自作スピーカー・ギャラリー


テレビ台スピーカー TV−110 を作る

ふたつ前のページで、現在の薄型テレビにマッチする 4種類のテレビ台スピーカー を紹介し(右の画像は、その中の「TV−117」、その次のページでは、長岡鉄男氏設計の自作テレビ台スピーカー「凱旋門 MX-127」の 横幅と周波数レンジを拡張するプラン 「凱旋門プラス“ブランデンブルク”」 を紹介した。

かねてからボク自身もテレビ台スピーカーをひとつ作ってみたいと考えていたのだが、できれば左右にASW型ウーハーを追加してカンロク十分の面構えとなる「ブランデンブルク」に挑戦してみたいところ。しかし、肝心の「凱旋門」本体を持っていないし、必要としているサイズにもちょっと大きい。
先にプランを紹介した4機種は、ともにセンターと左右、3本のフルレンジ・ユニットを取り付ける仕様となっているが、キャビネット内部は、その3本のユニットをひとまとめにして、1台のバスレフ箱、またはダブル・バスレフ箱として動作する構造となっている。

こうしておくことで、アンバランス出力のステレオ・プリメインアンプで「凱旋門」のようにマトリクス・スピーカーとして鳴らしても、AVアンプで鳴らすフロント3chのスピーカーとして使用しても、伸びのある音が得られやすく、3本のユニットに均等に背圧が掛かることで、スピーカー全体での動作の不均一が生じにいと考えた。システムの変更にも柔軟に対応できるというわけだ。また、ホームシアターではなくテレビ音声を増強するために、わざわざAVアンプを新調することに抵抗を感じる人も少なくないだろうから、プリメイン・アンプで鳴らせるという条件も重要と見込んでのこと。

さて、自分で作ってみるには、どの機種が良いだろう。今のところ50インチを超えるテレビを導入する予定はないので、「ブランデンブルク」同様に「TV−135 パルテノン」「TV−129 パルテノン・ミニ」も自動的に外れる。「TV−105」では、ちょっと小さい。
ということで、構想を紹介した4機種の中から選ぶとすると、40〜42インチ・テレビとルックス的なマッチングの良い「TV−117」(右の画像)が候補として残る。しかし、そこで一旦歩みを止めて考え直してみた。




TV-110

この機種は、わたしの設計



今回製作したテレビ台スピーカー 「TV−110」
(その上に載っているのは、今のところ32インチ・テレビ)


一見したところは、なんだやっぱり「TV−117」じゃないかと思われそうだが、外観のプロポーションこそ「TV−117」を踏襲したものの、内部を刷新し、3本のフルレンジ・ユニットをAVアンプのバーチャル・サラウンド機能で鳴らすことを前提とした構造に改めてみた。今回は「自分で作って、自分の都合に合わせて使えれば良い」というワガママな理由からだ。
両側板を含む全体の幅は110.8センチだが、上部ボックス部の幅は106センチ。42インチ・テレビが無理なく載せられるサイズで、最近のベゼル(枠)の細いテレビなら、46インチくらいまではギリギリ載せられるようだ。左右の機器を入れるスペースは、幅45.1センチ、高さ22センチとなっている。

「TV−117」は15ミリ厚サブロク合板を2枚使う仕様だったが、本機「TV−110」ではローコストに徹して、12ミリ厚合板2枚に決定。キャビネットはそこそこ大きく、後からの修正は大変な作業となるので、部材のカット寸法の精度を、おろそかにするわけにはいかない。
インターネットで初めて見掛けたとある木材加工業者で、「値段の割に質が良い」という触れ込みのコンパネ(建築用の型枠材で厚さ12ミリ)が販売されており、カット料金もリーズナブル。ちょっとした冒険だが、今回はテレビ台スピーカーだということも手伝って、このネット・ショップにカットを依頼することに決めた。
かくして送られてきた板材は、ボクが見る限りでは、少なくとも塗装を施すテレビ台スピーカーということを前提とすれば、まったく問題を感じないもので、寸法精度も十分に納得のいくレベル。結果的に正解だったようだ。もっとも、何事にも完璧を求める人には、「コンパネ」という名前が付いている時点で、即、不合格にされてしまいそうだが。






「TV−110」は上図のように、テレビを載せる上部ボックス部は4分割されている。左右の「L字型」のスペースが、それぞれ左右のフロント・スピーカー用のダブル・バスレフの第一キャビネット。それらとスリット(ダブル・バスレフの第一ダクト)を通じて接続している中央後部のスペースが、ダブル・バスレフの第二キャビネットで、第二キャビは左右共用のアンサンブル型となる。第二キャビには、センター下部の柱状部も含まれており、柱状部前面にある縦スリットが第二ダクト。このスリット状の第二ダクトを、ルックス的なアクセントとサブ・ウーハー的な低音増強に利用する。

そして上部ボックス部の前部中央が、センター・スピーカー用のバスレフ箱で、左右フロント・スピーカーのダブル・バスレフ箱とは完全に独立している。バスレフ・ダクトには塩ビ管の継ぎ手を2本利用してみた。センター・スピーカーはAVアンプで「スモール」に設定して低域をカットし、その低音はフロント・スピーカーに振り分ける仕様としたので、低域は100Hzあたりまで伸びていれば合格点。その分、キャビネット全体をいくらかでも小型にできる。 また、センター・スピーカーのキャビネットを独立させておくことで、セリフのバランスを大きくして聴きたい場合にも、スピーカー全体の動作が崩れにくくなることも視野に入れている。

今回はユニットに手持ちのFE127を使ったが、このユニット専用のキャビネットではないので、foが70Hz近辺で、標準バスレフ箱の容積が8〜10リットル程度の10センチ〜13センチ・フルレンジなら、大抵のものが使える。薄型テレビの場合には、ユニットから漏れる磁気による画面の色ずれを心配する必要もないので、ブラウン管テレビの時代よりも、ユニットの選択肢が大きく広がる。
なお、「TV−110」を、センターのユニットに多くの低音信号が集中するマトリクス・スピーカーとして鳴らした場合には、上記の構造的な理由から、残念なことに欲しい低音域が出てこないため、期待はずれの結果に終わってしまうことになる。ステレオ・アンプで鳴らす場合には、後述のように左右のスピーカーのみを鳴らすのが得策のようだ。



W = 1108  H = 418(キャスターを除く)  D = 437  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。


          

    組立の様子


天板と前後バッフルを取り付ける前の状態。
後で塗装しにくい第二ダクト内部は、あらかじめ塗装しておいた。

底板(棚板)もそこそこ補強。
100均ショップで2個105円で見つけたキャスターも、6個取り付けた。



コンパネを使用したが、値段の割りに表面もキレイ。
テレビ台SPとして必要にして十分な材質は、確保できたようだ。

サンドペーパーで表面研磨後、墨汁と油性液体ワックスで表面仕上げ。
塗装前とはガラリと印象が変わる。



機器をセットしネットも取り付けると、インテリアの一員としての風合いも出てきた。
AVアンプは、デジタル放送(AAC音声)対応の薄型タイプ、パイオニア VSA-C555

今回は、ユニットに手持ちのFE127を使用。ネットを外すと、
レトロなルックスが強く主張する。新調するならFF125WKあたり。





測定と試聴



センター・スピーカー のみの周波数特性
(ローカットをしていない状態)


左右のフロント・スピーカー のみの周波数特性
(ローカットなし。左右同時出力)


テレビの試聴位置を想定した約1.5メートルの距離で周波数を測定してみた。
グラフは左から、25Hz、40Hz、63Hz、100Hz、160Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHz



まずは、バスレフ箱のセンター・スピーカーを、ローカットしていない状態で測定したのが、左のグラフ。
バスレフ・ダクトのチューニング周波数は約70Hzだが、少なくとも100Hzまではしっかりと再生できている。本機のセンター・スピーカーは、AVアンプの設定で100Hz以下をカットして鳴らす仕様なので、これで大丈夫。

次に、ダブル・バスレフ箱の左右のフロント・スピーカーを、左右同時出力で測定したのが、右のグラフ。
前述のセンター・スピーカーのバスレフ箱と比較すると良く分かるが、ダブル・バスレフの効果で50Hz付近の音圧がグンと上昇している。その上の100Hzにピークがあり、テレビ画面との組み合わせで迫力を得たい場合に、効果的にはたらく。

FE127の特色から全体的にやや腰の高いバランスに聴こえることと、製造年代の古い左右のユニットの8kHzに大きなピークがあることが気になるが、いずれFF125WKあたりに交換しようと思っている。



試聴は画像にあるAVアンプやDVDプレーヤーなどを組み合わせて行った。テレビ、DVDプレーヤーとAVアンプは光デジタル・ケーブルで接続している。

まずはリア・スピーカーは追加せず、本来の使い方である「TV−110」単体で、AVアンプをバーチャル・サラウンドに設定して鳴らしてみる。映画ソフトや放送番組など、サラウンド効果を盛り込んでいる音声を再生すると、テレビ画面の外側はもとよりスピーカーの外側や前方に音が広がり、フルレンジ特有のスピードのある低音が軽々と飛び出してきて、あえてテレビ台スピーカーを鳴らしているだけの効果が、十二分に発揮されているといった感じ。また、ネットを取り付けて鳴らしていることで、FE127特有の高域の歪み感も和らいでいるようだ。

次に、手持ちの5.1chセットのミニ・サイズのサテライト・スピーカーを、リア・スピーカーとして追加して、サラウンド収録されたソフトの5.0ch(サブ・ウーハーは無し)再生を行ってみた。さすがに音場がグンと広がり、音像の移動感もシッカリ出てくる。その反面、相対的にテレビ画面の存在がグンと小さくなる。TV−110に載せられるサイズのテレビに対して、ここまでやる必要はないのではないかというのが実感。

ただ、テレビの前にスクリーンを置いたり垂らしたりして、かんたんにホームシアターを楽しみたいといった場合には、「TV−110」のようなテレビ台スピーカーをフロント3chのスピーカーとして流用し、シアター用にはリア・スピーカーとサブ・ウーハーからも音を出すようにすれば、最小限の投資でそこそこの満足感が得られるかもしれない。



今度は、本来の目的とは異なるが、ステレオ収録の音楽CDも再生してみた。この場合は、バーチャル・サラウンドの機能をオフにして、純粋にステレオ再生する場合が最も音が良かった。そのとき感じたのは、センター・スピーカーは鳴っていないはずなのに、音場の広がり感は十分に確保されている上で、ボーカルなどのセンター信号が非常に濃密に聴こえてくること。何かの間違いでセンターも鳴っているのではないかと、センターのユニットに耳を近付けてみても、もちろん音は聴こえない。

「メカニカル・アース」という概念を、オーディオ評論家の江川三郎氏が提唱しているが、本機のような左右のユニットがひとつのボディに取り付けられているアンサンブル・タイプのスピーカーでは、左右チャンネル共通の動作の基点(アース・ポイント)が明確になり、左右のスピーカーが協力し合って醸し出すセンター信号が、自ずと明確に表現されるのではないか。
通常のオーディオにおけるステレオ再生で、センターの音像定位がぼけるという悩みを持っている場合、左右のスピーカーが勝手にふらつかないように、セッティングの基盤を再考するというのも、解決のためのひとつの手かもしれない。そんなことを思ったりもした。



現在、本機のようなテレビ台スピーカーを鳴らすのに新品のアンプを探そうとすると、コストの面でも使い勝手の面でも最も手頃なのは、出力10W+10W程度で手のひらにも載るデジタル・アンプだろう。RCA端子による音声出力機能のない多くのテレビの場合には、テレビのヘッドホン端子と抵抗入りのケーブルで接続することになるので、S/N比の点が少し心配だが、テレビのリモコンで音量調節ができる点は便利だ。
もちろん左右2チャンネルのみのステレオ再生であり、たとえば「TV−110」の場合だったら、センター・スピーカーは鳴らせないし、大抵の小型デジタル・アンプでは、出力値を稼ぐためにバランス出力回路になっていることから、「凱旋門」のようなマトリクス・スピーカーを鳴らすこともできない。

しかし、最近のテレビ番組の音声には、巧みに位相処理され2本のスピーカーのみでも広がり感が得られるように加工されているものが多く、実はステレオ再生でも十分に実用になる。メーカー製のテレビ台スピーカーの仕様に2.1ch(左右2チャンネル+サブ・ウーハー)が多いのも、そういう理由からかもしれない。まずは、薄型テレビ本体の音声の限界を打ち破って、周波数レンジを拡張し迫力を数倍増させることに意味があるというわけだ。
「TV−110」も、小型デジタル・アンプを含めたバランス出力のアンプで鳴らす場合には、最初からセンター・スピーカーを取り付けず、センター用のキャビをデッド・スペースとして残しておくか、またはツイーターを取り付けるスペースに活用するなどして、ステレオ仕様のテレビ台スピーカーとしての利用でも、十分に効果を発揮できるように思う。

近年、薄型テレビは、70インチ、80インチと、どんどん大型化してきているが、それに合わせてテレビ台スピーカーも大型化すれば、スピーカー・キャビネットとして利用できる容積も自ずと大きくなって、16センチ2ウェイとか、20センチ2ウェイのダブル・バスレフ箱を採用した、さらにワイドレンジで迫力のあるサウンドのテレビ台スピーカーの可能性も出てくる。サブロク合板の長辺をそのまま活用すれば、80インチ・テレビ用のテレビ台だっていけるだろう。「一間箪笥」(いっけん・だんす)ならぬ、「一間スピーカー」といったところか。
もっとも、テレビもここまで大きくなると、「たかがテレビ」なんてことも言ってもいられなくなって、ミドル・クラスのAVアンプや本格スピーカーと組み合わせたサラウンド再生とのバランスのほうが良くなってくるのだろうが、ホームシアターともピュア・オーディオとも隔離して、「80インチ・テレビで気軽にテレビ番組を視る環境」を持ち合わせている人の中には、80インチ用のテレビ台スピーカーが必要だと感じる人も、いるかもしれない。

2013/3/15 up


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