自作スピーカー・ギャラリー


16cm口径フルレンジ編 その1

ここでは「共鳴管スピーカー」を2機種紹介しよう。
直径15〜20cmで長さ3〜4mくらいの筒の片方の端をふさぎ、その閉じられた
部分にスピーカー・ユニットを取り付けたタイプが下に紹介する2機種の共鳴管スピ
ーカーである。楽器でいうと「クラリネット」「オーボエ」の構造を利用している。
いわゆる「ラッパ」の構造を利用した「バックロード・ホーン」との最大の違いは、
管の入り口も出口も広いまま、ほとんど断面積が変わらないこと。
バックロード・ホーンはホーン入り口のスロート部の断面積をユニットの振動板面積
 より小さく設定し、プレッシャーをかけている。そうしないとホーンとして動作しない。
このため共鳴管スピーカーは同じユニットを使用したバックロード・ホーンに比べて
伸びやかで厚みのある音になる傾向がある。
しかし、長大な共鳴管が勝手に共鳴することを十分に制御できないような非力なユニッ
トでは、最悪「土管の中で鳴っているような音」になってしまいうまくいかない。
しかし、マグネットが強力でハイスピードなフルレンジ・ユニットを使用した場合の、
リミッターを取り去ったようにつきぬけるサウンドには、まずほかのタイプのスピー
カーでは味わえない爽快感がある。


F−2400

この機種は、わたしの設計


これは、オーディオ評論家 長岡鉄男氏のホーム・シアター「方舟」(天井高3.6m)
で活躍している共鳴管スピーカー「ネッシー」(20cmフルレンジ使用 高さ2.9m)
を、一般家庭(天井高2.4m)でも使いやすくするために16cmフルレンジを使
用し、高さを235cmに押さえ前面開口としたもの。共鳴管の長さは3mになる。
製作は長岡氏設計の16cm版「ネッシーJr.」の製作記事より半年ほど前。
このスピーカーを設計・製作したときの最大の問題点は16cmフルレンジ・ユニット。
十分な分解能とスピード感を兼ね備えたユニットは当時まだ存在していなかった。
結局、当時売られていたフォステクス FE166Σ に直径120mm厚さ20mmの
キャンセリング・マグネットを接着し磁束密度をアップさせ使用することにした。
フォステクスから史上最強の16cmフルレンジ 6N−FE168SS が発売された
のはその7年も後のこと。
( 写真のスーパー・ツイーターは フォステクス FT90H )
このスピーカーを鳴らすためにユーザーが購入したアンプは、その年ベスト・バイ
に輝いた\79,800のプリメイン・アンプ。このアンプは見事に期待を裏切ってくれた。
CDプレーヤーはそのアンプより少しだけ高価な NEC CD−10
しかし、音質向上のためとはいえそうはコストばかり掛けられない。そうしている
うちにYAMAHA B−4(1978年製 A級30WとAB級120Wの切り替えが可能で
当時\138,000)というアンプの中古品を購入。東京光音の固定抵抗切り替え式
アッテネーター
でコントローラーを製作して組み合わせた。その両方で出費は
10万円程度。CDプレーヤーはそのまま。アンプには音質向上のための多少の
対策を行った。そこまでやっての再試聴。
この時の音の変化はまさに「耳から鱗(うろこ)が取れる」という言葉がぴったり!
今までに購入していたソフトの中身がすべて変わってしまった。A級30Wでも十
分なエネルギーと分解能を持ち広い音場を再現できる。
どうやらCD出現前夜のアナログ・ディスク絶頂期に設計されたアンプには魔物が
棲んでいるらしい。ただこのアンプはMOS−FETを出力段に使用したタイプで
はないので、多少あっさりめ音のだったが、価格からすれば信じられないほど
の超ハイCP機である。 
「”バックロード・ホーン”や”共鳴管スピーカー”はアンプが鳴っている」
考えることの大切さをいまさらのように強く感じた出来事だった。


    本体の大きさ  幅 240 X 高さ 2,350 X 奥行き 276 (mm)





P−1602S

この機種は、わたしの設計


上に紹介した機種は3.2mの管を1回折り曲げて開口を天井に持ってきている
が、設置の安定性に多少不安が残るし、見た目の圧迫感もかなりなものとなる。
共鳴管を十分に動作させるには折り返しの回数は少ないほうがいいのだが、あえ
て折り曲げる回数を増やして一般的なバックロード・ホーンのようにまとめたもの。
原型は長岡 鉄男氏設計のF-62 「ブルースカイ」。この機種の管の幅を10%
増やし、バッフル板、側板、天板、裏板を15mm合板2枚重ねとして強化してみた。
高さはちょうど1m。共鳴管としての長さは2.6mになる。
製作当初のユニットは左の写真のように テクニクス EAS-16F20 。 これに
外形100mm厚さ15mmのキャンセリングマグネットを取付けて防磁と駆動力強化を
狙った。現在 はさらに強力なフォステクス 6N-FE168SS に交換し、表面仕上
げも行っている。(下の写真) キャンセリングマグネットによる防磁仕様にまではし
ていないが、どのくらいの大きさのキャンセリングマグネットを使えばFE168SS
の磁気漏れをキャンセルできるのか見当も付かない。
音は共鳴管スピーカーの特徴が出た、くったくがなくハイスピードで散乱するサウ
ンド。おそろしく細かい音を非常に良く再生する。通常のバックロードホーン同様、
開口が床に近いためか低音の押し出しが良いが、そのぶん開口から届く余分な
中高音の漏れも多少多いかも知れない。
同じ6N-FE168SSで設計したバックロード・ホーンの持つ分析的ともいえる分
解能からは多少遠のく気もするが、中音の厚み、微少信号、伸びやかさなど音楽
を含めた「音」を楽しく聴くための要素が非常に多く備わっているといえるだろう。


    本体の大きさ  幅 280 X 高さ 1,000 X 奥行き 400 (mm)

          設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。




原型になった ブルースカイ の名にふさわしく
ライトブルー系のツートンカラーで塗装済み 。
 コーナーもR加工を施しており、同じキャビネッ
トでも左上の写真とは大きく印象が異なる 。
ユニットは フォステクス 6N-FE168SS


「16cm口径フルレンジ編 その2」
表紙にもどる