自作スピーカー・ギャラリー


8cm口径フルレンジ編 その5

バックロード・ホーンといえば大抵床に直置きして使用するトール・ボーイ のフロア・タイプのキャビネットを思いつくが、大型で重くセッティングの 融通が利かないといった印象を与えがちだ。できるだけキャビネットを小型 化したいところだが、むやみに小型化したバックロード・ホーンは低音の量 感不足になりやすく、システムのメインスピーカーとして使うにはちょっと 寂しいかもしれない。
これまでにスタンドやローボードの上に置いて使うブックシェルフ・タイプ でメイン・スピーカーに使えるバックロード・ホーンは10cmフルレンジで BH-1003SBH-1012 を作った。これらはともにホーンロードは約2.5mあるため通常の音楽再生 には十分な低音域を確保していたが、BH-1003Sのほうは外形容積で約90リッ トルとフロア・タイプの BH-1005S とほぼ同容積であり、スタンドや床占有面積まで含めて考えるとかえって 大型化となってしまっていた。
今回はバックロード・ホーン用ユニットとしては8cmと最小口径のFE88ESを 使用し、見た目でいかにもブックシェルフ・タイプだと誰もが納得できる ようなバックロード・ホーンを製作することが狙い。しかも小型化しても 低音域も十分に確保したい。

BH-0807ES

この機種は、わたしの設計


左が完成した BH-0807ES の画像。キャビネットの高さは40cm、幅 が23cm、奥行きが33cmと外形寸法では16〜18cmウーハーの2ウェイ・スピー カーといったところで、長岡鉄男氏設計のFE88ES用ブックシェルフ・バッ クロード「D-99 エイトマン」ともほぼ同じ容積だが、それよりも高さ が10cm低く幅も4cm狭いのでリスニング・ポジションから見ればより小型 に見える。

ホーン開口をキャビネットの背面にもってきたため前から見ると一見密閉 型スピーカー。しかし、もし密閉型スピーカーであれば別途サブ・ウーハー を追加しないと低音不足になるだろうが、このスピーカーの場合なら背後 の壁から10〜30cm程度距離をおくといった一般的な置き方をすれば、ユニッ トの口径やキャビネットの大きさからの予想を上回る低音の量感を確保す ることができる。
バッフル面積極小を狙った BH-0806ES とはコンセプトが異なり、バッフル面積が広いこととスピーカーの背後の 壁からの反射を積極的に利用することに加え、FE88ESの特徴も加味されて ソフトの録音状況にあまりシビアにならずに音楽を楽しめる音になってい る。小口径・高感度ユニットのメリットが十分に発揮されてスピーカーを 無視して音がよく広がり、低域も十分に厚みのある音でしかも軽々と鳴っ ているといった感じで、世の中の大半を占めているなんの変哲もない小型 直方体キャビネットのイメージから連想されるスピーカーに貼りついたよ うな薄っぺらな音と音場とはまったく異なる鳴りっぷり。
サブロク大の15mm厚合板1.5枚分で2本分のキャビネットができるが、 ホーン・ロードの長さは245cmとスーパーフラミンゴと同等。ユニットは あくまでも8cm口径であるので、爆発音のような重低音の入っているソフ トを圧倒的な大音量で再生するといった過酷な使用は避けるように気を つけたほうが良いだろう。

本体の大きさ
  幅 230 X 高さ 400 X 奥行き 330 (mm)    設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。

新型ユニットの FE88ES-R用には 類似形状で本機よりも製作が容易な BH-0811ESR の図面を用意しています。
本体の大きさ  幅 270 X 高さ 510 X 奥行き 250 (mm)




    組立の様子




外観上は正面から見ても背面から見てもいとも簡単に組立てられそうな イメージがあるが、その穏やかなルックスによらず内部は右の画像のよ うにやや複雑。といっても順番をよく考えて板材を組立てていけばそん なに難しいものでもない。ホーン開口は音像や音場の再現性も考慮して ユニットと高さをそろえている。




左右2本のスピーカーを対称形になるように組立てる必要があるが、これは 「D-99 エイトマン」と同じ。
このあたりまで組立が進んだ段階で内部配線を通しておく。吸音材は空気室 の約半分とホーンの折り曲げ部に適量。



ホーン開口にはアールをつけて滑らかさを狙う。
オイルステインで木目を活かした塗装を施し、同系色のネットも製作した。



    周波数測定   グラフの見方はこちら のページを参照




高さ50cmのスタンドに載せ、左右と背後の壁から1m以上離した場合の周波 数特性。低域は徐々にロール・オフ。





背後の壁まで15cmに近付けた場合の周波数特性。 低音域がグンと上昇する。40Hz以下にもレスポンスがあり、通常の音楽再生 に必要な帯域は十分に確保。
さらに、スタンドから降ろし床に直置きすると30cmウーハーのフロア型ス ピーカーのような低音が軽々と出てくるが、スピーカーが部屋のコーナー に近づくため音像はふくらみ気味になる。


29インチ・テレビの両サイドにセッティングした例。見た目でバックロード・ ホーンだと気付く人は少ないのではないだろうか。ブラウン管に色ずれが生 じないように、FE88ESには小型のキャンセリング・マグネットを取り付けて いる。       



こちらは図面をお送りしてこのサイトの読者の方が製作したBH-0807ES。 スピーカー工作は初めてとのことだが仕上がりも良く、明るめの塗装を 施しわたしが製作したものと雰囲気が異なるあたりは自作ならでは。ま たユニットのFE88ESのフレームをすっぽり覆うようにフォステクス の10cmラウンドフレーム・ユニット用のグリルを振動板の保護のため 取付けている。


FF85Kバージョン と サブ・ウーハー DRW-1205



画像の左下はユニットに同じく8cmフルレンジのFF85Kを使用したバージョン。 FE88ESに比べてややホーンの駆動力が弱いので、適当なサイズのキャンセリ ング・マグネットで強化してしようする。

そのBH-0807ESの上に載っているのが、マトリクス・サラウンド用に用意した FF85Kの小型バスレフ型スピーカー。BH-0807ESとルックスのバランスを合わ せるために、バスレフ・ダクトはキャビネット上面に開口している。

画像の右半分にそびえ立っているのが、強力10cmフルレンジ テクニク ス EAS-10F20を使用したDRW型サブ・ウーハー。メイン・スピーカーが重量 1g台の軽量振動板を使用したバックロード・ホーンであるために、できるだけ 違和感なく自然な空間を再現できるようにするために、この方式を選んだ。 サブ・ウーハーのユニットもあまり振動板の重い物は使いたくないが、かと いってあまりに軽過ぎても強度不足になる。
ユニットの10F20は軽量振動板・強力マグネットの10cmフルレンジとしては foが55Hzと低く、また振動板の傾斜が深く強度の点で有利になるため、サブ・ ウーハーとして使用もイケるだろうと判断して採用。実際にわがやのメイン・ システムの16cm1発版DRW型で兄貴分になる16F20を使った際にも、自然で圧し つけがましくなく透明感が高い超低音が得られている。

左の画像を見るとメインのBH-0807ESに比べ不釣合いなほどに大型なサブ・ウー ハーに見えるが、自然なトランジェントを得たい場合には大きくなるのはある 程度避けられない。とは言っても、キャビネットの太さは22cmX25cmなので、 部屋のコーナーに設置してしまえばあまり気にならなくなる。 部屋の壁紙と似たシートをキャビネットに貼ってしまえば、見た目の存在感は さらに薄くなる。

いかにもブンブン・ドンドンがんばって鳴っているのがサブ・ウーハーの真骨 頂と捉える向きもあるかもしれないが、本機ではメイン・スピーカーといっ しょに鳴っているとは言われてみなければ気が付かないが、サブ・ウーハーの 音を切ってしまうと途端に場の空気が寂しくなるという縁の下の力持ち的効 果を狙っているので、見た目にもあえて目立たせないセッティングとしてみる のも良いかもしれない。

    サブ・ウーハーの本体の大きさ
      幅 220 X 奥行き 250 X 高さ 1400 (mm)    
設計図・板取り図をご覧になりたい方は、こちらから。


「PST回路 使用機種編」
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