自作スピーカー・ギャラリー


10cm口径フルレンジ編 その12

ひとつ前のページでは、2.5mのホーンを底部で一回折り返しただけのバックロードホーン BH-1026S を紹介したが、構造がシンプルであることと、全帯域の音がほぼ同じ場所から出ている点音源的効果のメリットも加わったため、これまでに製作した、ホーンをキャビネット内で複雑に折り曲げたバックロードとは一味違った、ストレートさと潔さがあり、バックロード特有の瞬発力と力感を備えた聴感上のダイナミックレンジの広いサウンドを得ることができた。
ただ、このBH-1026S、リア・スピーカーとして部屋のコーナーに設置することを想定していたことから、使用ユニット(FE108S)に対してホーンのボリュームを小さくして、低域がブーミーにならないように設計したため、そのままだと、メイン・スピーカーとして使用するには低域の量感が不足する。このタイプでFE108SやFE103En-Sを使った、スペース・ファクターの良い本格メイン・スピーカーを作ってもみたいところだが、もう置く場所もないので、実現には至っていない。

実は、BH-1026Sの音を聴く前に、BH-1026Sと似た構造で、初めからメイン・スピーカーとしての使用を想定して設計し、BH-1026Sと同時に板材のカットを済ませていたバックロードがある。ただし、使用するユニットは本来バスレフ向きのFE107E。なぜFE107Eになったのかというと、たまたま手持ちに2個あったからというだけの理由。
しかし、板材はカットしたものの、かんたんな構造であるためいつでも作れると高をくくっていたら、あらかじめ使い道を決めていなかったことも災いして、その後2年もの間、板材を放っておくことになった。

FE107Eはもともとバスレフ向きなので、小さめのキャビネットでも低音の量感を確保しやすいだろうし、もし低音不足になってもアンプのトーン・コントロールで低域をブーストすれば大丈夫だろう。組み合わせるシステムは、ローコスト・プリメインにDVDプレーヤー、はたまた往年のミニコンポあたりを想定しているため、そこそこの周波数レンジが確保できれば、それで良しとすると決めて、詳細な設計を進めていった。



BH-1027

この機種は、わたしの設計
               

そもそもが「手持ちのユニットを適当なキャビネットで鳴らしてみよう」という程度の気楽なもの(でも、「手抜き」じゃないよ)だったので、あまりコストも掛けたくはない。ということで、「キャビネット2本を、サブロク合板1枚で作る」という制約をあえて設けてみた。スリムで強度もとれるので板厚は12ミリとし、さらなるローコストを狙う。

高さは89センチだが、設置スペースは幅16.4センチ、奥行き16.9センチと、CDケースより一回り大きい程度の省スペース。ホーン長が約1.5mと短く、容積も小さい本機では、低音の再生レンジや量感が不足することを見越して、スピーカー背後の壁の輻射を利用するために、ホーン開口はキャビネットの背面に設けた。
壁とホーン開口の距離は、本機と普通のオーディオ・ラックやテレビ台の前面を合わせて置いた状態の、30センチ程度あれば十分だろう。

上の左の画像は、完成後、塗装した状態。FE107Eのグレードからすると、キャビネットを白木のままにしておくより、やや響きの乗る塗料で表面仕上げをしたほうが、総合的に良く聴こえると判断して、今回は水性のアクリル塗料を使って数回重ね塗りをしてみた。ルックスの印象が大きく変化するのはもちろんのこと、音のザラつきも少しばかり抑えられたように思う。

また、外観は、あまりバックロードっぽくなく、というか、自作スピーカーっぽくなく見えればと思い、寸胴の柱ではなく、ユニットを取り付けるバッフルを2枚重ねの24ミリ厚とし、それ以外の部分を少し凹ませて、ルックス的に特徴を持たせてみた。底板も24ミリ厚として接地面の強度を確保。
右の画像が内部構造だが、板の厚みによってホーンを段階的に広げていくことと、キャビネット全体の適度な補強、板取りの効率などを加味しながら、このような構造に落ち着いた。



W = 164  H = 890  D = 181  (mm)

設計図と板取図は、こちらで見られます。【無料です】

          

    組立の様子


FE107EのQoが0.38とバックロード用としては
高めであるため、空気室にやや多めに吸音材
を貼り付ける。底板にも吸音材を貼っておく。

ホーンが短く開口からの中高音の漏れが多い
ため、開口部には厚めの吸音材を取り付ける。



ユニット取付部の下のスペースは、正面から側板の積層模様
が丸見えになるため、塗装を行う予定ではあるが、念のために
ベニヤ板(4ミリ厚)を貼り付けた。スロート部の補強にもなる。

背面はこんな感じ。適度に補強したこともあって、
平面ではなく凹凸があるが、裏板の共振を分散させ、
キャビネットの鳴きクセを軽減させる効果も期待
できる。




測定と試聴

本機BH-1027はホーン長が約1.5mと短めであるが、一回折返しというシンプルな構造のため、仮に、空気室まで含めて約1.8mの共鳴管(閉管)として見た場合には、47Hzで基本共鳴が起こることになり、その1/2オクターブ下の33Hzあたりまで再生できる可能性も考えられなくはない。
ただ、BH-1026Sを測定・試聴してみた限りでは、ホーンの広がり率があまり大きくないBH-1026Sであっても、共鳴管としては広がり率が大きすぎるためか、共鳴管としての動作はほとんどないようで、共鳴による低域のピークはまったく現れず、サウンドにもバックロードらしさが強く反映されている。

BH-1027では、そのBH-1026Sよりもさらにホーンの広がり率が大きいため、共鳴管として動作することでローエンドを伸ばすことは期待できそうにもない。
また、以前作ったD−55を縮小したようなホーン長1.2m程度のCW型バックロードでは、サイズ相応の低音しか再生できなかったこともあり、本機でも中音域中心の再生レンジが得られれば良いだろうと、低音域にはほとんど期待はしていなかったのだが、ホーン開口と壁の距離を30センチ程度離して設置し、ユニットの軸上2mの距離で測定したのが、下の画像。



( グラフの見方は こちらのページ

FE107Eは、センター・キャップがボイスコイル直結のメカニカル2ウェイになっているため、ハイエンド(グラフの右端は16kHz)のレベルが十分高く、普通のCDの音楽再生ではツイーターの追加の必要性はまずない。
低域はどうかというと、グラフの左端は25Hz、その右が40Hzだが、この周波数特性を見ると、やや右肩上がりの傾向はあるものの、ホーン長が2.5m以上ある16センチ・バックロード並みにローエンドが伸びていることになる。想定外のワイドレンジ。その理由は・・・分からない。前述のように、共鳴管として動作しているのかもしれないが、共鳴のピークは見当たらないし、サウンドには間違いなくバックロードの特徴が現れており、一聴して共鳴管スピーカーとの違いが分かる。



測定する前にも、様々なソフトを再生して試聴してみたが、クラシック音楽のパイプオルガン、ポップス音楽のシンセサイザーによる30Hz付近のベース音、アクション映画の爆音・轟音など、ちゃんと鼓膜を圧迫するような音波を再生していることが分かる。

また、主に中高音が出ているユニット本体と、低音が出ているホーン開口が大体同じ位置にあることによる点音源的なメリットもあるためか、人為的に位相を操作して収録しているソフトでは、部屋中にアッと驚くほどの音場が広がり、音にやせた感じもなく厚みと表情の豊かさもあって、とても、このユニット、このサイズのキャビネットから出てくる音だとは思えない。
テレビの両サイドに置く場合、少なくとも40インチ程度の画面なら、まったく余裕で対抗できそうだ。(2年間板材を放置していたことで、適度に水分が抜けて、鳴らし初めから割りと調子良く鳴ってくれたのは、ケガの功名か?)

ただ、FE107Eの元々持っている音色はかえって表に出やすくなるようで、音がやや人工的だとか、中高域に多少チリチリした感じがあるとか、ソフト・フォーカスでピシッとした感じが出にくいといったところもある。
とはいえ、ネットワーク素子一切なしのフルレンジ1発のバックロードのメリットで、試聴に使った数機種のアンプの差が、露骨に音に現れてくるのも確か。往年の4万円台(重量10kg)と8万円(左右独立トランスで重量21kg)のプリメイン・アンプの比較では、スピーカーまで2倍の価格になったように、質感や力感、透明感や分解能などが大きく向上するのが分かる。



BH-1027にピンクノイズを入力した上記の測定結果が、暗騒音の超低域ノイズを拾っているのではないかとも思い、30Hz以下が分かりやすい形で入っている「カウボーイ・ジャンキース/トリニティ・セッション」の冒頭から1分あたりの、床を踏み鳴らす部分の周波数特性を測定してみた。

CD「COWBOY JUNKIES」    BH-1027 で再生               .

左はCDプレーヤーの出力を直接スペアナに入力したもの。右が同じ部分をBH-1027で再生し、マイクで測定したもの。BH-1027の再生では、中音域に対して超低域が10dB程度下がってはいるが、25Hz付近も確かに再生しており、耳にもしっかりと音圧が感じられる。少なくとも、普通の音楽再生ではサブ・ウーハーの追加の必要性は感じないだろう。



FE107Eは、ブラウン管テレビのすぐ近くにスピーカーを置いても、画面の色ずれが起こらないようにするための防磁型ユニットだったが、ここ数年で急激にテレビの主役が、色ずれの起きない液晶やプラズマに置き換えられたため、FE107Eを含めてフォステクスの防磁型ユニットは生産終了となった。

その代わりに、それまでバックロード向きとされていたFFシリーズのフルレンジが、細部に改良を施されバスレフ向きユニットとしてリニューアルしたので、今ならその中の10センチ口径であるFF105WKを使えば、FE107Eで弱点と感じられた部分も解消されて、落ち着いた音楽鑑賞にも向くサウンドが得られるものと思う。振動質量はFE107Eに比べ3割ほど大きくなるものの、マグネット重量はFE103Enと比べても1.76倍と大型化され、Qoは0.41と低域の量感も得られやすいようだ。

実は、このBH-1027の塗装は当初クリーム色を予定して、ワゴン・セールのスプレー塗料を数本買い込んでいたのだが、カット済みの板材を放置していた2年の間に前述の新FFシリーズが発表されたため、将来ユニットをFF105WKに交換することを考慮して、画像のようにライト・グレーに変更したという経緯がある。




組立図 板取図

構造がシンプルで板の使用量も少なく、設置も気軽にできるということもあるので、夏休みの子供の自由研究のネタあたりに、ローコストで実用的なスピーカー工作なんてのも良いかも。 (でも、休み明けには、学校まで自動車で運んでやることが必要か?)




組立図と板取図の大きいサイズの画像は、こちら で見られます。 【この機種は無料です】




2012/7/16 up




16センチ版 BH-1622

16センチ・フルレンジを使用する、BH-1027の拡大版。
ユニットにはバックロード用のFE168EΣ、FE166Enのほかに、ユニットにあまり大きな負荷が掛からないキャビネットである
ことから、バスレフ向きとされているが、磁気回路が大きく、能率も十分に高いFF165WKも使用可能。 この場合は、適当な
ドーム・ツイーターを追加してハイ・エンドを伸ばす必要も出てくるだろう。

基本はBH-1027と同じだが、大型化に伴い、板厚を15ミリにし、内部の補強材も増やして、キャビネット全体の強度を確保。
サイズは、幅25センチ、高さ1メートル、奥行き27センチで、フルレンジの中心は86.5センチとなり、置きやすく使いやすい。

15ミリ厚のサブロク合板1枚で、キャビネット1台が製作できる ので、例えば簡易なホームシアター用などに、1台ずつ作り
増ししていく場合にも便利。

ホーン長はBH-1027よりもやや長い1.6メートル。ハイ・コスト・パフォーマンスを求める場合には、ユニットはFE166Enを1発
のみとし、キャビネット背後の壁との位置関係で、低音の量感を調整すると良いだろう。

ちゃんとしたオーディオ・システムと組み合わせても能力を発揮するだろうし、ミニ・コンポのスピーカーを 置き換える場合に
本機を使用すれば、バックロードであることに加え、能率が高いことで、アンプ部の負担が数分の一に軽くなることもあって、
小さなブックシェルフ・スピーカーからは出てこない、開放的でくったくなくハイスピードに散乱するサウンドを、気軽に手に
入れられると思う。



フルレンジにはFE166Enを取り付けて、
キャビネットの背後の壁との距離で
低音の量感を調節すると最もハイCP

背面はBH-1027と同様に凹凸があり、ホーン開口はほぼ
ユニットの真裏の位置。キャビネット内部の補強材を
増やして、キャビネット全体の強度を上げている。



塗装を施し、Fostex純正のグリルネットを
取り付けるとこんな感じに。

磁気回路が大きく能率も十分に高いFF165WKと、
ドーム・ツイーターで2ウェイ化したイメージ。




W = 250  H = 1000  D = 270  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。





BH-1622(左) と BH-1027(右) の大きさの比較

2013/4/7 up




16センチ版 センター用バックロード BH-1627C

上記のBH-1622の項で、ホームシアターでの使用について少し触れたので、その場合にバランスの取れる16センチ版のセンター用バックロードを考えてみた。
この機種も、15ミリ厚のサブロク合板1枚で、1台のキャビネットが製作できる

キャビネットの外形、ホーンの折り曲げには違いがあるが、その他の条件はできるだけBH-1622とそろえ、サウンドの傾向に違和感が生じないようにしてある。
使用するユニットもBH−1622と同じ、FE168EΣ、FE166En、FF165WKなど。

キャビネットの大きさは、幅1メートル、高さ23センチ、奥行き28.5センチと、全体のボリュームはBH-1622と同等。ホーン長も、ほぼ同じに合わせることで、
ユニットから直接聴こえる中高域だけでなく、低域も含めた全帯域で、左右フロント・スピーカーとセンター・スピーカーの位相のずれが、起こりにくくなるように
している。

BH-1622と組み合わせた場合には、フルレンジ・スピーカーであることと、リスニング・ポジションから見て、中高域と低域が同じ場所から出ている点音源効果に
加え、フロント3本のスピーカーの位相がずれないことによって、音場の自然な広がりや音像の移動感が、より引き出しやすくなるはずだ。



BH-1622と組み合わせてホームシアターで使用する場合に、うまくバランスのとれるセンター用バックロード。ホーン長はBH-1622と同等の約1.6メートル。
BH-1622同様に、ホーン開口はキャビネット背面のユニットの真裏にあり、サウンドのイメージが、点音源志向のBH-1622とマッチするようにした。背後の壁による低音増強効果も、積極的に利用する。



内部構造は左右対称。空気室から左右にスロートが伸び、ホーンは3回折り返している。

スロート部が音道の高さが一定となるCW構造となっていない理由には、CW構造だと二手に分かれている
スロート部が、それぞれ狭いスリット状になってしまい、それが元で音が歪っぽくなることを防ぐことに加えて、
ホーンの構造材でフロントバッフルを補強することがある。




W = 1000  H = 230  D = 285  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。









六畳間の短辺の壁に80インチ・スクリーンとBH-1622、BH-1627Cを設置したホームシアターのイメージ。この図では、センタースピーカーのBH-1627Cは、サブ・ウーハーの上に設置し、角材などをはさんで前部を持ち上げて、ユニットの中心がリスナーの耳に向くようにセッティングしている。図のサブ・ウーハーは、こちらのプラン とも共通のASW−2004。

リア・スピーカーには、10センチ・フルレンジあたりを組み込んだ小型バスレフ・スピーカーでも、十分にサラウンド効果が得られるが、設置スペースを確保できれば、BH-1622をもう1ペア製作して、リア・スピーカーに充てると、リアのサウンドもしっかりし、音場の広がり感や音像の移動感がスムーズになる。将来、本格的なメイン・スピーカーを導入した際は、リアを4本のBH-1622で再生することで、全体のサウンドがより豊かになるだろう。


2013/4/30 up


「16cm口径フルレンジ編 その1」
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