の教科、特別活動、総合的な学習などと深いつながりを持っている。ここの小単元の学習が単独で行われるよりも、横断的、総合的に実施するのが望ましい。
2 授業を進めていく上で留意すること
保健学習をするにあたり、大雑把に言って次のような児童の実態が想定される。
@ 知識を身につけていない。
A 知識は身に付けているが、実践が伴わない。
今までの保健学習は、主として児童の実態が@のようなケースであることを前提に授業がなされてきた。
それはある意味では効果があった。しかし、時として過大な恐怖心を与えることもあった。また、子どもたちが知らなかった科学的な知識のみを身につけるだけで終わってしまったこともかなりあった。
そのため、「分かっているけど、実行しようとしない。いざというときに対処できない」ということが多かった。
これからは、Aのケースに重点をおいて進めるべきである。
つまり、新教育課程での保健の授業の型は、次のようになるべきである。
(十分な知識の習得+実際の場で役立つ方法や技能)を身につけさせる学習 |
エイズの授業を例に挙げる。
未だに、「エイズにうつらないためにはどうすればいいのか。」などという知識を与える内容で授業が終わっているケースがかなりある。こういった授業だけでは、 「エイズは怖い」という偏見を与えるだけで終わってしまう。
実際にエイズ患者、感染者が増えているのである。
将来にエイズに感染している人と一緒に生活や仕事をする場面が出てくる可能性が高い。
そういったときに、実際にそういった場面に子どもたちを追い込んで、具体的に考えさせ
ていく必要がある。
・ エイズの友だちに握手を求められたら、どうしますか。
・ 自分の親友から、エイズだと打ち明けられたらどうしますか。
こういった発問を行い、討論、ゲーム、シュミレーション、疑似体験、ロールプレイなどの方法で、ライフスキル(実際の場で役立つ方法や技能)を身に付けさせる。
それが、指導要領で繰り返し述べられている「生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力の基礎を培うため、健康の大切さを認識し、健康なライフスタイルを確立する」ことにつながっていく。