MX-127AV「凱旋門」 50インチ・テレビ用に拡張してみる案 「ブランデンブルク」
  

以前、上図のようなAVアンプで鳴らす5.1chサラウンドの前方3chを想定したテレビ台スピーカーをサイズ別に 4機種設計してみた が、横幅1メートルを超えるキャビネットを組み立て、さらにテレビ台スピーカーを鳴らすためデジタル放送のAAC音声にも対応したAVアンプを新たに調達するというのは、導入に至るまでのハードルが少々高いかもしれない。

もし手元に昔作ったテレビ台スピーカーがあるのなら、それを活用して現代の大型テレビに似合うルックスに変身させてみてはどうだろう。そう思って、29インチ・ブラウン管テレビを想定して長岡鉄男氏が設計した横幅70センチのMX-127AV「凱旋門」にできるだけ手を加えることなく、大型テレビに見合うように横幅を拡張する案を考えてみた。
当初は仮称として「凱旋門プラス」としたが、「凱旋門」拡張案の一例ということと、何となく雰囲気が似ている気もするので、数多い凱旋門のひとつである「ブランデンブルク」と名付けることとした。

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  左図が MX-127AV 『凱旋門』  右図がその拡張案 『ブランデンブルク』

「凱旋門」を選んだのは、おそらくこれまで作られた自作テレビ台スピーカーの中で最も知名度が高く、音響効果も大きい機種であることから、あえて手間とコストを掛けて大型テレビ用に拡張する意義があると踏んだからだ。

凱旋門の設計当初は、当時のテレビの割と多くの機種に搭載されていた外部スピーカー端子に接続して鳴らすことが想定されていたが、残念ながら現在の薄型テレビにはそういった機能は盛り込まれていない。これは、時代の流れだろう。
しかし、そのため、凱旋門を安価ではあってもオーディオ用のプリメイン・アンプ(アンバランス出力の機種に限る)で鳴らすことになるので、テレビ内蔵アンプに比べて音質が向上するはずだし、大型化・ワイドレンジ化の効果も現れやすくなる。
凱旋門の設計当時にはなかったインターネット・オークションも盛んに行われ、全国チェーンの中古家電店も増えていたりと、手頃な値段で必要にして十分な機能と音質のプリメイン・アンプが簡単に手に入るようにもなっている。これも時代の流れのひとつだ。

ここでは、50インチ・テレビ(横幅120センチ強)を想定して、「凱旋門」の左右にそれぞれ幅30センチの新作キャビネットを追加して、全幅を130センチに拡張する例を挙げてみる。
当初、「凱旋門」の機種名である「MX-127AV」(おそらく、使用ユニットの FE127 からとったものだろう)に合わせて幅127センチへの拡張案を考えたが、実際に板取りしてみると中途半端に余りが出るし、横幅がぴったり70センチの凱旋門を拡張するのに半端な数字ではスッキリしない気もしてきたので、結局130センチとした。




 組立図板取図 を用意しました。(2011/3/10)

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左右に追加するキャビネットは、低域の再生レンジを拡張するためにASWウーハー「ASW-1302」として設計する。もともと凱旋門本体の再生レンジは厳しくみても40Hz〜12kHzと、テレビ用としては十分すぎるほどワイド・レンジなのだが、ASWウーハーの追加によって、一般家庭のリビングで実現できるほどほどの音量でも、超低音領域の鼓膜を揺さぶるような空気感が十分に味わえるように なると、画面の大型化との相乗効果で、がぜん臨場感が深まると思う。

最初は、凱旋門の外形をそのまま左右に引き伸ばしたような形状も考えてみたが、どこかの会社の重役室に置かれている机のように見えなくもないし、ユニット家具みたいに見えなくもない。それでは面白くないので、凱旋門本体との接合の利便性(後述)にも配慮して、上図のような形状に落ちついた。

追加キャビネットの総容積は片チャンネルあたり30リットル強なので、使用するウーハー・ユニット(またはウーハー・タイプのフルレンジ・ユニット)は、12〜13センチ口径とする。
foが70HzのFE127に対して凱旋門本体のダクトのチューニング周波数は約50Hz。追加のASWウーハーのダクトのチューニング周波数はそれよりも2割程度低くとりたい。
そこで、foが十分に低く、Qoの値が十分に小さく、振動板の強度が大きく、磁気回路が強く、しかも、あまり高額ではない、ことを条件に、いろいろなウーハーやフルレンジの特性を調べてみたが、条件に合うウーハーが見付かった。

  PARC Audio DCU-131A                   Fostex FT17H
   アルミニウム振動板の13センチ・ウーハー。
    実際の販売価格の参考に

              

foは約46Hz、Qoは約0.3、マグネットは外径90ミリで重量400g。フレームはダイキャスト製。もともと防磁タイプではないので、駆動力が不足した場合には、キャンセリング・マグネットを追加して適度に強化することもできる。
また、インピーダンスは6Ωなので、凱旋門と並列接続する場合、8Ωのウーハーよりも見かけ上の能率の点でも有利。総合インピーダンスは4Ωとなるが、普通のプリメイン・アンプならこのシステムを十分に大音量で鳴らせる範囲内だと思う。

ASWウーハーで30Hz以下までしっかり伸ばすので、それとバランスするよう、ハイエンドもスーパーツイーターとして Fostex FT17H を0.3〜0.5μF程度の小容量のコンデンサーで追加すると、25Hz〜40kHzが実現する。
以前は、1kHz(1000Hz)を中心に、ローエンドとハイエンドの周波数を掛け合わせて100万になるとバランスが良いと言われていたこともあったようだ。下が100Hzなら上は10kHz、下が50Hzなら上は20kHz、という具合で、今回の拡張案25Hz〜40kHzも、理屈の上ではちょうど100万になる。

凱旋門本体は従来どおりマトリクス接続で、ASWウーハーとツイーターは通常のステレオ接続で使用する。ASWウーハーは40Hz以下、ツイーターは16kHz以上といった音像定位にはほとんど影響しない帯域を受け持つので、これで特に問題は生じない。



もし、使用するテレビがブラウン管方式の場合には、あらかじめ磁気漏れを抑える設計となっている防磁型ユニットのほうが、画面の色ずれによるトラブルを避ける上で安心であるので、下記の13センチ・ウーハーを挙げておく。
          
       DAYTON AUDIO DC130BS-4 (4Ωタイプ)

       DAYTON AUDIO DC130BS-8 (8Ωタイプ)

前述の PARC Audio DUC-131A に比べ、製作コストの面で安上がりにもなるが、振動板の強度やフレームの材質と強度の違いのほか、Qoの値が少し高めに設定されていることもあって、ややソフトで腰の弱い音になるのではないかと想像できる。もっとも、50インチ内外のテレビ用スピーカーとして聴く場合には、映像のほうに視聴者の注意力の大部分が奪われてしまうので、音質の差があまり気にならない人も多いかもしれない。

低域の量感の点では、4Ωタイプのほうが8Ωタイプに対して3dB有利になるが、凱旋門本体(12Ω)と合わせた総合インピーダンスが3Ωにまで下がる。とはいえ、総合インピーダンスが2Ω未満となるSS-66「モアイ」でも、ちゃんとしたプリメイン・アンプならしっかりと大音量で鳴らせるらしいので、50インチ・テレビに見合うくらいの音量なら、3Ωでも普通に鳴ってくれるものと思う。
心配な場合には、低音の音圧は低下するが8Ωタイプを選び、低域が薄いと感じたらアンプのトーン・コントロールを少し効かせて補えば良いだろう。総合インピーダンスは4.8Ωになる。

そのほかに注意すべき点として、ユニットの取付穴径が、DUC-131Aの116ミリとDC130BSの121ミリで異なり、そのまま単純に交換することはできないので、板材カットの前にユニットを決めておく必要がある。



今回の拡張案には、下図のように左右2本の追加キャビネットの製作に加え、凱旋門本体の天板全面への合板の重ね貼りも含まれる。追加キャビネット前面の小さな丸穴は、ツイーターを追加する場合の取付け穴である。
天板の追加は凱旋門自体の補強という意味合いもあるが、それ以上に、大きく重い板であるテレビ本体を支えるテレビ・スタンドを、しっかりと天板にネジ止めできるようにするための対策でもある。オリジナルの15ミリ厚のままだと、ネジの効きがいまひとつだと思うが、30ミリ厚あればガッチリ固定できる。
左右キャビネットの高さも、天板を追加した状態の46センチに合わせてあり、板一枚分の厚みではあるが、内容積の確保にも一役かっている。

     

追加キャビネット「ASW-1302」は凱旋門本体と並べ密着させて置くだけでも悪くはないが、側板の前後にフランジ状になっている部分(上図の斜線部)を設けてあるので、それを利用して凱旋門本体の脚部にネジ止めすると簡単に一体化できるし、簡単に取り外すこともできる。
完全に一体化してしまっても良いという場合には、側板全体に接着剤を塗り、フランジ部分を利用してクランプやハタガネで圧着したり釘打ちしてしまうと、重量増の効果で低音の押し出し感向上が期待できる。



   

上図が追加キャビネットの分解図(ともに左チャンネル)。大きく見て二階建ての構造となっている。左図は前面上側から、右図は前面下側から見た状態。
ウーハー・ユニットは底板側から入れ、一階部分の天井に取り付ける。底板は接着せずネジ止めして点検する際に取り外せるようにしておく。

振動板から出た音は、コの字に折れ曲がって一階部分のダクト開口に達することで中高音の漏れの軽減になるため、適所にグラスウールを貼り付ければ、ハイ・カット用のコイルなしで、十分に実用になる程度に中高音をカットできると思う。
また、前面に開口しているバスレフ・ダクトは幅15ミリのスリット状となっているが、余った板材を利用するなどすれば、正確な寸法を確保できる。



   

ツイーターを追加する場合、左図のように左右の追加キャビネットに取り付ければ、凱旋門本体に改造を施す必要がなく、比較的工作もしやすいが、この場合、ツイーター間の距離が85センチになる。(上記の組立図と板取図は、この状態で作図)
ピュア・オーディオのように常にリスナーがセンターライン上で聴くには、これで何ら問題はないが、何人かが左右に並んでセンターから大きく外れて聴く場合には、2本のツイーターに大きな距離差が生じて、思うようにハイエンドが伸びて聴こえないという問題が起こりうる。

それを避けるためには、右図のように、凱旋門本体の3つのフルレンジ・ユニットの間にできるだけ狭い間隔でツイーターをマウントすれば良く、内部の仕切り板に掛からないように取り付け位置を決めた右図の状態では、ツイーターの間隔は31センチとなる。

しかし、すでに組みあがっているキャビネットに後から穴を開けるのは苦労も多いし、名機「凱旋門」の本体に大きな改造を加えることに、ためらいを感じる人も少なからずいると思う。
一歩ひいてみると、センターライン上から外れることで、凱旋門本来のマトリクス・サラウンドの効果もいくらかは低下してしまうことも踏まえると、ツイーターの位置だけにこだわる必要はないのかもしれない。
さらに言うと、自作ネットを取り付けない場合には、両者の音質の差よりもルックスの差のほうがよほど気になるはずなので、ツイーターの有無も含めて、見た目の安定感で好きなほうを選べば、それが一番問題が少ない方法だとも思う。



       

といった感じで、これからの大型テレビの時代にも十分に「凱旋門」が活躍できるようにと思い立ち、こういった拡張案を考えてみた。

1992年「凱旋門」設計当時のフルレンジ・ユニット FE127 はその後 FE127E にモデル・チェンジし、2010年には一時生産終了となっていたが、現時点(2011/1/20)ではその改良版が FE127KO という型番で生産されている。 ( ※ コイズミ無線のみで取り扱いあり)
古くなったユニットを新品に交換するだけで、キャビネットを組み立てた当時の新鮮なサウンドが蘇る(キャビネットのエージングは完了しているので、それ以上の音質が望める)のも、ネットワーク素子すら必要としないフルレンジ・ユニットの自作スピーカーならではのことだ。

今回の拡張案では、横幅が2倍近くに大きくなる割に、機器を収納するスペースは以前と変わらないので、上図のように薄型のプリメイン・アンプ(繰り返すが、アンバランス出力の機種に限る)とレコーダーを置くといっぱいになる。レコーダーやプレーヤーには高さ4センチを切るような薄型の機種もあるので、それらを選べば録画機器と再生機器をともに収納でき、分けて使えてなにかと便利だろう。あるいは、薄型のプレーヤーを天板とテレビ本体の隙間に置くといった使い方もできる。

「凱旋門」を使っている方の中で、実際にこの拡張案での製作を考えるとはいかないまでも、多少は興味を持った方がおられるのか、ということも分からないが、凱旋門を使っていない方も含めて、良くも悪くも、スピーカーを設計したり組み立てたりする際のひとつのヒントになれば良いと思う。

(2011/3/10)
(2011/1/20)



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