自作スピーカー・ギャラリー


8cm口径フルレンジ編 その1

8cm口径フルレンジに フォステクス FE83 という機種がある。実効振動板半径は3cmで、実効
振動質量は1.15gしかない。しかしこの振動板に対してマグネットは大型で140gもある。目安とし
てマグネットと振動板の質量比を出してみると、Σシリーズ並みの強力ユニットということになるが、
Qoやfoの特性値で判断するとバスレフ型での使用が妥当ということになる。
しかし強力な磁気回路のおかげもあってか、このユニットの中域、特に人の声の質の高さについて
は自作マニアには良く知られていることで、爽やかで抜けが良く優しさの良く出る音を聴かせてくれ
る。
このユニットをさらに強化してバックロード・ホーンに適合したΣバージョンを作るには、マグネットの
大型化と新規にダイカストフレームの金型を起こさなければならない。前者は可能でも後者はとても
無理だろうと誰もが思っており、8cmフルレンジのΣバージョンは永遠に出ないだろうという予測が
上がっていた。
ところが1999年3月、突然 6N−FE88ES の限定販売が始まる。コーン紙は1998年12月の
6N−FE108ES でマニアをあっといわせたESコーン(デンプン質を混入)を採用、エッジは高
感度のタンジェンシャル・エッジとなりフレームもこのユニット専用にダイカストの型を新たに起こし
ているようだ。マグネットも当然大型化され、それまでの直径60mm厚さ15mmから、直径80mm
厚さ16mm(8mmの2枚重ね)になり、その重量も334gへと激増した。しかし価格も FE83 の3倍
以上となり、CP比が高いのか低いのかは音を聴くまでのお楽しみということになった。
以前 FE83+キャンセリング・マグネット を想定して設計し( といってもかなり強引 )実際に製作
したバックロードホーンがあるのだが、特性を照らし合わせてみるとどうも 6N−FE88ESに適合
しているようだ。そこで、このスピーカーのバッフル板を改造してユニットを交換し、音を聴いてみるこ
とにした。
単純なユニット交換ではあるが、新型ユニットはどのようなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。


BH−0802V

FE83 + キャンセリング・マグネット

FE83に外径50mm厚さ10mmを2枚重ねでキャンセリング・マグネットと
して接着して磁束密度を上げた状態を想定して設計・製作したバックロード・
ホーンである。しかし磁束密度を上げたといってもせいぜい1、2割程度のこ
となので、依然としてバスレス向きのユニットをバックロード・ホーンに使用し
ているという状況に変わりはない。
いわゆるCW型にしなかった理由として、このユニットでCW型とした場合キャ
ビネットの幅が狭くなり設置の安定度が低下し音の立ち上がりが悪くなるこ
と、またスロート断面形状が極端に扁平になることで気流抵抗が増加しスピー
ド感が損なわれることが考えられたからだ。
左の形状にした理由は、8cmフルレンジの音場感を引き出してやりたいの
と、ホーンの経路をスワンのように分割しキャビネットの幅を確保できることと、
前面開口とすることで背面開口型を狭い部屋で使用した場合に問題となる
ホーン開口からの音の、壁からの反射を避けるためである。( ただし広い部
屋で周囲の壁からの距離を取っての設置では、ホーン開口からの中高音の
漏れを極力聴かなくて済む背面開口型が音質的にも音場再生にも有利にな
るので、しっかり使いこなしをする気があれば背面開口型のほうが面白いと
思う。その場合はやはりスワン系のBHを使用するのがベストだろう。)
結果として、ボディーの水平断面はほぼ正方形に近い形状にすることができ
た。高さは約90cmとし、ホーン・ロードは2.6m。サブロク合板1枚でスピー
カー1本ができる。
音は、予想外の低域の伸びと量感にびっくり。10cmフルレンジのスワンでも
出ないような重低音( 例えば「タイタニック」のサントラ1曲目50秒あたりから
出てくるバスドラム風のブルブルという皮のふるえや、パイプオルガンの風圧
など ) をかなりの大音量で再生できるし、音場も広い。
しかし振動板の振幅もかなり大きくなるので、最大入力7Wの8cmフルレンジ
であることを忘れないことが肝心。また、もともとバックロード・ホーン向きでは
ないユニットを無理して使っているためか、中低域から下の帯域で多少ホーン
の癖も出てきており、鮮烈サウンドといった印象はない。


  本体のみの大きさ  幅 260 X 高さ 885 X 奥行き 285 (mm)




BH−0802ES

BH−0802V のユニットを 6N−FE88ES に交換

バックロード・ホーンに安心して使えるような8cmフルレンジの強力版が出るこ
とはないだろうと思っていたが、6N−FE88ESの限定発売の決まったため、
早速予約を入れて1ペア入手。といっても新たにBHを設計・製作してみたとこ
ろで、今のところ自分では使い道がない。そこで上に紹介したBH−0802Vに
取り付けて音を聴いてみることにした。
口径が同じだからといってやみくもに交換したのではなく、BH−0802Vを設
計したときに想定した架空の8cmフルレンジの特性がFE88ESにかなり似て
いるのを確認したからである。
しかし、マグネットの直径が20mmも大きくなり、そのままではユニットを取り付
けられなくなったため、既存のバッフル板は切り取り新しいバッフル板を取り付
けてからの交換となった。( なお「フラミンゴ」ではヘッドのうちのりがマグネット
外径寸法と同じ80mmなので、同様の交換はできない。もしできても本来の
FE88ESの音は聴けないと思われるので「スーパーフラミンゴ」を製作するの
が得策だと思う。)
交換後2時間ほどの試聴だったが、一聴して中高域の輪郭が鮮明になり透明
感も向上。鳴らし始めではあったが、BH−0802Vでみられた中低音の癖も
低減され、クールでシャープな音が聴けるようになった。この分だとエージジン
グでホーンの癖は払拭され、かなり良くなることが期待できる。
また試聴は2台のアンプで行ったのだが、2台目のアンプは重量が1台目の2
倍あり出力段にMOS−FETを使用している。FE88ESはこの2台のアンプの
違いを非常に明確に出してくる。この能力はFE108ESを部分的に越えると
いっても良いのではないかと思う。
価格的にはFE83に比べれば3倍以上のコスト・アップにはなってはいるのだ
が、それでもFE108ESに比べれば30%以上のコスト・ダウンである。FE83
のバージョン・アップとは全く別の、ESシリーズの8cm版という見方をすれば
決して高い買い物ではないと思う。このユニットは適正に設計された専用の
キャビネットと組み合わせ、能力を十分に発揮させてやりたい。それだけの価
値のあるユニットだと思う。
それにしても、このESシリーズに使用されているバナナのデンプン入りの振動
板の実力はかなりのもののようだ。従来の純パルプ振動板に対して「20世紀
よさようなら」とでもいいたい感じの一大革新とでもいえるのではないか。今後
の16cm、20cm口径への展開が非常に楽しみだ。
またこの振動板は製造が困難だということではあるが、限定品だけでなく普段
流通しているレギュラー製品へも早い時期に採用してもらいたい。


「8cm口径フルレンジ編 その2」
表紙にもどる