自作スピーカー・ギャラリー


16cm口径フルレンジ編 その2

16cm口径フルレンジは、10cmフルレンジよりエネルギーがあり、 かつ20cmフルレンジを鳴らし込めるほどの広い部屋も労力も
必要なくバランスも良い。
だが上に述べた特徴が裏目に出ると10cmフルレンジほど俊敏で はないし、20cmフルレンジのようなエネルギー感もないということ
になる。実際、フォステクス 6N−FE168SS が出るまではそう 思っていた。この時点で、質・量ともに十分マニアを唸らせてくれる
16cmフルレンジは、この機種だけだろう。
このユニット以前は FE168Σ にキャンセリング・マグネットを接 着することで磁束密度を上げて使用していた。
このページでは製作当初、その手法を用いてパワーアップさせたユ ニットを使用していた「バックロード・ホーン」を2機種紹介する。


BH−1605S

この機種は、わたしの設計


現在わたしがオーディオ用のメイン・スピーカーとして使用している機種。 このスピーカーを作るきっかけとなったのは、1996年秋、「FMfan」誌の 長岡鉄男氏のスピーカー工作特集に登場した怪鳥「モア」(D−150)だ。
「モア」は、このギャラリーの「10cm口径フルレンジ編 その1」で紹介した 「スーパースワン」を拡大したもので、史上最強の20cm口径フルレンジ 6N−FE208SS を使用し、全高1.6m、ホーンロードは3.9mにおよ ぶお化けスピーカー。「スーパースワン」と並べての写真も掲載。音を聴くまでもなく、 その写真を見ただけで十分ショッキングだった。

わたしはこの時すでに16cmフルレンジ版のスワンタイプのバックロード ホーンは設計・製作済みだったが、それでも「モア」の出現は衝撃的。 そもそも「モア」は、オーディオフェアでのセミナー用に設計されたもので、 ホーム・ユース用には明らかに大きすぎる。(それでも製作しているマニア は少なからずいるらしいのだが ・ ・ ・ )その上、後面開口タイプのスピー カーなのでとてつもなく広いリスニング・ルームが必要となる。

そこで、常識人(?)であるわたしは、かなりスケール・ダウンにはなるのだ がそれまでに製作したバックロードホーンのなかでこのギャラリーの 「10cm口径フルレンジ編 その2」に紹介したタイプの16cmフルレンジ版を設計・ 製作することにした。

スーパー・ツイーター中心までの高さは1.2mに設定。ホーン全長は3m。 21mm厚のサブロク合板5枚をフルに使い切って2本のスピーカーを作る。 このタイプのバックロードホーンの内部は幅一定でホーンが折れ曲がってい るのではなく、スワンタイプのように途中で分割され、ホーンが一本道になっ ているのはネック付近と開口直前の部分のみである。

当時ユニットは FE168Σ しかなかったのでやむなくキャンセリング・マグ ネットで強化して使用した。現在は 6N−FE168SS に交換してある。 それまで使用していた一般的な形状をしたバックロード・ホーンに比べ、音 場感や微少信号への対応が良くなり、音場の高さもよく出るようになった。

反省点もある。徹底的に強化して設計したキャビネットではあるが、鳴らし込んでいくうちに 感じたことは、16cmフルレンジに21mm合板2枚重ね42mm厚のキ ャビネットは厚すぎたのではないかということだ。
キャビネットはどんなに強化して作っても必ず振動し、その振動エネルギー を蓄え時間遅れで放出する。板が厚いほどこの時間遅れのエネルギーも 増加するのではないか。
実際にこのスピーカーの後、15mm合板を使用し 30mm厚のキャビネットとした 6N−FE168SS使用の同じタイプのスピー カーを設計・製作したのだが( 次のページで紹介 )、音の歯切れの良さとい う点ではこのスピーカーを上回っているのではないかと思う。

怪鳥「モア」に触発され徹底してやってみたつもりだったが、少々やりすぎたということか。設計には「さじ加減」が肝心である。


           本体の大きさ  幅 404 X 高さ 1,164 X 奥行き 515 (mm)

                 設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。




BH−1603S

この機種は、わたしの設計


バックロード・ホーンといえばやはりこの形を思い浮かべるだろう。 上に紹介した機種を製作するまでは、この機種をオーディオ用のメイ ンスピーカーとして使用していた。現在は 6N−FE168SS を取り 付けて、
ホームシアター用のメインスピーカーに使っている。
元々ハイエンドが20kHz以上まで伸びているユニットでもあるし、ドライブにハイスピードで 聴感上の高域特性に優れるMOS−FETアンプを使っていることもあって、ツイーターの必要性は 特に感じない。

オーディオ用に使用していた頃は、まだ 6N−FE168SS が発売されて いなかったため FE168Σ にキャンセリング・マグ ネットを接着することで磁束密度を強化して使っていた。 本機のようなCW型バックロードは外見にマッチした質実剛健で安定したHi-Fiサウンド が聴ける。といっても決して平凡な音というわけではない。 また当然ヘッドが突き出ているタイプに比べ、ボディー全体(特にユニッ ト近辺)の剛性は高くなる。この点は安定した音に寄与しているだろう。

この形状のバックロードホーンは製作数も多く、FE108Σや同S等の 10cmフルレンジで改良を加えながら10機種を、16cmフルレンジと 20cmフルレンジでは計4機種を実際に設計・製作した。
そのおかげもあって、設計時のちょっとした定数の変更で、同じユニット を使用しても、ある程度リスナーの好みの音楽ジャンルに合わせた音 質設定ができるようになってきたのではないかと思う。そんなの邪道だと いう人もいるかもしれないが、実際のオーディオには、そのような工夫も ある程度必要なのではないかと思っている。

リスナーは決して音楽ソフトの絶対的な音質評価を行う人ばかりでもなく、たとえ「原音に忠実」を 自称しているマニアに限ってみても、出てくる音質・音調は人それぞれで千差万別。そのうえ、最初から音調に 自分好みの脚色を加える方向でオーディオを追求する人まで含めると、「理想」の音質・音調なんてものは、人の数だけ存在することになる。
ものの価値は、上から下まで一列に並んでいて、それに上下の格差があるのではなく、同じモノサシでは測ることのできない、それこそ多種多様な価値観があるわけである。「理想」や「究極」といった言葉は、自分の庭の中でホドホドに使っている分には、夢があるんじゃないだろうか。



             本体の大きさ  幅 340 X 高さ 910 X 奥行き 455 (mm)

                   設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。



「16cm口径フルレンジ編 その3」
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