なんだか 日記

2000年6月


去る5月29日、オーディオ評論家 長岡鉄男氏が亡くなられました。 心よりご冥福をお祈りいたします。


インデックス
6月11日 長岡鉄男氏を偲んで
6月17日 アイアン・ジャイアント
6月23日 stereo誌 工作特集号

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6月23日

stereo誌 工作特集号

月刊ステレオ誌は毎年7月号は自作スピーカーを中心にした工作特集号に なっている。首都圏での正式発売日は6月19日だったが、さらに2日早 い17日には一部の電気店などで入手できらしいが、こちらはよくある 「一部地方は発売が遅れます。」の一部地方なのでやっと22日になって 入手できた。なにもこの本に限ったことではないが、ネット上の一部自作 関連サイトでは5日も前に話題に上がっているというのに、このタイムラ グは少々我慢しづらいものがある。ま、これも地方に住んでいるのだから しかたないか。。。
昨年までの工作特集号ならまず長岡鉄男氏設計の6〜8機種の新作スピー カーの製作と試聴・測定の記事から自作特集が始まるのだが、今年はその 長岡氏が記事を書き上げる前に亡くなってしまった。しかし、スピーカー の製作はゴールデン・ウィーク中に出来ていたらしく、完成したスピー カーは誌面に登場している。
かなり大型の40cm4ウェイスピーカーやFE88ESを3発使ったスタ ンド一体型のマトリクス・スピーカー、FE108Σ使用の薄型バック ロード・ホーンなど、実際の音の傾向や周波数特性などを知りたくなって しまう機種が多い。 いつもの方舟での試聴ではなかったが、stereo誌の名物コーナー 「音の館」の面々による試聴記事と解説はなかなか楽しめる内容だったと 思う。
また、長岡氏の著書「こんなスピーカー見たことない」や「同 2」の長岡 氏設計の全スピーカーリストを眺めてみると、これまでに長岡氏が設計だ けは済ませたものの実際には未製作の機種が数多くあり、7月号の編集後 記を読むと今後も誌面でこの長岡氏の未製作スピーカーを発表していくと のこと。しばらくは、長岡氏の新作スピーカーに対面する機会が残ってい るということで、誌面上では急にさみしくなってしまうようなことはない ようだ。しかし、やはり製作記事には周波数特性のスペアナ写真を載せて 欲しい。
思うに、この先自作オーディオマニアがリファレンスで使用できるような 長岡流で考えるところのハイファイ・スピーカーである音の良い大型バッ クロード・ホーンや共鳴管スピーカーの新作が発表されなくなってしまう ことで一番心配なのが、フォステクスのFEシリーズの限定発売ユニットに 代表されるハイスピード・高分解能ユニットの供給が継続されるかだろう。 ( 図面が掲載された著書が絶版にならない限りはキャビネットの製作の ほうはさしあたって問題にはならないと思うが。) ユニットなんて数年も使用していればスピード感や音質が落ちてしまうの で、音質にこだわるのならやはり数年に一度はそれまでと同じモデルで あっても新しいものに交換したい。はたしてその願いはかなえられるの だろうか。と、月並みなことで悩んでみたところでしかたのないことか。。。
ところで、工作特集号では毎年「工作人間大集合」ということで、読者の 作った自作オーディオ機器(といってもほとんどがスピーカーだが。)の 写真と顔写真を募集している。5年前にも一度応募しモノクロのページに 載ったことがあり、今年もゴールデン・ウィーク中に写真を準備して応募 していたものが、めでたくカラーページに掲載された。といっても、この コーナーが全部カラーページになっていたからのことなのだが。(^^;
このコーナーを見ていると、一口に自作スピーカーといってもかなり多岐 に富んでおり、製作者それぞれのこだわりがスピーカーのルックスに大き く反映していてつくづく感心させられる。おそらく、この特集ページを眺 める人みんながそう思っているのだろうなぁ。。。


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6月17日

アイアン・ジャイアント

昨年から一部ファンの間で話題になっていたアメリカのアニメ「アイアン・ジャイアント」。 これまでのアメリカのアニメといえばディズニー・アニメに代表されるミュージカル仕立て のおとぎ話というのが多かった。なにもミュージカル仕立てのアニメが悪いというわけで はなく「アラジン」なんて作品は気に入ってたりもするのだが、多くのアメリカ・アニメは 子供向けを意識したのか、取り上げる題材は異なるにせよなにか共通している要素が多く、 作品の持つ世界の広がりが画一的に感じられような気がする。
ワーナー・マイカル製作のこの「アイアン・ジャイアント」は日本に紹介されるアメリカ・ アニメそしては珍しくロボット・アニメであり、ミュージカル仕立てにもなっていない。 この春にワーナー・マイカル系の映画館では公開されたようだが、あいにくわたしの住んで いる地域にはこの系列の映画館がなかったため、パッケージ・メディアが市場に出回るまで 待つことになった。
しかし、先週末ビデオのレンタルが始まったものの貸し出し中のプレートが掛かっており しばらく観ることはできなかったのだが、昨日やっと借りることができた。DVDソフト の発売はまだ1ヶ月先のことなので、とりあえずは画質が悪いのは承知の上でレンタル・ ビデオでの鑑賞。DVDは劇場公開時と同じシネマ・スコープでの収録のようだが、ビデ オの場合は4:3スクリーンがフル活用できるスタンダード・サイズにトリミングされての 収録。昨年発売のディズニー・アニメ「バグズ・ライフ」のDVDでは、シネスコとスタ ンダードの両サイズの映像をともに収録しているが、ホームシアターでの鑑賞の場合どち らがいいのか難しい問題。
内容のほうだが、この「アイアン・ジャイアント」はストーリー展開先行型ともいえるよ うなドタバタは控え、少年とロボットの心の交流に焦点を当てているところにこれまでの 子供向けアニメからは得られにくかった何かがあるように思える。そうはいってもシリア ス路線というわけではなく、笑ってしまうようなギャグっぽいところも随所にちりばめら れていて楽しませてくれる。また、映像にはCG技術もふんだんに使用されているとは思 うが、手描きアニメの持っている暖かい風合いもあり、作品全体を非常に親しみやすいも のにしていると思う。


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6月11日

長岡鉄男氏を偲んで

その日は陽が少し傾きはじめた頃から胸騒ぎが収まらなかった。その数日前AE86さん のサイトの掲示板に書き込まれたオーディオ評論家 長岡鉄男氏の入院の知らせ を読みここ数日は氏の容態を案じていたものの、そのうちまた退院の知らせが書 き込まれるものと信じて疑わなかった。
なぜか、その日5月29日はいいようもない胸騒ぎに襲われ、なんとかして現在の 状況が知りたいという衝動に駆られた。しかし掲示板に書き込んだところで騒ぎを大き くするばかり。思い悩んだ挙句、不躾は承知の上で長岡氏の編集担当の炭山氏に メールを送った。その日の午後8時頃だった。
そして午後11時過ぎ、返事のメールを受信する。メールの内容は時候の挨拶と オフ会の話題が続いた。わたしの不安は杞憂に終わるものと安堵 したのも束の間、最後の4行で告げられていたのは長岡氏の訃報だった。そのメ ールを締めくくろうとする矢先の突然の知らせだったようだ。急いで掲示板に アクセスしてみるとすでに訃報が書き込まれていた。亡くなられたのはわたしが 強い胸騒ぎを感じたちょうどその頃だったようだ。その翌日には告別式の日程も 掲示され、誤報であって欲しいとのわずかな希望は確実に突き崩されていった。

思えば20年近く前、今では廃刊になってしまった週刊FMに掲載されていたス ピーカー工作記事が長岡氏との初めての出会いだった。それから数年後の春、ダ ブルバスレフ・スピーカーDB-8の製作を皮きりにスピーカー工作を始めたわた しは、その夏には今でも友人が使用しているバックロード・ホーンのD-102、 秋にはその後11年間わがやのリスニングルームに君臨することになるD‐101 「スワン」など氏の設計のスピーカーを組立てる。
そしてその年の暮れにはなぜか地方では滅多にお目に掛かれないはずのLo-Dの パワーアンプ HMA-9500の程度の良い中古品が手に入った。スワンとHMA -9500、自作アッテネーター・ボックスの組み合わせは当時メーカー製の大型 スピーカーで大音量再生を楽しんでいた友人たちを驚かせた。
その後、長岡氏の著書にあるスピーカー設計のための実用式を用いてバックロード ホーンを中心に数十機種のオリジナル・スピーカーを設計・製作してきたが、その 傍らにはいつも氏のスピーカー関連の著書があった。雑誌で発表される氏の新作ス ピーカーの製作記事にもくまなく目を走らせた。
数年前には長岡氏のリスニングルーム「方舟」にお邪魔したこともあり、昨年の秋 にはこのサイトを開いていることをきっかけに「オーディオ諸国漫遊記」の取材で 長岡氏が我が家に訪れたこともあった。そのように実際に氏と対面することもあっ たわけだが、それでもわたしにとっての長岡鉄男はページの中でオーディオ評論を し、コラムを書き自作スピーカーを発表する「もの書き 長岡鉄男」だった。
その突然の訃報に直面してやりきれない思いを整理するために告別式にも足を運んだ。 花に囲まれた遺影を見ても、式場からの出棺前にその永眠する姿を目の当たりにし てもどうしても最後の実感がつかめなかった。
そして長岡氏が連載を持っていたもので氏の死を告げる最初の刊行物がダイナミック テストを掲載していたFMファンとなった。長い間親しんできたいつもと変わら ない語り口での巻頭言と製品テスト。しかし、いつものソフト評のページには長岡 氏の遺影とオーディオ評論家 藤岡誠氏による追悼文。製品テストの欄外には編集部 からの連載終了の告知。そして巻頭言の上には最終回の文字。もう来週号からはこの ページはないのだ。。。
来週以降発売される種々の雑誌にも長岡氏の追悼記事が掲載されるだろうが、その たびに「もの書き 長岡鉄男」がいなくなってしまったことを確実に認識していくこ とになるのだろう。しかし、オーディオ関連のみならず氏がこれまでにそのファンと ともに培ってきたものの見方や考え方は決して消えてしまうことはないし、思い出と して封印されてしまうこともないと信じたい。

長岡先生、長い間本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。


長岡氏の訃報を知った翌朝、ふと白みかけた空を仰ぐと東の空にとても明るく大き な流れ星(いや、あれは炎上する隕石といったほうが妥当か)が数秒間明るく筋を引 いて、そして消えた。もしかするとあれは長岡氏の星だったのかもしれないと勝手に 思っている。


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