ストレスってなあに

戸井 和彦

1 ストレスを扱った授業プラン

 多くの子どもたちがストレスを感じている。
 しかし、彼らの多くは「ストレスとはどんなものであるか」「ストレスの感じからは人によって異なること」「ストレスを解消するにはどうすればいいのか」などについて、よく知らない。
 そこで、「ストレス」を題材に次のような授業を行った。対象は6年生である。(4年生以上なら実施可能である)
第1時 ストレスってなあに
第2時 ストレスとつきあう

 授業を行うにあたって、特に留意した点は次の2つである。

(1)具体的な実践や調査などをもとに、ストレスについて理解させた。
(2)ストレスを解消するライフスキルを身につけさせるようにした。

1時間目の授業は、以下のとおりである。

2 ストレスを実感させる対比実験

 まず、静かな状態と耳障りな音が出ている場面を設定し、その中で算数の計算問題を解かせるようにした。3問ずつ、分数の計算問題を印刷しているプリントを配り、子どもたちに実験の意図を説明した。

 今から静かな状態と騒がしい状態で、算数の問題を解いてみます。
 問題を解いているときの気分などを後でたずねます。

 まず、静かな状態である。2分で止めて答え合わせをした。
 次に騒がしい状態である。
 テレビのスイッチを入れ、ザーという音が出る状態にし、更にボリュームを最大限にした。問題を解く前から「うわ〜、耐えられない。」などと言っている子がいた。特に、テレビの近くに座っている子は大変そうであった。
 同じように2分で止めさせて、答え合わせをした。
 その後、正答率をたずねた。同じような難度の問題であったが、静かな状態でしたほうが、正答率が高かった。

問題を解いているときの気分はどうちがいましたか。

・静かなときはすぐにできたが、騒がしいときは時間がかかった。
・騒がしいときは、とてもむかついたり、イライラしたりした。
・騒がしいときは音が気になって、とまどってしまった。
・騒がしいときはいつも気がついていることに気づかなかった。
 子どもたちは、異なった状態で同じ作業(算数の問題を解く)をしたとき、気分がかなり違ってくることがわかったようである。

 「テレビの雑音が出ているだけで、すごくイライラしたり、嫌な気分になったり、手間取ったりするようですね。」
こういったあと、次のプリントを配った。

3 気分調査でストレスを調べる

 みんなの気分もその時間や、やっていることなどによってちがいますね。楽しいときやイライラしているときなどがありますよね。
 このプリントで、その時間やその人といるときに楽しい、わくわくするなどと感じるときは「青」、やる気が出なかったり、イライラすると感じるときは「赤」、どちらともいえないときは「黄」を枠の中にぬりなさい。

5分間、ぬる時間をとった。
他の子と相談せずに、自分の判断で色をぬり分けさせた。また、現在の状態で色をぬり分けさせていった。

色がぬれた人は、下側に気がついたことを書きなさい。

 1項目ずつ言って、赤色をぬっているときに挙手をさせた。その後、きがついたことを言わせていった。次のようなことが出された。
・青が多かった。
・頭を使うものは、赤が多かった。
食べることに関係すること(給食、夕食など)は、青だった。
・休むことに関係することは、青が多かった。
・やはり、家のほうが落ち着くのかなあと思った。
・赤色の共通点は、あまり好きでないものだ。
・嫌いな教科は、赤だった。
 このような気づきが発表された。
 「同じ項目でも、人によってぬっている色がちがいますね。」と話した。

 最初、テレビの雑音が原因でイライラしたり、嫌な気分になったりしましたね。生活の中でも、プリントに赤色をぬった時のように、イライラしたり、やる気が出なかったりするときがあります。
 こういったとき、ストレスを感じているのです。
 ストレスの原因は雑音であったり、苦手な教科であったり、嫌なことであったりなどいろいろ考えられます。
自分にとって、いちばんのストレスは何ですか。

 プリントに書かせた。
 意外と多かったのは、兄弟姉妹とのかかわりに関することであった。
 一人の子のものを紹介する。
 ★自分にとって、いちばんのストレスは何ですか。
   母・兄
 ★どうして、そのことがストレスになっていますか。
   母・・・すぐに気が変って、子どもをがっかりさせる。
   兄・・・悪口を言ったり、家にあるほとんどのおやつなどを食べつくし、私の分も食べるときがあるから

4 ストレスがたまるとどうなるかを考えさせる

 ストレスがたまると、どうなりますか。

 子どもたちは、結構よく知っていた。次のようなことがだされた。
「でも、これってストレスの解消にもなるのよね。」などと言っている子もいた。
・ストレスを解消するために、いじめなどをするようになる。
・イライラして、ちょっとのことでも怒るようになる。
・暴力的になる。
・誰かにやつあたりするようになる。
・言葉遣いがあらくなったり、そばにあるものを蹴ったりするようになる。

最後に、ストレスの影響について説明した。

 ストレスがたまると、次のようなことが体に起こります。
1つ目。病気になります。頭やお腹がいたくなったり、髪の怪我抜けたりすることがあります。
2つ目。暴力をすぐふるったりするようになります。
3つ目。心がおかしくなったり、落ち込んだりするようになります。ひどいときは、自分を傷つけたり、自殺したりすることもあります。

 授業のあと、日記に感想を書いてくるように言った。一人の子のものを紹介する。
 この子のように、子どもたちの意識は「ストレスをどう解消するか」という方向に向かっていた。

 4時間目にストレスのことについて勉強をした。
 みんな、ストレスがたまっているようだ。私も子の日記を書いている間、少し、イライラしている。それは、お母さんが「その日記終わったら、公文しなさい」とかどんどん言ってきて、やることがいっぱいありすぎて、混乱しているからである。今日、お母さんとけんかしてしまった。
 私はイライラをなくすために、いつもふとんの中にもぐってじ〜っとしている。すると、何もなかったようにすっきりとする。
でも、ストレスってこわいものだなあと思った。病気になることもある。どうしたら、ストレスがたまらないのだろう。たまらないいい方法はないだろうか。