自作スピーカー・ギャラリー


16cm口径フルレンジ編 その6(番外編)

Fostex(フォステクス)から、バックロード・ホーンに最適な16センチ・フルレンジ FE163En-S が発売されたので、設計したままで実際には製作していない16センチ版バックロードの新作を紹介したいと思う。

上面開口の10センチ版バックロード 「BH-1025S」 がうまくいったので、ホームシアター用に16センチ版に大型化したバックロードを作りたいと、かねてから思っている。ホームシアター用といっても、スタイルがスクリーンとマッチするようにトールボーイとして設計したもので、バックロード向きの本格ユニットを用い、ピュア・オーディオとして通用する本格スピーカーだ。
とっくに図面も仕上がっているのだが、現在のところ、以前から使っているCWバックロード 「BH-1603S」 が調子よく鳴っているため、それを処分してまで新たに製作して置き換える気力が出ないのが実情。BH-1603S はユニット交換を経てかれこれ20年ほど使っているが、この程度の時間では基本的にキャビネットが劣化しないのは、メリットかデメリットか。

新しいメイン・スピーカーとして、まずは 「BH-1025S」 をそのまま大型化したようなルックスの BH-1616S (6N-FE168SSを想定) を設計。10センチ版に比べ振動板面積は2.6倍、背が15センチ以上高くなり、幅、奥行きも増えて貫禄十分。BH-1025S と同様に、ピュア・オーディオ再生時に濁りが少なく雄大かつ繊細さもあるサウンドを狙ったもの。後に、少し振動板面積の小さいFE168ES用に、BH-1617ES も設計してみた。

しかし、メイン・スピーカーの製作事業は遅々として進まない。そこで、シアター用のリア・スピーカーとして設計した 「BH-1026S」 を先に作ってみたところ、一回折り返しただけのシンプルな構造がうまくいって、折り返しの多いバックロードとは一味ちがった、ストレートなサウンドとなった。

この BH-1026S のコンセプトを生かして、16センチ版のメイン・スピーカーとして設計したのが BH-1618S。スリムでさらに背が高くなるため、大画面映像とルックス的なマッチングも良好。ホームシアター用なら、こちらのほうがしっくりするかも、などとも思っている。BH-1616Sよりも若干作りやすくなることもメリット。



発売された FE163En-S は、フォステクスのサブコーン付き16センチ・フルレンジとしては 6N-FE168SS 以来のダイキャスト製フレーム。FE168ES から採用されている、振動板裏の開口が広くリブの入った剛性の高いものとなっている。もっとも、特別に焼付塗装が施され強度が確保された鉄板プレス・フレーム(限定ユニットのFE166ES-RやFE103M、6N-FE103などで採用)の、フレームの金属の体積が極めて小さくなることによって得られる、余計な振動エネルギーの蓄積が少なくなったスパッとキレの良いサウンドにも魅力があり、人によって、再生音量によって、好みが分かれることもあるだろう。

サブ・コーンを、盛大に歪み成分を「作り出す」悪の元凶のように思っている人も少なからずいるようだが、長年サブ・コーン付きフルレンジで様々なジャンルのソフトの音を聴いてきて、それは深刻な見誤りだと思っている。

サブ・コーンは、アンプから信号電流を入力されて動き出すボイス・コイルと直結しており極めて軽量であるため、必然的に大きくて重いメインの振動板に比べて微小信号への追随性が高くなる。ネットワーク素子も介さず、微小信号がハイ・スピードかつ豊富に出てくるということは、ソフトに歪み成分が多めに含まれていれば、微小信号域である歪み成分も豊かに再生されるということになる。
歪みっぽい音のソフトを好んで聴いている人、様々なアイテムをオーディオ・システムに付け加えて、その結果、信号電流を汚してしまったり共振を増やしてしまったりしたことで、歪みっぽい音にしている人、そんな人は、サブ・コーン付きフルレンジとの相性が良くないというだけのことだ。

また、サブ・コーンの付いていない普通のユニットの振動板にしても、完璧なピストン・モーション運動のみをしているとは考えにくく、ソフトな樹脂系の振動板などは特に、周波数帯域によって大きくたわみながら部分的に振動していると見る方が無理がない。 もっとも、自分の気持ちに対して高忠実(HiFi)な機器やソフトを、高音質だと思うのは各自の勝手、単なる好みの世界だ。

そんなわけで、ユニットからの直接音とホーン開口からの音の干渉が少ないことで、濁りの少ない音となる上面開口のバックロード・ホーンでは、ユニットから豊かな微小信号が再生されることは、さらにその特徴を際立たせるための重要な要素ともなる。



BH-1616S ・ BH-1617ES


こちらは、「BH-1025S」 のコンセプトを引き継ぎ大型化した16センチ版バックロード・ホーン。高さはおよそ1.4メートルある。
FE163En-S、FE166ES-R、6N-FE168SSに対応するのが、BH-1616S
それらより振動板面積が15%小さいFE168ESに対応するのが、BH-1617ES
両機種で細部の寸法に違いがあるが、ともに厚さ15ミリのサブロク大ラワン合板を5枚使って、左右2本を製作する。

ユニットの口径が16センチになったことで、10センチ版の 「BH-1025S」 よりも幅が約8センチ、奥行きが約7〜11センチ、高さは約16〜17センチ大きい。同じユニットが使えるD-37より幅は6センチ広いが、スーパーレアよりは9センチ狭い。バッフルは23センチ角のスーパーレアよりわずかに大きい24センチ角。
フルレンジの中心が床から約70センチ、ツイーターの中心は85〜90センチ程度になるので、イスに腰掛けた普通の姿勢で、無理なく耳の高さを合わせることができる。

ホーン長は約3メートルあり、10センチ版のBH-1025Sに比べ、より低域のエネルギーが多く、より大音量での再生が想定されるこれらの機種では、右図のように開口付近の構造を変更し、デッドスペースを左右に振り分けて側版の補強に利用した。
図のように柱状部分は構造材によって内部が左右に四分割、ヘッドとスロート部も徹底補強、ユニットを取り付けるバッフルは二枚重ねで厚さ30ミリとなっているので、15ミリ厚合板で強度を心配する必要はまずない。

BH-1025Sでは、開口直前の音道は、底板から頂部までの1.2メートルをストレートに上昇していったが、本機では開口の手前でホーンの折り曲げが2回増えた分だけ、余計な中高音の漏れが抑えられるはたらきもあると思う。


W = 約360  H = 約1380  D = 約390〜430  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。




BH-1618S


こちらは、ホーンを1回折り返しただけのJ字構造のバックロード・ホーン。全高が173センチあり、高さ約1.4メートルのBH-1616Sに比べても30センチ以上背が高いので、スクリーンや大画面テレビなどと組み合わせる場合に、ルックス的な相性がさらに向上する。
1回折返しのバックロードは、以前リア・スピーカー用の 「BH-1026S」 を製作したが、その音には共鳴管スピーカーのような、くったくのないヌケが良さがあり、共鳴のクセは感じられず、バックロードらしい躍動感のあるパンチの効いた音が飛び出してくる。本機はその本格メイン・スピーカー版というわけで、もちろん問題なく音楽鑑賞にも対応する.

BH-1616Sよりも構造がずいぶんシンプルなため、左右のキャビネットに使う板は、厚さ15ミリのサブロク大ラワン合板が4枚と、BH-1616Sよりも1枚少ない。細長い管の場合、容積の割りに表面積が大きくなり、がんじがらめに補強すると、蓄積した振動エネルギーがかえって音を鈍らせる恐れがあるため、素早く振動が逃げる程度の補強に留めた。 高さ3メートルにもなる初代ネッシーやネッシーIIでも15ミリ厚の板材で作られていたのだから、16センチ用としてはこれで十分なはずである。
また、背が高いので、右図のように背面下部にスリット状のデッド・スペースを設け、砂利や粒状鉛などを充填することで低重心化、転倒の抑制を図る。

幅は31センチとD-37より1センチだけ大きい程度、奥行きは35センチなので、D-37より10センチ浅い。本機もBH-1616Sと同様にバッフルは24センチ角だが、キャビネット全体とのバランスを考慮して、二枚重ねにはしていない。
フルレンジの中心は92センチで、これはスーパースワンやスーパーレアと同程度。ツイーターの中心は105センチ程度となり、D-37やスーパーレアなどとも同等。

キャビネットの高さで稼いだホーン長は約2.5メートル。D-37よりは短いがスーパーレアと同等の長さとボリュームがある。ホーンが6段階に広がっていくのはスーパースワンやモアとも同じで、スーパーレアより1段階多い。
天井高が2.3〜2.4メートル程度の一般家庭では、ホーン開口と天井の間隔は60〜70センチ程度となるが、ホーンを一回折り返しただけの上面放射による音場創生効果があり、壁際に設置することでの低域の増強効果もあるため、ルックスに加えてサウンドの面でも大画面映像との相性の良さが期待できる。

さすがに100インチ超の大画面映像と組み合わせた大音量再生時ともなると、たとえ20センチ版バックロードであっても、多くの人がサブ・ウーハー追加の必要性を感じるだろうが、バックロード・ホーンでは共鳴管スピーカーとは異なり、普通に音楽を楽しむ際に必要な重低音域の音圧が十分に確保できるため、音楽再生ではサブ・ウーハーを用いずピュアなフルレンジ・サウンドを楽しむことができる。もし、どんなソフトを再生しても低音が薄いと感じたら、まずはアンプを疑ってみるべきだ。

また、強い管の共鳴を十分に制御できないような非力なアンプの場合でも、管の共鳴を主たる動作原理としていないバックロードでは、共鳴管スピーカーほど極端に、トランジェントが劣化したボケてスカスカした音にはならないというメリットもあり、これはAVアンプで透明感のあるシャープなサウンドを得たい場合にも、有利にはたらく要素だと思う。

W = 310  H = 1730  D = 350  (mm)

設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。




下は、上の文章に登場したバックロード・ホーンの大きさの比較図。

 左から、BH-1026S、BH-1618S、BH-1616S、BH-1025S、D-37、D-101「スーパースワン」、D-168「スーパーレア」

    ※ 図の上部の水平線は、標準的な天井高(235センチ)を示す

2011/12/1 up


「16cm口径フルレンジ編 その7」
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