自作スピーカー・ギャラリー


20cm口径フルレンジ編 その3

フォステクスのバックロードホーン向きユニットとしてΣシリーズ( FE108Σ、FE168Σ、FE208Σ )
がある。このうち16cmのFE168Σはやや弱くどちらかというとバスレフ箱で本領を発揮するユニット
だが、10cmのFE108Σと20cmのFE208Σについてはこれらのユニットに合わせて適切に設計され
たバックロードホーンキャビネットに組み込めば、普通のオーディオマニアにとって必要にして十分
なバックロードサウンドを味わうことができると思う。
このΣシリーズの磁気回路を強化する方向で10年くらい前から限定生産のユニットもたまに発売
されるようになり、長岡鉄男氏のリファレンススピーカーや新作バックロードの記事に登場するよう
になったことで、マニアからの脚光を浴びることとなった。その音質はディープなマニア仕様というか、
オーディオシステム全体の使いこなしに対して極めて敏感だといえるが、キャリアのあるマニアが
じっくりと本腰を入れて取り組まないと十分に鳴らしこむことは難しいともいえるわけだ。スピーカー
が、再生するソフトや周辺装置のアラを克明に暴き出すことを喜ぶマニアなんて世の中にそう多く
はない。また、限定の20cmユニットはFE208ESになってぐんと高価にもなったし、限定生産の時期
を逃すと入手がきわめて難しくなるという点も気掛かり。
この機種BH-2007では当初38cm口径の大面積の振動板でという要望を頂いていたが、現在新品
で入手可能なものでバックロードに最適といえるようなユニットは20cm口径のFE208系まで。かれ
これ二昔以上も前のようなアルニコマグネットを用いた大口径フルレンジは姿を消してしまっており、
無理に現行の30cm以上の大口径ユニットを使用してもあまり良い結果は得られないだろう。中古で
なら往年の銘ユニットを手に入れることもできるだろうが、ユニットは消耗品、特定のユニットに対し
非常に強い愛着があるというわけでなければ勧められない。また、バックロードにはネットワーク無
しのスルーで使えるユニットを選びたいところ。
そこで、この機種ではFE208Σを2発使って28cm口径相当の振動板面積とした次第。バックロード
ホーンは10cmユニットのスワンでも上手く鳴らせば30cmウーハーを取り付けたバスレフ型並の低音
感は得られる。また、仮に限定ユニットのFE208ESを使用して2発版バックロードを設計すると、より
高品位なツイーターやオプションの真鍮リングまで含めた製作費用はこの機種の3倍近くにはなるだ
ろう。そんなわけで、限定ユニットほどのマニアライクな超シビアさはないかもしれないが、レギュラー
品であるFE208Σを片チャンネルに2発使用することで幅広いジャンルの音楽再生においてハイス
ピードで迫力のあるバックロードサウンドを出すことが狙い。
もっとも、FE208Σは限定ユニットに比べて和やかな音だといっても、通常の範囲で考えるとかなり
辛口の部類に入るハイスピードユニット。また、かつて角型フレームだった頃の旧Σシリーズに比べ
ても、長年の作りこみによる細部の改良が施されているはずだ。



BH-2007
この機種は、わたしの設計

       実際にこの機種を製作された読者の方から画像を頂きました。(2000/12/11)

音道の幅は52cm、ホーン長は約3.3mあり、
大きさは、高さ1201mm、幅604mm、奥行き
555mm。21mm厚のサブロク合板を計10枚
使用する大型重量級のバックロードホーン。
ユニットを取り付けてホーン開口に砂利を
敷き詰めると総重量は1本当り110〜120kg
にはなるだろう。
長岡鉄男氏設計で限定ユニットのFE208Sや
FE168SSをそれぞれ2発ずつ使ったD-77や
D-66というバックロードがあり、まずはルック
ス的に飽きずに長く使えるようにそれらの外
観を踏襲したものの、音道の基本設計につ
いては単なるD-77の縮小版でもD-66の拡大
版でもなく、FE208Σ前提の設計とした。
限定ユニットとΣシリーズでは、似ている部分
も多いが、異なっている部分も少なくないので、
単純に限定ユニット用のバックロードの音道
の幅のみを拡縮したり、キャビネット全体をそ
のまま拡大・縮小するといった方法ではあま
りうまくいかないのではないかと思う。
オーディオチェック用のCDで確認するとロー
エンドは30Hzをしっかり再生しているとのこと。
ハイエンドはホーンツイーターを追加する必
要があるが、能率、クオリティー、価格といっ
た面で現実的なのはT925Aあたりだろう。


  W = 604  H = 1201  D = 555  (mm)

 設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。







 製作者の方の自作第1作目とのことだが、仕上げはとても綺麗。
 画像ではそれほど大きくは見えないが、高さ1.2m 幅60cmある。





DRW-2001T
BH-2007の製作後1年余り、30Hz以下の超低域の
拡張のために強力20cmウーハー フォステクス
FW208Nを片チャンネルに2発使用した大型DRW型
サブ・ウーハー DRW-2001T を追加。
これも大型で幅は80cm、奥行き45cm、高さ159cm
と、これはもう音の出る家具のといっても良いかも。
使用する板材も24mm厚サブロク合板が合計9枚に
なる。

バスレフ箱のダクト開口にさらにバスレフ箱を接続
し、2つのダクトを直列に動作させるのがダブル・バ
スレフ箱。そのユニットの前面を密閉箱で密封する
ことによって、ダクトから放射される低音のみを利用
するようにしたのがDRW型サブ・ウーハーとなる。
このDRW-2001Tは上部キャビネットと下部キャビネット
に2分割されており、2発のFW208Nは内容積約100
リットルの下部の密閉箱に取り付け、その上に内容
積約300リットルのダブル・バスレフ箱を載せる。超
低音を放射するダクトはキャビネットの天板に開口
しており開口部から回りこんで耳に届く低音成分の
みを聴く仕組み。分割の方法やダクトの位置は長岡
鉄男氏設計のDRW-1mk2と同じだが、キャビネット
の総容積はその約2倍となった。
このサブ・ウーハーはFE208S版のバックロード D-77
にも、そのFE208SS・FE208ES版のD-78なんてもの
があればそれにも使えるのかもしれないが、やはり
置き場所を確保するのは大変だろう。



DRW型のサブ・ウーハーでは、電気的なフィルターを 使うことなくキャビネットの構造的機能によって必 要帯域よりすぐ上の音域のレベルを急峻に20dB以上 落とすことができるが、それより上の音域では徐々に レベルが下がっていくものの数kHz以上まで高域の 漏れが残るため
こちらのDRW型サブ・ウーハーの周波数特性を参照 、メイン・スピーカーとの干渉を抑 えるためにコイルを入れたほうが良い場合が多いよ うだ。  それに加えてこの機種ではダクト面積が225cm2と大 きいこともあり、中高音の漏れ対策として3.5mHのコ イルを挿入している。
また、製作者の方から設計の依頼を受けた際にでき るだけ大きく見えるようにとの要望があったため、 キャビネットの幅を広くし高さを抑える形状とした が、結果的にDRW-1mk2に比べると約30cm天井からダ クト開口が遠ざかることになったので、ダクトから 漏れる中高音が壁や天井に強く反射して全域で音の 歯切れが悪くなってしまうことの抑制にも一役かっ ているものと思う。

DRW型ウーハーはユニットがキャビネット内部に取付 けられているため、振動板が露出している一般的な バスレフ型のサブ・ウーハーに比べてスピード感に 劣ると言われているようだが、実際にはDRW型ウー ハーの低音のスピード感やソリッド感、押出し感は ドライブするアンプのクオリティによっても大きく 左右されるようであり、これは比較的小口径のユニッ トを特に大型のキャビネットに取付けるというフル レンジ・ユニット的な使い方によるよるものではない かと思う。市販30cm3ウェイ・スピーカーではまず聞 こえない30Hz以下のスピード感にこだわっているア ンプはそれほど多くないと言うことにもなるのかも しれない。






サブ・ウーハーを追加してのフルシステムの様子。これら大型のスピーカー 群に取り囲まれては
中央に置かれた24mm合板2枚重ねのラックに収納された フルサイズのコンポがまるでミニコン
ポのように見える。アナログ・レ コードを中心にいろいろなジャンルの音楽を楽しまれているとの
こと。 十分な部屋の容積と近所迷惑などを心配しなくても良い余裕のあるリス ニング環境がない
と、この規模のシステムを組むのは難しいかもしれない。 なお、この画像ではメイン・スピーカー
のBH-2007は製作者の方の裁量で 側板には24mmを追加して66mm厚となっており、オリジナル
の状態よりルッ クスに貫禄が出ているようだ。音質的には一長一短があるのではないだ ろうか。



「30cm口径フルレンジ編 その1」
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