銀杏健康講座:インフルエンザ2005

■はじめに
 インフルエンザの流行は毎年12月初旬から翌年の3月いっぱいまでです.昨年は暖冬のため大流行の予報はありませんでしたが、はやばやと10月に大阪で、11月には東京でインフルエンザによる学級閉鎖がありました.しかも、今年5月まで発生がみられ、流行期間の長期化が特徴となりました.天候異変によるものかもしれませんが、やはり、今シーズンも注意が必要です.なお、鳥インフルエンザの最新情報に気をつけましょう.

■病状と経過
 インフルエンザウィルスは感染した人のせきやくしゃみで空気中に飛び散り、また会話の際に細かい飛沫によっても、それを吸い込むことによって感染します.潜伏期は1〜3日と短く、症状は38℃を越す発熱、全身倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛等で急激に発病し、次いで気管支炎症状がでます.3〜5日の高熱持続後、次第に全身症状は軽快し、合併症がなければ1週間後には再び働けるようになります.普通の風邪と比べて症状がきつく、感染力が強いという特徴があります.

■ウィルスの種類
 インフルエンザにはA型、B型、C型があり、主に流行するのはA型とB型です.とくにA型は重症化しやすく、過去に大流行したことがあります.最近流行しているのはAソ連型(H1N1)とA香港型(H3N2)です.数十年に一度、大きな変化を起こし世界的な大流行をおこします.
今シーズンのインフルエンザのタイプ(2005年10月)
 A型株:A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)
     A/ニューヨーク/55/2004(H3N2)
 B型株:B/上海/ 361/2002
このタイプのワクチンが準備されています.

■インフルエンザに感染したら
 もし、インフルエンザに感染して、比較的、症状が軽い場合は風邪と区別がつきにくくなります.そのときは鑑別診断に検査をすることになります.鼻の奥やのどの粘液を綿棒でとってインフルエンザ迅速検査キットで検査します.15分以内にA型かB型ウイルスかの感染がわかります.発病して24時間もたっていればほぼ診断できます.このインフルエンザ迅速検査キットは毎年のように改良され、シンプルな操作でより正確な検査ができるようになってきています.

■治療
 抗インフルエンザ剤を使います.タミフルとリレンザがA型、B型どちらにも効果があります.どちらの薬剤も発病2日以内に使用開始しないと効き目がありません.ですから受診するのは早めのほうがよいわけです.使用開始して約30時間で、早ければ翌日には熱が下がりはじめ、全身症状が軽くなってきます.肺炎の合併が疑われる場合には抗生剤を併用します.

■予防法
 しかし、こうならないようにするには予防が一番大切です.インフルエンザ予防については、“できる限り患者から遠ざかる”“人混みにでない”“手洗い”“マスク”“うがい”などは基本的なことです.おろそかにせず、ぜひ守ってください.つぎにインフルエンザワクチン接種が基本になります.
ワクチンの効果について:
 65歳未満の健康人の場合は1000人発症するところをワクチン接種すれば200人に抑えることができます.つまり、800人を予防することができます.65歳以上の場合は1000人死亡するところを、ワクチン接種すれば180人の死亡者数に抑えることができます.つまり、820人が助かるということになるのです.

■インフルエンザワクチン
 ワクチン接種がすすめられるのは、小児、高齢者や慢性心疾患・肺疾患、肝臓や腎臓の悪い方、糖尿病、近々妊娠を望んでおられる方、同居家族に小児、高齢者、受験生をお持ちの方、流行地へ海外旅行予定の方、どうしても変更できない重要な仕事を予定しておられる方たちです.小児のインフルエンザ脳症になった場合の死亡率は高く、高齢者のインフルエンザ肺炎による死亡者は年間1万名を超したこともあります.予防はワクチン接種が最も確実です.遅くても年内には注射をすませておいて下さい.65歳以上の方には公費による補助の制度がありますので、ご活用下さい.それ以外の年齢の方は、全額自費の扱いです.料金は医療機関によって異なっているので注意! ワクチンは接種2週間後から予防効果が得られ、約5ヶ月続きます.ワクチン接種するときは、タマゴや鶏肉、金属アレルギー、37.5℃以上の発熱の有無を確認し、以前の予防接種で副作用があった場合は、受けるかどうか慎重に判断するべきなので、まえもって主治医に相談してください.

●鳥インフルエンザ
 最近は鳥インフルエンザが人間に感染したことで、新型インフルエンザが出現する危険性がいわれています.過去に人間に大流行したことがあるのは、Aソ連型---H1N1.B香港型---H3N2などに限られています.鳥インフルエンザとして、H5N1やH5N2が鳥どうしでの流行が確認されましたが、人間に感染することはないと考えられていました.ところが、1997年、香港で高病原性鳥インフルエンザウィルスの人への感染が確認され、18人中6人が肺炎を合併して死亡しました.その後も人間に感染して死亡した例が報告されています.
東南アジアに多く、2003年12月26日から2005年10月10日までの統計では、
 インドネシア:5人発症し、3人死亡
 ベトナム:91人発症し、41人死亡
 タイ:17人発症し、17人死亡
 カンボジア:4人発症し、4人死亡   計117人発症し、60人死亡.死亡率は50%以上になります.
タイでの1症例:48歳、男性.インフルエンザウィルスタイプ H5N1.感染した鳥の殺処分のときに密接に接触したことによると発表.10月13日、発症.17日、入院.19日、死亡.

今のところ、鳥から人間への感染ですが、将来、人間から人間へと感染する強力な“新型インフルエンザウィルス”に変異する可能性が指摘されています.この新型ウィルスには誰も感染したことがなく、抗体を持つ人もいません.そのため、H1N1やH3N2がはじめて出現して、世界的大流行を起こしたときのようになるのではないかと心配されているわけです.
★現在判明している事項:
*現在のインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザには効果ない.
*予防の第1は感染している鳥との接触を避けること.流行している時期に最新の情報を入手して、発生地域に旅行する場合には鳥類の入る施設にむやみに近寄らないこと.
*現在のところ、鶏肉や鶏卵を食べることで鳥インフルエンザに感染することはないと考えられている.


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