銀杏健康講座  糖尿病、その2

 前回は“糖尿病とはどんな病気?”“その診断は毎年の検診でわかる?”“糖尿病の種類は?”“糖尿病はどうして治療せんならん?”などについてでした.
 糖尿病をほうっておいたり、不適当な治療をしていると、全身にいろいろな合併症を起こし始めます.今回は糖尿病の合併症についてです.

三大合併症は細小血管に起こる!
 (1)網膜症:網膜は目の玉(眼球)に入ってきた光が像を映すスクリーンの役目をする部分です.その像が視神経を通じて脳に伝達され、物を見ることができる仕組みになっています.網膜は脳の一部ともいえる部分で非常に多くの毛細血管が分布しています.高血糖状態が長く続くと毛細血管が障害され、網膜内で小さな出血をおこします.また、毛細血管がつまって血液の液成分がにじみ出ると眼底検査で白い点(硬性白斑)が見えるようになります.この段階では視力低下はなく自覚症状はありません.さらに進行すると、静脈が蛇行し、軟性白斑が現れます.軟性白斑は毛細血管細動脈がつまって血流が悪くなっている状態ですから、それをカバーするために新生血管ができます.ところが新生血管は壁が薄いために非常に出血しやすいのです.もし出血すると、眼内に血が広がって物がぼんやりとしか見えなくなります.自覚症状の現れです.この状態を増殖性網膜症といいますが、ほっておくと網膜剥離が起こり、視力が極端に低下します.糖尿病の人に眼底検査が必要なのは網膜症の早期発見が必要だからです.

 (2)腎症:腎臓は血液を巧妙な仕組みでフィルターのように濾過し、身体に不要な老廃物を尿として排泄します.その中心的な仕組みが毛細血管の集合体の糸球体という組織です.糖尿病で高血糖状態が続くと、糸球体の毛細血管が障害されて血液濾過する機能が低下します.これを糖尿病性腎症といいます.腎症になると蛋白尿が出ますが、進行して腎不全になり尿毒症に至って透析が必要になります.この腎症にならないためには、微量アルブミン尿検査で早期発見のチェックできます.本格的な蛋白尿が出はじめる前に微量アルブミンだけ出る時期がありますが、この時期に、より適切な血糖コントロールをすることでこの腎症を予防することができるのです.

 (3)神経障害:糖尿病で高血糖の状態が長く続くと、神経細胞や神経線維が障害されます.これは神経細胞に栄養や酸素を送っている毛細血管が障害され、神経細胞内の代謝も乱れるからです.神経障害は手足の手袋や靴下を履く範囲が“しびれ”たり“知覚異常”を起こしますが、ひどい場合にはその部位に細菌感染が起こっても痛みを感じないため、ほうっておく間に“壊疽”になり切断せざるをえない状態にまでなります.

糖尿病は大血管の動脈硬化も促進する!
 動脈硬化症は高血圧、高脂血症、肥満、運動不足、加齢などの原因が重なり合って起こります.そこへ糖尿病が加わると、発症する頻度が2〜3倍も高くなるのです.また、脳の中・小血管で起こる脳梗塞や冠動脈の閉塞で起こる心筋梗塞の発症は糖尿病にかかっている期間には無関係で、糖尿病予備軍状態の人にもよくみられます.ですから、動脈効果の予防については糖尿病になった人だけでなく、ちょっとお腹が出てきたけど自分は健康と思っている人にも生活習慣である食事や運動に対する注意が必要になるのです.

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