実のできかた

                                                TOSS 愛媛戸井 和彦 
 この単元の内容は、下記のようになっている。
  • 植物を育て、発芽、成長及び結実の仕組みを調べることができるようにする。 
  •  ア 花にはおしべやめしべなどがあり、花粉が柱頭につくと結実して種子ができること

 教科書などを見ると、つぎのような流れで指導していることが多い。

1花のつくりと変化の違いを観察する活動

2雄花と雌花の違いや共通点を観察する活動

3花粉の働きを調べる活動

 この通りに流すとつぎのような問題が生じてくる。

 なぜなら、花を観察したとき多くの子どもがまず、関心を持つのは粉(花粉)だから である。

 今までこの単元の授業を何回かしてきたがいずれの場合もそうであった。

 そので今回の授業をするにあたり、次のようなことを提案したい。

 多くの子が興味、関心を持つ花粉を1つの手掛かりにして目標に迫るような問題解 決学習を展開する。

 授業の実際を述べる。

〔1時間目〕

 いきなり、次のように問う。

みんな、朝顔の花を知ってるかい。

(なるべく、挑発するようにたずねるのがこつである。)

 「そんなの知ってるよ。」「育てたことがあるよ。」「何百回もみたことがある。」 予想どおり、こういった声が返ってきた。

 そこでもう一度、「本当か」と言うと「馬鹿にせんとってや」と怒られた。

 じゃ、朝顔の花の絵をノ−トに書いてごらん。花びらだけでなく、中にあるものも全部書いてよ。

こう言うと、こどもたちの表情が変わった。

「そんなの無理よ。」「忘れたわ」

「だって、みんなは何百回も見たことがあるし、育てたこともあるんでしょう。」

 子どもたちは困った様子である。

 とにかく、書けるだけでも描かせたみた。5人を指名し、黒板にも描かせた。

 子どもたちは知っているけどうまく描けない、そんな所まで知らなかった、こういった気持ちになっている。

 この気持ちは次の意欲を引き出した。

早く、本物の朝顔を見てみたい。

 「じゃ、外に行って咲いている朝顔の花を取ってきて観察してごらん。」こう言うと、子どもたちはすごい勢いで出かけて行った。

 ピンセットや虫めがねなどを手に持って観察を始めた。

 そのうち、何人かが「花びらをちぎって、中を見てもいいですか。」と言ってきた。(既にちぎっている子もいたが・・・)「残酷なことをするね−。」と冗談を言ったあと、「そうしたいのなら、どうぞ。」と言った。

 10分ほど自由に観察させたあと、気づいたことをノ−トにまとめさせた。

 つぎのようなことが出された。

 また、次のような疑問も出された。

 朝顔の花を観察させたとき、多くの子が(おしべ、めしべ)(花粉)に目をつけていた

〔2時間目〕

 1時間目に子どもたちから出された疑問がやがて問題となっていくが、その問題意識をもっと強めることが必要になってくる。

 そこで、2時間目には次の活動をさせた。

いろいろな花を解剖してみよう。

 学級園には、朝顔の他に、ひょうたん、ほうせんか、きゅうり、カボチャなどの花が咲いている。

 解剖をさせる前に少しだけたずねてみた。

 朝顔、ほうせんかときゅうり、ひょうたん、カボチャほ花はどこか大きく違うところがあるんだけど、どこかわかりますか。

 こういった違いが出された。これをたずねたのは、ほとんど雄花しか咲いていなかったからである。

 観察に必要なものは自由に使っていいですから、いろいろな花を解剖して気づいたことや不思議に思ったことなどを見つけてみましょう。

子どもたちが一番興味があったのは、顕微鏡を使って見ることであった。

粉(花粉)だけでなく、花の全体のつくりまで顕微鏡で見ている子がいた。他の子が来ているから自分も・・ということになったのであろう。

観察するものによって道具を使い分ける力が身についていないことが分かった。

顕微鏡で花粉を観察した子の情報が次次と出される。見えたものを他の子にも見せているからである。

ほとんどの子の活動が顕微鏡で花粉をみることになってしまった。

下の図で言うと、ミクロ的な見方しかできていないのである。

 こういった事態になった時教師の支援の仕方は大きく2つある。

  1. マクロ的な見方もするように言う。
  2. とことんミクロ的な活動をさせ、一部分(この場合は花粉を観察したこと)から問題の核心に迫らせていく。

1クラスで私は(1)の支援をしたが、ものの見事に失敗であった。

いくら言っても、子どもたちは自分が面白いと思って活動していることはやめないからである