銀杏健康講座:熱中症
■熱中症とは
 高温下の労働や運動で体温調節や循環機能が働かなくなったり、水分・塩分のバランスを崩して起きる障害です.軽度のうちに対応しないと死に至る重症のケースまであります.
 どのような場合に起こるのでしょうか?夏期になると熱波で高齢者や弱いものが大勢倒れたり、幼児が閉めきった自家用車の中に置き去りにされて、車内温度の上昇で不幸な結末になったりしたニュースをご存じの方も多いでしょう.また、スポーツ活動中では体熱の放散がうまくいかないときに発症したり、暑い環境での労働時にも起きることがあります.通常は暑いときにだけ起こるものと思われがちですが、それほど暑くない場合にも起こることがあります.たとえば、下痢などで脱水気味になり無理してきつい仕事や運動をした場合などです.また、きつい仕事や激しいスポーツの場合、ある程度時間がたってから起こりやすいことが予想されますが、スタートから比較的短時間で発症する例もありますから、注意が必要です.

■コンディションのチェック
 日頃の健康管理は熱中症の防止に役立つだけでなく、ケガの発生を少なくし、仕事の能率アップにもつながります.
1)仕事(運動)前後での体重の確認:仕事前後の体重減少が2%以内に収まるような水分補給が適切.翌日の仕事前には前日に減った分の80%は回復するように.
2)睡眠状況:寝不足は熱中症を起こしやすい.また、疲労の蓄積や集中力の低下でケガなど誘発しやすい.
3)ケガ・病気の把握:ケガや病気は軽症であってもそのまま仕事をすると、健康な状態に比べてストレスがかかり、精神的にも体力的にも疲れる原因になる.そういう場合は負担のかからない部署への変更とか、仕事量の調節が必要になります.
4)その他:発熱、疲労、下痢、二日酔い、貧血、循環器疾患なども原因になります.とくに下痢には注意!

■水分補給について
 汗をかくと、“あぁ、水分補給しなくては”と思いつきますが、汗が見えなくても不感蒸泄というシステムで身体から水分が発散しています.この失われた水分を飲食物で補えばいいわけです.不足すると脱水症になってしまうのです.しかし、水だけ飲んでも吸収が良くないため脱水状態からの回復が遅くなります.そのため汗とともに失われる塩分をいっしょに飲むと、この欠点をなくせます.しかし、塩分をいっしょに飲むことは美味しくないし、あまり飲みたくなりません.そのため、糖分を混ぜてちょうど美味しく飲める味付けがおこなわれています.こうすると、仕事や運動時のエネルギー補給にも役立つわけです.ただ、下痢している場合はそのような飲食物で補おうとしても、失敗してしまいます.というのは、下痢している胃腸は本来ある消化吸収能力が低下しているからです.そういう場合には医療が必要になるわけです.

■もし熱中症が起こってしまったら
 まず、どのような症状があるか確認します.意識の有無も確認!(名前を呼ぶ、肩を軽くたたいて応答ができれば、名前・生年月日・今いる場所・今日の日付などを質問して).意識がない場合や回復しない場合は危険です.応答が鈍い、言動がおかしい場合も注意が必要ですから--->必要な手当をおこないつつ、救急搬送を手配します.

■手当の基本
 安静にさせる--->安静を保てる場所へ運ぶ--->衣服をゆるめる--->身体を冷やしやすい状態にする--->涼しい場所(クーラーの入っている場所、又は日陰で風通しのよい場所)で冷却--->意識がはっきりしている場合は水分補給(意識障害があったり吐き気がある場合は点滴必要)

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