ホームシアターのすすめ  第二章 その1 【システムの概要 と フロント・スピーカー】


     

左から、フロントSP「BH−1213F」、リアSP「BH−1215R」、センターSP「BH−1214C」(上)、サブ・ウーハー「ASW−2004」(下)
一番右は、16センチ版フロントSP「BH−1621F」



【サラウンド・システムの概要】

フロント、センター、リア は、すべてオーバーダンピング・タイプの12センチ・フルレンジ Fostex FE126En を1発使ったバックロード・ホーンとする。
FE126Enは大型マグネットによって駆動力が強く、ハイエンドも良く伸びてツイーターを追加する必要もないため、5本のスピーカーを同じフルレンジ1発で構成することができ、AVアンプの補正回路を多用することなくシステム全体の位相の乱れを最小限に抑えられる。
これによって、ソフトに本来記録されている音像の移動や、上下左右前後に広がる音場をより正確に描き出すことが可能になる。フロント、センター、リアともに、キャビネットを12ミリ厚合板で作ることも加わって、ローコストにシステムが完成することも大きなメリット。

フロント・スピーカー BH−1213Fリア・スピーカー BH−1215R のキャビネットは、ホーンを何度も折り曲げる一般的なバックロードとは一味違うストレートなサウンドとなった BH−1026SBH−1027 と同様に、ホーンを底部で一回折り返すだけのシンプルな構造で、ホーンは上面に開口する。
これは、スクリーンの大画面にマッチするスリムなトール・ボーイのスタイルを実現する目的に加え、上面開口の BH−1025SBH−1026S でも得られた、ユニットからの直接音とホーン開口から漏れる中高音の相互干渉を大きく抑え込める効果によって、100Hz〜300Hzあたりのクロスオーバー帯域での聴感上の音の暴れが大幅に減少することを狙ったもの。

その結果、開放感があり、音像が明確で安定性が良く、音場の透明感も上昇し、小口径ユニットで感じられることが多い神経質さや低音のひ弱さも改善され、一回り大きなユニットのような屈強さとエネルギー感が得られやすくなるといったメリットがある。また、ホーン開口から散乱する中高音によって、若干の音場創生効果もあり、前後左右の空間のつながりがより自然に感じられる効果も期待できる。もちろんホームシアター専用の音作りを狙ったものではなく、通常の音楽再生でもメリットが発揮される。

加えて、フロント・スピーカーとリア・スピーカー、センター・スピーカーの低域の位相のズレを防ぐことにも考慮して、これらの機種のホーンをほぼ同じ長さとしたことで、AVアンプで各スピーカーの距離を補正するだけで、全帯域で位相のズレを抑えることができる。


なお、フロント・スピーカー には、よりエネルギー感を高めることを狙って、FE166En を用いる 16センチ版 BH−1621F (上の画像の一番右)も用意してみた。こちらはサブロク大15ミリ厚合板4枚で2本作る。ユニットは FE166En のほかに、FE168EシグマFE163En−SFE166ES−R などを使うこともできる。キャビネットの大きさは、12センチ版の BH−1213F に比べて、幅が2.2センチ、奥行きが5センチ、高さが0.9センチ大きくなるだけなので、設置条件は大体同じ。

もっとも、16センチ版だと、前述のサブ・ウーハー以外の全チャンネル同一ユニットによる音場の再現性から一歩外れてしまうことにはなるし、ツイーターの必要性も出てくるが、振動板面積が2倍になることによる余裕や迫力の向上は大きく、超軽量振動板であるサブ・コーンの付いているFE166Enを“うまく鳴らす”ことによって、微小信号の再現性をさらに高めることもできる。
ちなみに、“うまく鳴らす”には、信号(電気の状態でも、音波に復元されからの状態でも)の流れを妨げないことと、システムに余計なものを付け加えないことが、最大・最重要のコツ。

この16センチ版の場合でも、後述するリア・スピーカー「BH−1215R」とサブ・ウーハー「ASW−2004」はそのまま組み合わせて問題はないが、センター・スピーカーを置くとなると種々の問題(詳しくはセンター・スピーカーの項にて)があるので、フロント・スピーカーを16センチ版にする場合には、センター・スピーカーを用いないシステムが良いと思う。



センター・スピーカー BH−1214C は、フロントやリアと同じユニットを使うバックロードではあるが、それらとは設計方針が異なり、以前 FE107用に作った BH−1019C と似た構造で、ホーンを何度も折り返すことで開口からの中高音の漏れを減らし、ホーンはキャビネットの両サイドに開口している。
これは、設置上、ホーン開口が壁、床、フロント・スピーカーに近接した位置にくるため、開口からの余計な中高音の漏れがそれらに反射して、音像や音場を濁らせることを防ぐ意味合いがある。かと言って、ホーン開口を前面に持ってくれば、中高音の漏れが耳を直撃することで音が荒れることになり、それも問題となる。

サブ・ウーハー ASW−2004 (左右2台製作)は、モノラルの0.1ch信号に加えて、フロント・チャンネルの超低域信号も担当するステレオ仕様のウーハーとする。キャビネットは、バックロードとのつながり感を阻害するスピード感低下の原因となるネットワーク素子を使用しないASW方式とし、バックロードに負けない浸透力のある低音を確保する。概要は、16センチ・ウーハー用の ASW−1603 を、能率とエネルギー感アップのために20センチ用に大型化し、第一・第二キャビを一体型としたもの。
ユニットは、バスレフ向き20センチ・フルレンジの Fostex FF225WK。ウーハーとして見ると駆動力が強く振動板は軽いことになるが、それによって、バックロード・ホーンで構成するサラウンド・システムにマッチするハイ・スピードな低音を狙う。本当の意味でスピード感のある低音は、サブ・ウーハーを設置した位置に留まることなく、部屋中の空気をいっせいに振動させる力がある。

このシステム案では、サブ・ウーハー用のアンプを用意せず、サブ・ウーハーをフロント・スピーカーと並列接続するか、あるいはバイ・アンプ駆動(使用するAVアンプに、この機能があれば)することで、全スピーカーを1台のAVアンプで鳴らすことを想定しているため、本格ウーハーの重量級振動板だと、AVアンプによっては十分にドライブしきれない恐れもある。もし、アンプの駆動力に十分な自信がある場合には、20センチ・ウーハーのFW208Nを使ってみるという手もある。



※ 以下に機種別に仕様を紹介していく予定

  ・ フロント・スピーカー BH−1213F (12センチ・バックロード) 【下記で紹介済み】

  ・ センター・スピーカー BH−1214C (12センチ・バックロード)

  ・ 16センチ版 フロント・スピーカー BH−1621F (16センチ・バックロード)

  ・ リア・スピーカー    BH−1215R (12センチ・バックロード)

  ・ サブ・ウーハー    ASW−2004 (20センチ・ユニット使用 ASW型ウーハー)




【フロント・スピーカー BH−1213F】

            


フロント・スピーカーは、高さ168.6センチ、幅24.8センチ、奥行き27センチ のトールボーイで、前述のように、上面にホーン開口があるバックロード・ホーン。経験上、上面開口のバックロードでは、ホーン開口をあまり天井に近づけない(できれば、背後の壁とも少し離して設置する)ことが成功の秘訣のようだ。

この BH−1213F では、高さ122センチの BH-1025S より47センチ、ホーン開口が天井に近付くものの、高さ142センチの BH−1026S でも何ら問題を感じなかったので、それよりあと27センチ、開口が天井に近付いても特に問題はないと判断。ユニットの中心は94.6センチ。サブロク大の12ミリ厚合板4枚をほぼ使い切って、左右2台のキャビネットを作る。
(もし、ユニットに10センチの FE103En−SFE108S を使いたい場合は、20センチある音道の幅を3センチ狭めて17センチに、FE108Eシグマ だと4センチ狭めて16センチにする。)

ユニット取付部と底板、側板の大半を2枚重ねの24ミリ厚とし、内部にも適所に補強材を取り付けることで、強度を確保。15ミリ厚で作るとコスト・アップにつながるし、音も若干重くなる。12ミリ厚だと、ホームセンターなどで積み重ねられて売られている「ラワンコンパネ」に割と上質なものが見付かれば、それでも十分実用になる。



内部は右上の画像のように、空気室から下に伸びた音道が底部で一度だけ折り返して上面に抜ける構造。ホーン長は245センチで、スワンやレアなどとも同等。しっかりと広がりがあるホーンであるため、共鳴管的な動作はあったとしても弱く、シンプルな音道による開放感と、スパッとキレが良く押し出し感の強いバックロード・サウンドが狙える。

ホーンの広がり率が大きいことによって、キャビネット背面に大きなデッドスペースができるが、背が高いキャビネットゆえに転倒も心配なので、このスペースを利用して背面下部に容量8リットル強の、ウェイトを入れるスペースを設けた。ホームセンターで手に入る園芸用の小石(片チャンネルあたり10キロ以上入る)などを入れれば、重心が下がり転倒の抑制になるし、音の明瞭度や押し出し感もグンと向上する。さらに背面にヒートンをねじ込んで、丈夫な縄や鎖でラック(できれば柱や壁)などと連結しておけば、転倒防止策は万全だろう。


超トールボーイのスタイルなら、共鳴管スピーカーでも良さそうに思えるが、低音域が測定上でも聴感のエネルギー感でもダラ下がりになる共鳴管とは異なり、バックロードなら12センチ・ユニットでもサブ・ウーハーを追加せずとも、40Hzあたりの低音まで中音域と同等の音圧と押し出し感で再生できる。このメリットは大きい。
これによって、サブ・ウーハーが担当する低音域を狭く設定でき、ハイスピード・フルレンジの音質が支配する帯域を広くとれることで、そこそこのクオリティのアンプで鳴らしても、音が淀んだり濁ったりする度合いを軽減することができる。同価格帯での比較では、ピュア・オーディオ用のアンプより音質的に不利になるAVアンプを使用することを前提とした場合、この要件は決して無視できない。また、音楽再生時や夜間の映画鑑賞時などには、サブ・ウーハーをオフにして、バックロードだけでフルレンジ・サウンドを楽しむこともできる。

これは、共鳴管とバックロード、どちらが優れているか、ということではなく、部屋まで含めた全システムを構成する種々のアイテムに、自らの耳で十分に吟味した物を的確に用いる余裕のある熟達したマニアの場合には、共鳴管スピーカーをメインとしたシステムを使うことのメリットを存分に引き出せることが多いということであり、今回のシステム案では、そこまでのレベルを持ち合わせていなくとも、事情通のマニアではない普通の人が聴いても驚くくらいのサウンドを引き出せることを狙っている。だからバックロード、と思ってもらえれば気が楽だ。

       


上の左側の画像は、同じユニットが使える D−100(左)(長岡鉄男氏設計)と、BH−1213F(中)、それと後述の リア・スピーカー BH−1215R(右) を並べてみたもの。D−100に比べていかにも巨大に見えるBH−1213Fだが、これは前述のように背面のデッドスペースが大きいためで、ホーンの実効容積は大きくは変わらず、キャビネットの幅は3.8センチ広いが、奥行きは13センチ浅い。80インチや100インチといった大画面の両サイドに置くには、このくらいの貫禄があったほうが見た目でも安心感がある。

右の画像は、ホームシアターでの実使用に合わせて黒く着色し、自作のネットを取り付けたイメージ。部屋を暗くして画面に見入ってしまえば、存在を感じなくなるのが、ホームシアター用スピーカーの真骨頂だとすれば、このくらいだと合格点だろうか。



W = 248  H = 1686  D = 270  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、また後日。

2012/9/3 up



引き続き、下記の機種を順次紹介していく予定です。

  【センター・スピーカー BH−1214C】

  【16センチ版 フロント・スピーカー BH−1621F】

  【リア・スピーカー BH−1215R】

  【サブ・ウーハー ASW−2004】




六畳間の短辺への、100インチ・スクリーンの設置例


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