銀杏健康講座  急性膵炎

 激しい腹痛があると、まず胃腸の病気を考えますが、「食事した後に痛み始めた、背中にも痛みを感じる、吐き気が止まらない.」などの症状が出たら、膵炎を疑わなくてはなりません.膵炎には急性と慢性があり、経過や治療法にずいぶん違いがあるので、今回は急性膵炎についてお話しします.

症状
 腹痛でも突然、みぞおちを中心に激しい痛みがおそいます.痛みは持続性の激痛で,寝てなどいられないほどで、身体をエビのようにまげて膝を抱えるようになります.また、熱が出たり吐いたりします.

原因
 アルコールが40%でいちばん多く、胆石によるものが20%です.近年、アルコールの摂取量が増えたり、食生活が欧米化しているため日本では増加しています.

起こるしくみ
 アルコールを飲むと膵液の分泌が増え、膵管の出口がむくみを起こしたり、炎症を起こしやすくなります.あるいは、胆石の場合には肝臓で作られた胆汁が流れる胆管は十二指腸への出口の手前で膵管と合流しているので、そこへ胆石が詰まると膵液が逆流することで、急性膵炎が発症します.
 このようにして、膵臓が腫れてきて、腫れたところから血液がにじみ出たり、膵臓自身が溶けて壊死におちいります.病変が膵臓にとどまらず、活性化した消化酵素や二次的に産生された毒性物質が血中や腹腔内に拡がって全身障害を起こすと重症膵炎になるケースもあります.

検査
 血清アミラーゼや尿中アミラーゼが高値を示し、リパーゼやエラスターゼが血液中にどれくらいあるか調べます.白血球の増加やCRPという炎症反応が陽性になるはずです.これで膵炎を疑ったら、超音波エコーやCTで膵臓の腫れぐあいや膵管の異常、また、膵臓周辺の状況を確認します.腹部レントゲン検査では特徴のある腸のガス像が見られることがあります.

治療
 入院して安静にし、絶飲絶食が基本になります.少しでも飲んだり食べたりすると、膵臓はそれに反応して働こうとするので、炎症が治まらないからです.その間、水分と栄養補給のため点滴をおこないます.胃液の分泌を抑えたり、血中にある活性化した膵酵素の働きを抑えたり、痛みに対しては鎮痛剤、感染予防のために抗生物質などの処方もします.幸いにして、絶飲絶食が解かれるくらいに回復した場合は、お白湯や番茶から始めて流動食へときりかえていきますが、順調に回復した場合でも暴飲暴食をさけ、低脂肪食を守っていただきます.もちろん、腹痛が無くなっても、膵炎の原因のいちばんであるアルコールは禁止となります.

予防
 ふだんから暴飲暴食をさけること.
 アルコールの飲みすぎはしない.飲酒後に下痢や軟便になりやすい人は量を減らす.
 酒量の多い人は40歳以降は年一回は定期検査を受け、50歳を過ぎたら年二回は検診を受けるのがいいでしょう.

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