銀杏健康講座  入浴のすすめ

 温泉やお風呂の効用が見なおされています。
 日本人は昔から風呂好きな民族として知られています。入浴は日常生活のひとつですが、身体を清潔にするだけでなく、疲れをとったり、寒い季節には体を温めたりいろいろな効用があります。今治市や周辺にも温泉や温泉を利用した施設が多くできています。それを利用したり楽しんだりしない手はありません。

疲労回復はどうしてできるのでしょうか。

 それは入浴して体が温まると、心拍数や呼吸数が速くなって血液循環がよくなります。そうすると当然、血液の中に酸素が多く取り込まれることになり、新陳代謝も活発になること、また水の圧力(浄水圧作用)などにより疲労物質である乳酸を速く減少できることになるのです。
 このように入浴は肉体的な疲労をとるだけでなく、精神的なリラックス効果も大きいようです。

 ただし、入浴の効果は人によりさまざまで、症状のある人や病気の方は入り方のコツを知っておくことが大切です。

入浴法

おじさんの左手にあるのは、シャンプーです
徳利ではありません
1)42度以下のぬるめのお湯に、たとえば冬なら40度のお湯に15から20分、夏なら38度のお湯に20から30分ゆっくりつかるのが、自律神経の副交感神経を刺激して体の緊張がほぐれ、疲労回復に適しています。

2)足から徐々に上の方にかけ湯をする。十分にかけ湯をしたら、ゆっくり浴槽に入る。肩までつかる全身浴は心臓や肺に負担がかかるので、胸までつかる半身浴のよい場合もある。基本は下半身が温まると全身の血行がよくなるということ。冬場は肩が冷えないように肩にタオルをかけたり、かけ湯をするとよい。

3)お湯につかって軽い運動することで、疲労回復効果が高まります。また、クアハウスや温水プールなどでは水の浮力や粘性を利用した水中運動やリハビリテーションが、心肺機能や筋力トレーニングとしての効果を上げています。

4)長時間の入浴は「湯疲れ」の原因。少し汗ばむ程度にするとよいでしょう。

5)疲れているとき:無理して入らない。

6)寝る前に「足湯」をするだけでも全身の血行がよくなり、体が温まる。「足湯」は洗面器などに43度の熱めのお湯を入れ、約10分間足を浸けます。入浴する体力のない場合にも適しています。

7)風邪をひいてが出ている場合は入浴はもちろん足湯も控えた方がいいようです。解熱して落ち着いてからゆっくり入浴しましょう。

8)高血圧の場合の注意:お湯の温度はぬるめの38から41度にする。脱衣場が寒くならないように暖かくする。一番風呂は肌を刺激しやすいので避ける→他の人が入ったあとか、入浴剤で肌触りを軟らかくするとよい。入浴時間は10分以内。入浴による血液濃縮を予防するには水分補給。朝のシャワーや入浴は避ける。普段から血圧を測り、収縮期血圧180以上、または拡張期血圧110以上の時は入浴しない。

9)入浴剤の効用:
 温泉系:温泉の成分に近いミネラルが含まれています。これらの成分が皮膚表面のたんぱく質と結合して、薄い膜をつくるので、保温効果が高いのです。
 炭酸ガス系:溶けると炭酸ガスの泡を発生します。炭酸ガスの作用で毛細血管を拡張し血行をよくします。
 生薬系:薬草やハーブの成分により、香りによるリラックス効果が期待されます。

10)胃腸病の場合の入浴法:食事直後の満腹時の1時間と空腹時の入浴は避けてください。胃酸の分泌が多すぎると、自分の胃液で胃粘膜を傷つけてしまいます。潰瘍や胃炎の人は熱めのお湯(42から43度)に入浴し、胃酸の分泌を抑えるといいでしょう。
 胃下垂:胃の働きが悪く消化不良からくる胃もたれや胸やけ、食欲不振などの症状がある場合は温冷交代浴がいいそうです。38から41度のぬるめのお湯にゆっくりつかり、胃液の分泌を亢進させます。体が十分温まったら、浴槽の外へ出て20度程度の水のシャワーを10秒ほど浴び、またお湯に入ります。これを5回繰り返すと次第に胃の働きが活発になります。(ただし、高血圧の人は血圧が上がるのでしないこと)
 便秘:腸の蠕動運動が低下した弛緩性便秘や直腸性便秘では腸の動きを活発にするため、ぬるめのお湯に入ります。体が温まったらおなかのへそを中心に、手のひらでゆっくりマッサージを5から10分します。腸の動きが活発になります。浴槽から出て42から43度の熱めのシャワーを5秒ほど下腹部にあて、次にシャワーの温度を20度くらいに下げて同じように5秒ほどあてます。この温冷交代浴を5回ほど繰り返すと、下腹部が刺激され、腸の動きが活発になり、便意をうながすことができるといいます。また、大腸の動きが強すぎてウサギの糞のようなコロコロした便しかでない痙攣性便秘には、43度程度の熱めのお湯にゆっくりと入り、大腸の動きを抑えてやると便秘を和らげることができるようです。(高血圧の人はぬるめで入って温度を上げてゆき5分ほどつかります。)風呂から上がって、へそを中心に熱めのシャワーをあてます。
 下痢:腸の動きが活発になりすぎるために起こるので、熱めのお湯で半身浴をします。マッサージはしないでください。

 以上、いくつかの病状にあわせた入浴法をご紹介しました。
 介護保険支援専門員のテキストと水治療学が専門の植田理彦先生のお話を参考にさせていただきました。

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