銀杏健康講座:ヘリコバクタピロリ菌
 胃カメラで見たヘリコバクタピロリ菌陽性の胃潰瘍です。何度も繰り返しているので、まわりにいくつか瘢痕(傷あと)が見えます。

 ピロリ菌が発見されて20年になり、みなさまにもおなじみ?の胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因がピロリ菌であることは、よくご存知だと思います。
 ピロリ菌が胃粘膜に感染すると、すべての胃粘膜は慢性活動性胃炎という状態になり、そのピロリ菌の持続感染の合併症として起こってくるのが胃・十二指腸潰瘍や、萎縮性胃炎や腸上皮化生などです。

ピロリ菌を顕微鏡で見てみると、
胃粘膜細胞の表層にゴミのようにくっついているのがピロリ菌です。 もう少し倍率を上げると、短い棒状のピロリ菌が多数見えます。

 胃・十二指腸潰瘍に関してはピロリ菌の除菌により潰瘍の再発がはっきり減少することから、胃・十二指腸潰瘍でまず第一に選ばれる治療法になっています。
 もう一つ、現在注目されているのは、ピロリ菌が胃炎を起こした粘膜を背景にして、胃がんや胃リンパ腫などが発生するのではないかということです。1994年WHOはピロリ菌を胃がんの発がん原因の最も可能性の高いグループ1としました。発がんに至る機序については未だ研究が始まったところですが、ピロリ菌陽性の胃リンパ腫で悪性度の低いものは、除菌治療によりかなり多くの例で改善することがあることがわかってきました。今後のこの領域の進歩が期待されるところです。

 従って、ピロリ菌がご自分の胃の中に住みついているかどうかは、健康管理の上で大切です。
 では、どのくらいの方の胃の中にピロリ菌は住みついているのでしょうか?ピロリ菌を調べるには、胃カメラで胃の中のピロリ菌を探すのが確かですが、血液検査(ピロリ菌抗体検査)でかなりわかります。
 当院で健康診断を受けられた370名の方に、この方法でピロリ菌抗体を調べました。ピロリ菌抗体検査の結果は、陽性・保留・陰性と判定します。

年代別ピロリ菌抗体陽性率

 まず、年代別の陽性率を調べました。
 が男性、は女性です.

 だいたい年代とともに、陽性の方が増えています。男性が女性より陽性率が高く、男性も女性も、20才代と30才代はほぼ同レベルでした。30才代から40才代になる頃に段差があるようです。
年代別ピロリ菌抗体陰性率

 ピロリ菌抗体の陰性率からも、よりはっきり裏づけられます。
 女性は年代による差が少ないですが、男性は40才代以上で急に陰性の方が減っています。
 なお、今回の検査法で保留とされた方の中にも、詳しく調べてみると、胃の中にピロリ菌が見つかった方が、結構いらっしゃいました。

 以上、ピロリ菌が胃の中に住みついている方が、決して少なくないことがおわかりいただけたと思います。潰瘍の再発でお困りの方、潰瘍にはなってないけれどしょっちゅう「胃」の症状で悩まされている方は、たいてい、このピロリ菌のいたずらです。
 お気軽にご相談ください。

 血液検査で、ピロリ菌が住みついているかどうかは、かなりよくわかります。しかし、血液検査では、食道や胃・十二指腸にどんな病気があるかは、わかりません。必ず、胃カメラでチェックしましょう。

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