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自作スピーカー・ギャラリー


16cm口径フルレンジ編 その7(番外編) (一部更新 2012/2/6)


バックロード・ホーンの代表的な形状といえば、まずはホーンが前面に大きな口を明けているCW型(上図左)が思い浮かぶ。数十年前に、国内外の様々なオーディオ・メーカーから発売されていたキャビネットもこのタイプ。老若男女、古今東西、多くのオーディオ・マニアが聴いて記憶しているバックロードの音は、このタイプが多いのではないだろうか。自作で組み立てる場合、音道の幅が一定なので割りと作りやすい。

自作派だったらおそらく次に思い浮かぶのが、長岡鉄男氏設計のスワン・シリーズ(上図左から二番目)。10センチ用のスワンから始まり、16センチ用のレア、8センチ用のフラミンゴときて、20センチ用のモアでとどめを刺す。音もルックスも、最もオーディオ・マニアたちの好みが分かれるスピーカーのひとつだろう。 背面開口のスワン族の設置の難しさを避ける目的で、プロポーションはそのままに、前面開口に 変更したタイプも近年新たに設計され、8センチ用から20センチ用まで出揃ったようだ。

かく言うわたしも自作スピーカー・ギャラリーにいくつか掲載しているように、ヘッドが本体部分から突き出している人形型のバックロード(上図左から三番目)に、直方体の背面開口タイプ、上面にホーン開口のあるトールボーイ・タイプのバックロード(上図右)を考案して、何機種か実際に製作して、それぞれにメリット、デメリットがあることを確認した。



そのほかに、これまで1機種だけ製作したことがあるのがBH-1003Sのタイプ。右の画像は、そのBH-1003Sを高さ30センチの4本脚のスタンドに載せた状態。当時、宙吊り状態の狭小バッフルのスーパースワンで一世を風靡していた、強力10センチ・フルレンジFE108Sを、あえて広いバッフルに取り付け、通常のブックシェルフ・スピーカーと同様の使い方ができるよう、前面開口タイプとしたもの。

スーパースワンの5倍以上にもなる広いバッフル面からの音の反射と、左右二手に分散しているホーン開口の影響で、さぞやボケて力のない音になるかというとそんなことはなく、ツイーターを追加することなく、FE108Sのハイスピードさと駆動力の強さが十分に発揮され、力感があり音離れが良く、幅広い音楽ジャンルに対応する大らかな音のバックロード・ホーンという印象。

一般的な市販スピーカーはキャビネットの幅いっぱいの低音ユニットと、広いバッフルにポツンと取り付けられた中高音ユニットの組み合わせであることが多く、市販の音楽ソフトのほとんども、こういった市販スピーカーでどう聴こえるかに重点を置いて、念入りに調整されている。
BH-1003Sの場合、大口径ウーハーが幅広のホーン開口に置き換わったと見れば、音源の大きさと配置が市販スピーカーと似ているため、バックロードとしては、市販スピーカー向けに調整されたソフトとの相性が良いのではないかと思う。
それでも、フルレンジはフルレンジ。市販スピーカーのようなネットワーク素子が入るわけではないので、トランジェントや微小信号への対応が抑えられてしまうなんてことも起こらない。

この特徴は、プラスチック成型のフロント・パネルを持った、割と安価なミニ・コンポと組み合わせて鳴らした場合でも大きくは後退せず、超高級機器やソフトの欠点までも露骨に暴きだすスーパースワンとは、別の意味でのハイCP(コスト・パフォーマンス)なスピーカーとなった。

ではなぜ、その後このタイプを作らなかったのか。その理由として、高さ63センチのBH-1003Sでは別途スタンドが必要だったことに加え、構造上、キャビネットの幅が広くなってしまうことがある。

10センチ版バックロードを作る人は、16センチ版や20センチ版では、キャビネットが大きくなり過ぎて部屋に置けないという事情から、やむなく10センチ版を選択していることも多いと考えられるが、BH-1003Sは幅40センチとスーパースワンを超え20センチ版バックロードに迫り、同じユニットが使えるD-118の倍以上ある。
そんなわけで、サウンド的なメリットが多いにもかかわらず、設計し製作もした自分自身が、ほぼ忘れてしまっていたバックロード・ホーンなのである。

久しぶりにバックロード向け16センチの限定ユニットFE163En-S(左の画像)が発売されることとなり、自作スピーカー・ギャラリー「16cm口径フルレンジ編 その6」でも、トールボーイのバックロード・キャビネットを紹介したところだが、それらとはルックス的な雰囲気が大きく異なる、BH-1003Sに似たスタイルを持つ16センチ版バックロードの設計を進めてみた。キャビネットが特に大型になることもなく、スタンドの必要もないフロア型として成立することもあって、このページで紹介することにした。

ユニットはFE163En-Sのほかに、FE166ES-R6N-FE168SSも使える。幅広い音楽ジャンルやソフトへの対応を考えると、サブ・コーンによる豊富な情報量、しなやかな振動板素材と強力磁気回路、剛性の高い構造体を採用しているFE163En-Sが、本機に最も向いているユニットだと考えられる。
また、FE168ESや、キャンセリング・マグネットで磁束密度を高める手法を用いることで、 FE168EFE166Enを使うこともできると思う。



BH-1619S1 (左図) ・ BH-1619S2 (右図)

開口部の形状によって、2タイプあります。


上の2枚の画像が、16センチ版として設計したBH-1619S。左図が基本形のBH-1619S1(以下S1)で、右図がそのバージョンのBH-1619S2(以下S2)。BH-1003Sの製作以降すでに長い年月が経ったこともあって、多少ルックスが向上しているのではないかと思っているが、どうだろうか。

幅は約45センチ、奥行きは約40センチ、ツイーターを除く本体の高さは約80センチ、ホーン長はD-37並みのおよそ3メートルある。ツイーターは天板に載せるが、中心は床から85センチ程度の高さとなるので、無理のない姿勢で音楽を楽しむことができる。
幅45センチというと、スワン型のスーパーレアと同サイズだが、本機は壁際に設置することもでき、サウンド・キャラクターも異なるので、点音源趣向のバックロードでは聴いていると疲れてしまうという人には、選択肢のひとつになりうるのではないだろうか。

S1S2も基本設計は同じだが、図のようにホーン開口の処理が異なっている。S2に比べると直方体のアウトラインのS1は若干作りやすいが、ではS2が作りにくいかというとそうでもなく、天板と底板の隅をノコギリで切り飛ばすのと、ホームセンターで売られているヒノキの隅木をバッフル左右の板に取り付ける程度の差でしかない。バックロード・ホーンは全体の製作自体がやっかいなので、そのくらいの差は些細なことでしかないというわけだ。

ただ、製作上はその程度の違いでしかないものの、ルックスからくる印象は意外なほど変わってくる。オーディオ機器は音も重要だが、室内に置かれてはいても、実際には音が出ていない時間のほうがずいぶん長い。インテリアとして部屋に置いた際に、ルックスを気に入ることができるか否かも、決して小さな問題ではないと思っている。なので、まずは見た目の好みで決めても問題はないと思う。



W = 450(S1)・ 462(S2)  H = 800(S1)・ 806(S2)  D = 400(共通)  (mm)

設計図・板取り図は、後日用意します。







S2(右図)ではバッフルの左右が後ろに折れ曲がっていることで、実質的なバッフル面積が小さくなり、ユニットから直接出ている中高音が滑らかに拡散することにもなるため、音場感や聴感上のダイナミック・レンジの拡大に効果が出ると思う。
S1S2共通に、バッフル下部の広いスペースは、バッフル面よりも数センチ奥まっているが、この部分には反射の低減のために、ウレタン・スポンジをはめ込んで表面をフェルト布でカバーするとか、コルクを貼りつけるとか、ルックスの好みによって、板材で埋めてしまっても構わない。それぞれに音は違うはずだが、音が別物になってしまうほどには変わらないはずだ。

本機のようにキャビネットの左右にホーン開口を持つスピーカーとして思い浮かぶのが、取り付けられている38センチ・ユニットが小さく見える超大型バックロード、タンノイのウエストミンスター・ロイヤル。高さ1.4メートルで幅も1メートルある。ウエストミンスター・ロイヤルはアマチュアでは設計はおろか、組み立てすら困難であろう非常に複雑な構造をしているため、ユニット前面のフロント・ホーンの成型も含めて、マネしようと思ってもとても手に負えるような代物ではない。

BH-1619Sでは、直管の断面積を段階的に広げていくいつもの方式を採っているので、S1(左図)ではすべての部材は基本的に長方形。S2(右図)でも天板と底板に斜めカットがあるくらいで、特別と言えるようなところはない。
これまでにバックロードを組み立てたことのある人でも、そうでない人でも、大きな問題なく組み立てられるものと思うが、まずは部材を正確な寸法でカットしておくことが、スムースな作業と美しい仕上がり、高音質を実現する第一歩だと実感しているので、その点は気を付けてほしい。




下は、これまでに紹介した16センチ版バックロード・ホーンの大きさの比較図

 左から、BH-1619S2、D-37、D-168「スーパーレア」、BH-1616S

2011/12/13 up


「20cm口径フルレンジ編 その1」
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