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ある日のこと、このホームページの読者の方から
フォステクス FE88ES を使用したバックロード・ホーンを作りたい
とのことで、新規設計依頼のメールを頂いた。すでに長岡鉄男氏設計のスー
パースワンをお使いとのこと。新規設計のキャビネットのサイズには条
件があって、幅は最大20cmまでで高さは90cm程度、奥行きはスーパースワン
と同程度の35cmまでで、ホーン開口もスーパースワンと同じくキャビネット
の背面に持ってくる。これだけ決まっているのだから設計はいとも簡単かと
いうと、実際はそうでもない。
スーパースワンの路線でFE88ES用の背面開口バックロードといえば長岡鉄男 氏設計の「スーパーフラミンゴ」が思い浮かぶが、キャビネット幅が29cmあ るため残念ながら条件に合わない。しかし新しく作るバックロードは、スー パースワンとはユニットの差を楽しむといった感じになるように、あまりか け離れた傾向の音にはしたくなかった。そこでこれまでいろいろなユニット で作ってきた人形型バックロードの外形にすることにした次第。 これまでに設計したFE88ES用の人形型バックロードとしては前面開口型で キャビネットの幅が25cmある BH-0805ESa があるが、単にこの幅 を狭めてヘッドの向きを逆転させるといった安直な方法では音質的にうま くいかないだろう。むろんいかにも妥協の産物といった感じのものにはし たくない。そこで、いろいろと思案をすることになった。 |
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依頼者の方から頂いた上記の条件にかなうように設計した結果、キャビネッ
トの幅は19cmになった。奥行きは33cmなので、しっかりセッティングすれば
転倒する心配も少ないだろう。 左の画像のようにスロート入り口は BH-1203K と同様ヘッドの背面に あり、ヘッドとネックとボディの天板は補強材によって連結して強度を確 保している。ユニットとボディの距離は短いのでネックの長さが40cmもあ るスーパーフラミンゴのようなユニットが空中に浮いているという効果は 薄らぐが、ピンポイントで音像が定位し音場が広く散乱する効果を十分に 得ることができる。 なお、2本のキャビネットの製作にサブロク大({3尺=約910mm}X{6尺= 約1820mm})の15mm厚合板を2.5枚使用する。画像のBH-0806ESはシナ材を ラワン合板の表面に貼ったシナ合板で製作。背面も含めてすべての小口は シナ材の小口テープで処理されており、塗装の必要性を感じさせない仕上 がりとなっている。 |
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本体の大きさ 幅 190 X 高さ 900 X 奥行き 330 (mm) 設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。 |
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こちらはボディ部の内部構造。 ホーン長は3mあり、それを見ての通りスパイラル・ホーン並にしつこく折り 曲げている。後部にはキャビネットの微小振動を拡散・吸収するための砂ま たは砂粒鉛を流しこむスペースも設けた。また、ホーン開口部には砂利を敷 き詰める仕様にしており、重心も下がる。 この高さ66cmのボディ部の上にヘッドとネックが載る形になるので、全高 が90cmでも寸胴の直方体キャビネットに比べると威圧感は少ない。ただし、 スピーカーを部屋のインテリアのひとつとして捉えるとすると、人形型や スワン型のルックスを抵抗なく受け入れられるかについてはユーザーの好 み次第といったところだろう。音質的にはメリットの多い形状だと思う。 |
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左の画像はカットを依頼した業者から届いた2本分の板材。 片チャンネルあたりのパーツ数は48と多め。本番の組立前に各部材の寸法 チェックを行ったり、仮組みをして組立順序を十分に把握してから作業に 取り掛かると、実際の組立がスムーズに進行する。 8cmユニットでは20cmといった大口径ユニットのバックロードよりも音道 の誤差や隙間がシビアに効いてくるので、板材のカット精度には特に気を 付けたほうがいい。 どんなスピーカーでも内部に隙間ができると音質劣化が起こるが、バック ロードの場合は完成した後では内部の隙間の修復はまず無理。そうなって からでは手遅れなので、多少料金がかさんでも信頼のおける業者にカット を依頼したほうが音質に対するコスト効率は向上する。 |
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| 完成後、前面から。 すべての小口は背面も含めて小口テープで処理されている。 |
背面の様子。 ホーン開口部には砂利を敷いて薄い布地をかけておく。 |
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| スーパースワンとのツー・ショット | こちらは、後ろ姿でツー・ショット |
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製作者の方がすでに使っておられたスーパースワン(ユニットはFE108ESII)
と並べてのセッティング。
60cm幅のコンクリートのドブ板の上にちょうど並べられる大きさ。ソフト
によって切換えて使用されているとのこと。
なお、依頼者の方からは完 成後の鳴らし込みを進めていく過程での音質の変化もお知らせ頂い たが、バックロード・ホーンにはよくあることで鳴らし始めはガサガサ・ ボーボーとした音がまとわり付くものの、これは時間が経てば解消してゆき 高音の切れこみや中音の艶、低音の締りや押出し感がよく出てくるようになる。 また、スーパースワンでもそうだが、広い部屋で背後の壁から距離をとっ たセッティングで鳴らしてやれば、さらにパフォーマンスが向上するだろ う。 |