銀杏健康講座:C型肝炎ウィルス

■肝炎について
 検診でGOT,GPTが高値になると、肝炎の疑いとして二次検診とか病院で精密検査を受けるよう指示されることは、ご存知の方も多いと思います.
 このような肝機能異常を起こす原因となる代表が肝炎ウィルスです.ウィルス性の肝炎には少なくとも世界中で6種類ありますが、日本でおもなものはA型、B型、C型の3種類になります.今回はC型肝炎ウィルスにスポットを当ててみましょう.

■C型肝炎
 この肝炎は1994年までに輸血を受けた人、血液製剤で治療を受けた人、不完全な滅菌の注射針を使った人などが感染経路となります.このウィルスはある意味で感染力が弱いので、母子感染やsexでの感染はB型にくらべると比較的まれであることがわかっています.

■その経過
 C型肝炎ウィルスに感染すると急性肝炎を発症します.このうちの20〜40%の人が自然に治癒していきます.残りの60〜80%の人は慢性肝炎に移行していきます.ただ一部の人は無症候性キャリアーといってC型肝炎ウィルスに感染はしているが肝機能に異常がない状態になる場合があります.
 しかし、10〜20年後には必ずと言っていいほど慢性肝炎に移行していきます.このどちらの経過をたどっても慢性肝炎になった人の30〜40%の人は肝硬変に進行していきます.このようにしてC型肝炎ウィルスによって肝硬変にまでなった人は60〜80%の高率で肝細胞癌を併発することが知られています.これが重要な問題になるわけです.

■肝機能検査
 GOT の正常範囲は検査施設により少し違いはありますが10〜40です.GPT は5〜45です.おおまかな目安として、このGOTやGPTが500以上、多くは1000〜10000になると急性肝炎、50〜500では慢性肝炎が疑われます.肝硬変では50〜100のことが多くなりますが、正常範囲に収まっていることもあるので、肝機能異常を以前経験したことのある人は注意が必要です.これ以外にも肝機能検査はいろいろあります.今年度より肝炎ウィルス検診が始まります.

■肝炎ウィルス検診
 今年度から35歳から5歳きざみでC型肝炎ウィルスの検診がおこなわれることになりました.これはHCV抗体を基本に検査するものです.感染の有無がはっきりしない人にはHCV-RNAを追加検査することになっています.この検診でC型肝炎ウィルスに感染していると診断された場合は適切な治療と経過観察が必要になります.すでに今までに検診やドックでHCV抗体陰性だった人は心配いりません.

■HCV抗体とHCV-RNA
 HCV抗体検査が陽性のすべての人がC型肝炎にかかっているわけではありません.すでに治っている人も抗体検査では陽性にでます.抗体陽性の人は次の段階としてHCV-RNA検査をします.これで陰性になった人は治った人です.陽性の人はGOT,GPTが正常範囲なら肝炎を起こしていないキャリアとして経過観察をします.GOT,GPTが高値で肝炎を起こしている人は治療が必要になります.


 検診や診察の時にC型肝炎を疑われた人はHCV-RNAの検査を受けられましたか.いままでに検診など受けたことのない人や、病気になったことがなくて病院に行ったことのない人は、この機会に一度、C型肝炎のチェックを受けてみてはいかがでしょうか.


■日常生活上の注意
 肝臓は沈黙の臓器といわれています.相当、重症になるまで症状はあまりみられないからです.例えば、肝硬変になっても、合併症の腹水や黄疸がでるまで気がつかない場合もあるくらいですし、肝臓癌を合併しても末期近くまで仕事ができる人もあるくらいだからです.ですから、注意といってもあまりはっきりしたものはありません.ただ、慢性肝炎が進行してきたり、肝硬変になってくると、消化管から吸収した栄養素が肝臓で代謝されるのに相当、時間がかかるようになります.その時に身体を休めておいてやると、機能が低下した肝臓でも残った能力を発揮できるようになります.そのため、食後は安静にする習慣をおすすめします.とくに肝硬変になった人は慢性肝炎のときの2倍くらい安静時間をとる必要があります.
 アルコールはウィルスを保有している人が飲むとウィルスが増殖したり、肝硬変や肝癌に1.5倍くらいなりやすくなるというデータがあります.ただ、肝機能が正常のキャリアの人には適量くらいはいいようですが...それ以外には特別な注意はありません.

■キャリアの出産
 C型肝炎ウィルスはB型肝炎ウィルスよりは、出産時に母子感染を起こすことは少ないようです.非常に高ウィルス量の母親の出産で起こることはありますが、それも2%程度です.もし、母親が高ウィルス量の場合は適切な時期に帝王切開による出産をすれば母子感染を予防できるようです.また、生まれてからの母子感染はほとんどないとのことです.

■治療1.インターフェロン
 インターフェロンは当初、期待されたほどの効果がでなかったり、副作用がクローズアップされてしまいましたが、その後にインターフェロンの治療に適した条件のあることがわかってきました.C型肝炎ウィルスにいくつかのタイプがあること、ウィルス量によっても効果が違っていたのです.日本では1b,2a,2bがあり、1bの頻度が高いのですが、2aか2bの人には効果が非常に期待できます.また、ウィルス量が少ないほど効果があります.
■治療2.リバビリン
 30年前に発見されたリバビリンという薬は効果がはっきりしなくて、長い間、忘れられていました.しかし、インターフェロンとの併用で効果の上がることがわかり、今年からC型肝炎ウィルスに使われるようになりました.とくにインターフェロンには効果がもうひとつだった1bの人にもいいようです.しかし、ある副作用がありますから、お心当たりの方は主治医や専門医におたずね下さい.
■治療3.従来法
 上記のようなインターフェロンやリバビリンを使わない方法には、
 注射による強ミノC、経口薬のウルソ、漢方薬の小柴胡湯
 などがあります.この治療法によって肝機能のGOT、GPTが正常化できれば、肝細胞癌の発生はかなり予防できるようです.GOT、GPTが100以上では期待は薄いので、ひとつの目安としては100以下に、できれば70以下になるようコントロールして下さい.

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