なんだか 日記   2001年9月
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ど−でもい−よ−なことですが ・ ・ ・


インデックス
9月 1日 映画「タイタニック」
9月 3日 F-81復活
9月12日 画面の中の恐怖
9月29日 映画「初恋のきた道」

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9月29日

映画「初恋のきた道」
となり町の映画館でちょっとした映画祭をやっている。昨年できたての 新しい映画館で、スクリーンの数は9面もある。映画祭での上映作品は 「カサブランカ」「アラビアのロレンス」「いつも二人で」といった 往年の名作から、「グラン・ブルー」「愛のコリーダ(2000)」「鬼龍 院花子の生涯」などちょっと渋めの有名作品、最近の話題作「リトルダ ンサー」「セントラルステーション」など3週に渡って週末に全部で18作 品をそれぞれ3〜4回ずつ時間帯をばらつかせて上映するというもの。
最近DVDが発売されたばかりのかの「アラビアのロレンス」もDVDほど シャープな画質ではないといっても幅が15mもあろうかというシネスコ 画面で観るとまさに圧巻。映画館の映写設備も新しくフィルムも以前 ステレオ音声化される際に修復を受けているようで、30年以上昔の作品 とは思えないような画質で4時間近い大作を楽しむことができる。ほん とにありがたいことだ。
この映画祭では比較的新しい作品も上映されているが、その中で中国の チャン・イーモウ監督作品「初恋のきた道」が特に印象に残った。 話の内容は、40年前の中国の山村での父母のなれ初めを父の訃報を知り 帰郷した息子が回想するといったもの。ストーリー的にはまったくの 純愛作品といって差し支えないだろう。悲しみに暮れる母親や葬儀の 行列など現在のシーンをモノクロで、若き日の両親が出会った40年前 の回想シーンをカラーで撮影してある。
この作品の最大の魅力は、登場人物の感情の動きがその場の空気まで映し 込んでいると思わせるような映像によってものの見事に表現されている ことだろう。それは人物のアップや人物が背景にまぎれてしまうほどの 超ロング・ショットなどひとつずつ取り上げると大したことではないのか もしれないが、それを時間の流れとともに極めて巧みに織り上げていく 手法に引き込まれずにはいられない。演技している人物を撮影している といよりも映像そのものが感情を持っているかのように思えるのは、も しかすると映画を見ている者の心境を反映するまでに映像そのものが極 めて深い力を得ているためなのかもしれない。
この作品の中で現代の先進社会のにおいを感じさせるものに、冒頭で帰 郷する息子が乗っていた四輪駆動車と、なぜか両親が暮らしていた家の 壁に貼ってある映画「タイタニック」の2枚のポスターがある。こんな山 村に住んでいても観たことがあるというほど「タイタニック」はここ最 近で最も世界中の人々を魅了した作品であるということなのかもしれな いが、それでもなぜ監督はこのポスターを自分の作品の映像の中に映し こんだのだろうか。わたしが思うには、「タイタニック」で感じたえも いわれぬ魅力をこの「初恋のきた道」でも醸し出したいというチャン・ イーモウ監督の意思の現れなのではないか。そしてその思いは1本の映画 として見事に結実していると思うのだ。
そして、山村の中で生活する人々からはその地で日常使われている言葉 があたり前のように聞こえてくる。これまで中国語音声の映画というと マンガチックで中途半端にアメリカナイズされたようなアクション映画 や、どこかしら政治思想を背負っているような威圧感のあるようなもの など、彼らの母国語であるはずの中国語がぎこちなく不自然に思えるも のが少なくはなかったと思うのだが、この作品ではそいうった作為的な ものは感じられず、むしろ耳に入ってくるこの土地の言葉のままで内容 を理解できないことが残念にすら思えてくる。それだけ、この地の陽射 しや空気感といった風土を透明度の高いままで映しとっているというこ となのだろう。上映時間は89分と短めだが、実際には起こり得ないSFや 過激なアクションといった特殊な環境設定へのインターフェースを一切通 すことなくダイレクトに感覚を刺激するこの作品から得られる情報量は 極めて大きいと感じる。「珠玉の名作」なんて言葉はもはや使い古され ありがたみもなくなってきているかもしれないが、あえてこの言葉で 賞賛したい珠玉の名作だと思う。
この作品の日本での初公開は昨年のことですでにSPEレーベルからDVDソ フトも発売されているので、わたしも早速入手してみた。この作品の 日本語のタイトルは「初恋のきた道」だが、ライナーノートと見ると 英語のタイトルは「The Road Home」、中国語の原題は「我的父親母親」 となっている。三者三様だが、どのイメージがぴったりくるだろうか。 ソフトを再生してみると、映画館のスクリーンに比べて自宅の100イン チ・スクリーンが物理的に小さいというのは仕方のないことなのだが、 当たり前のように多用されているはるか遠方から人物を捉える超ロン グ・ショットや風になびく草木など480X720ドットの現行DVDでは情報 量が足りないようにも思える。しかし、中国の山村で撮影した作品がDVD ソフトでこのレベルの画質で観られるというのも数年前なら難しいこと だったのではないだろうか。
もしかなうのであれば画質と音質の良い映画館で観るのがベストの作品 だとは思うが、それが無理ならできるだけ大きな画面でDVDソフトをじっ くり観て欲しい作品だと思う。


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9月12日

画面の中の恐怖
午後10時過ぎ、なにげなくテレビのスイッチを入れるとニュースなどで よく見慣れたニューヨークの摩天楼が映し出されていた。しかし、画面 中央の2本の白っぽいビルの途中から白煙が上がっている。いったいこれ はどうしたことだろうと思っているところに、ニュースキャスターの解 説と旅客機がこのビルに激突した時の映像が流された。まるでハリウッ ドのアクション映画を見るようなこの映像に現実世界のマンハッタンで 何事が起きたのか、しばし呆然としてテレビ画面を眺めていた。
続けてニュースを見ていて分かったことは、離陸直後に何者かに乗っ 取られた2機の旅客機が乗客を乗せたまま高さ400mを超える世界貿易セ ンターの2本の超高層ビルに相次いで激突したとのことだった。二つ目 のビルへの激突の瞬間はこのニュースで生中継されたとも言っていた が、わたしがテレビのスイッチを入れたのはその後だったわけだ。これ は大変なことになったと思いつつも一旦はテレビを離れ、もう一度画面 をのぞいた時には、マンハッタン全体がもうもうとした白い煙に呑みこ まれている様子が映し出されている。まさかとは思ったが、後で激突さ れたほうのビルが崩れ去ったということらしい。煙が充満してビル周辺 の様子はまったく見ることができなかった。そしてそれからまもなく最 初に激突されたビルも跡形もなく崩壊していった。アメリカ経済の繁栄 の象徴と言われていた貿易センタービルが突然の事件によってあっとい う間に消えてしまった。さらにアメリカ最大の軍事拠点である国防総省 にも乗っ取られた旅客機が激突したということも事件後の映像とともに 報じられている。
この事件の犯人は国際的なテロ組織であろうとのこと。明確な理由をあ らかじめ提示することもなく無差別に人の命を奪うことで自らの存在を 主張するというやり口をこれまでに何度となく行ってきている。わたし たちの普段の日常生活においても不幸と言うのは前触れもなく突然襲っ てくることが多いが、今回のテロ事件はあまりにも規模が大きく旅客機 の乗客の方のほかにも犠牲になった人命はかなりの数になるだろう。
テレビに映し出されていたのはビルに衝突する旅客機とビルの崩壊。そ れは映画では見慣れた光景なのかもしれないが、映画と違うのは事前に テロを食い止めるために戦うヒーローなんていなかったこと。実際にこ の大惨事が起こり多くの命が奪われてしまったこと。そしてこの映像を 見ていようが見ていまいが誰もの身に降りかかってくる可能性のある見え ない恐怖が確実に存在していること。
「繰り返します、これは現実の映像です。」 ニュースキャスターの悲痛 な声がテレビから流れている。


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9月3日

F-81復活
F-81を復活させた。といってもF-81といっても何のことだかすぐに分かる 人はまずいないだろう。F-81というのは長岡鉄男氏設計でフォステクスの 8cmフルレンジFE83を片チャンネルに1発使用する音響迷路方式のスピー カーのことだ。 自作スピーカー1作目のDB-8から、D-102、D-101「スワン」に続く4作目と してわたしが実際にこのスピーカーを作ったのはかれこれ14年も前のこと になり、ミニコンポと組合わせて使用しようと思っていたのだが製作後少 しの間鳴らしただけでユニットを取り外しキャビネットは郷里の押入れの 肥やしっとして14年もの長きに渡り日の目を見ずに入たことになる。
このF-81には「スリムエイト」とニックネームが付けられており、高さ は900mm奥行きは400mmあるのだが幅は96mmしかなく、家具と家具のちょっ とした隙間に置くことができるサイズになっている。このたびこのF-81と これまたほとんど使っていなかった20年ほど前のカセットデッキとアンプ とFM/AMチューナーが一体になっているカセットレシーバー(といっても カセットデッキの部分は正常に機能しない)となんと15年以上も前のハイ ファイビデオを19インチのモノラル音声テレビと組合わせてちょっとした AVシステムを仕立て上げてみた。
F-81の内部は全長3.6mの管が90cmごとに3回折れ曲がっているだけのシン プルな構造で、折り曲げ回数が多いためか共鳴管としての動作はな く200Hzあたりから低音は減衰していきそのままではあまり量感豊かな 低音域は望めない。そこで、幅の狭いキャビネットが功を奏して家具の 間の隙間に入れると低音域が盛り上がってくるといった効果が期待でき るとのことだ。ただ、今回はテレビラックの両サイドに置くため隙間に 押し込んだ際の効果は得られないため、カセットレシーバーにある低音 増強のスイッチで対応することにした。これで19インチ画面との組合わ せであればサブ・ウーハーが必要ないくらいの低音感は得られるものだ。
振動板の振幅が気になるところだが、視聴位置両サイドの天井にはFE83を 組み込んだ12cm角の小型リア・スピーカー(これもずっと以前に作りは したものの、まともに使っていなかったもの)を吊り下げてあることもあ り、ほどほどの音量でも19インチテレビと組合わせるには十分な音量感と 広すぎるほどの音場感が得られる。また、クセがなく明瞭で繊細さのある セリフや効果音などFE83の中高音の素性の良さや背圧の少ないキャビネッ ト方式の有利さを十分に再確認できたと思う。F-81は初めての人でも2〜3時 間もあれば簡単に組み立てできてしまうので、気軽にフルレンジと背圧の 少ないキャビネットの魅力を味わうには手頃かもしれない。
使っていなかったものばかりを集めてできたAVシステムとしては合格点。 ただ、ビスタサイズやシネスコサイズの映画では画面が19インチというの はちょっと寂しいので、28インチ程度のワイドテレビとDVDプレーヤーを 組合わせてもう少し大画面・高画質化ができれば、テレビで普通に映画を 楽しむには十分過ぎるほどの効果が期待できるものと思う。


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9月1日

映画「タイタニック」
昨日8月31日と今日9月1日の二夜に分けて、民放のテレビでジェームス・キャ メロン監督作品「タイタニック」が放送された。なんでも、この放送のため に監督自らが特別に編集した日本特別編集版という触れ込みなのだそうだ。 しかし昨日放送された前半を見たところ、途中で何度も入るCMに合わせて微 妙に時間合わせをしているだけといったところのようだ。そんなわけで、こ れまでに何度となく見通したこの作品なので、初の地上波テレビ放送で観る からといって新たな感動が生まれるということはなかった。ま、当然と言え ば当然だが。その代わりというわけでもないだろうが、昨日の前半の終わり と今日の後半の最初に付け加えられていたジェームス・キャメロン自身が編 集したという「後半の予告」と「前半のあらすじ」のダイジェストは、すで にこの映画を観て内容を知っていてもワクワクするようなテンポ感で、これ を観るだけでもさすがはキャメロンといった感じだった。DVDソフトがスク イーズ化されて再発売される折りにはぜひともこのダイジェストも収録して ほしいものだ。
この作品が公開されたのはすでに4年近くも前のことになる。わたしが映画館 に足を運んだのは封切りから2ヶ月ほどたった日のことだったが、建物の二 階にある映画館の入り口から前の通りにまで次回の上映開始を待つ数百人の 観客が長蛇の列になっていて驚いたものだ。映画館に行く前にはテレビで放 送されていたこの作品のメイキング番組もあらかじめ見て撮影のトリックな どの予備知識もあり、かなり期待は膨らんでいた。なんとか映画館の椅子に 座って上映が始まり3時間15分、期待して観た映画がハズレだと分かるとその 落胆も並々ならぬ大きさがあるものだが、この作品では期待の何倍も上回る ような感覚があった。恋愛ストーリーはありふれたものであるし大西洋上で 豪華客船が沈没するという事件も誰もが知っている話だ。それでも何がすご いのかと一言では言えないような魅力にあふれた風合いというものが作品全 体から発せられていたからだろう。
映画館のスクリーンというのは幅が10m以上はあるような非常に大きなもの だが、人物や船を映し出す構図や本物を復元したと言われる室内装飾や実物 大のタイタニックの船体のリアリティなど、まさにこのスクリーン大きさが この作品を観るための最適サイズであることを疑う余地はまったくないと いった印象。このサイズでないと伝わらない感触というのは必ずあるもので、 この作品をホームシアターの100〜150インチくらいのスクリーンやまして やテレビで観たと言っても情報量の欠落した縮小版を観ているのに過ぎない と、後日パッケージソフトが発売されてから何度となく痛感することになる。 また、封切りから1年近く経ちビデオとLDが発売された後になっても映画館 での上映は続いていた。映画産業全盛時代のことを知らないわたしなので、 こういった現象を見るのは初めてのことで、そんなことでも驚かされたも のだ。
公開当初はお金を掛けたからこそこの映画が出来あがったのだとマスコミな どでは頻繁に取り上げられていたように思うが、実際にはこの映画を作るた めにそれだけの製作費が必要だったというだけのことで、それは映画館の大 スクリーンでこの映画を観れば一目瞭然といったところだろう。それにして も、2億ドル(当時の為替レートで約280億円)という史上最高の製作費はそ れだけで一般消費者の興味をひくには十分な金額であることは確かだが。
本質的な良さを持った音楽や絵画などはその特質を端的に言葉で表すこと は難しいものだが、この映画作品もその成功の理由を箇条書きにして取り 上げてみても言葉の表現力の乏しさに虚しくなるだけだろう。良いものは 能書きだけでは語れない、映画「タイタニック」はそういったシンプルな 感覚を地球上の極めて多くの人々に同時期に体感させることのできた貴重 な作品であることに間違いはないだろう。


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