銀杏健康講座  老いを楽しむきっかけづくり

 7月1日に公務で常盤公民館で健康のお話をしてきました.
 テキストには多湖先生の「新しい人生のための15の提案」を用意してあり、大変素晴らしい内容で私ごときにはとても及ばないお話しが書いてあります.
 何をお話ししてよいかたいへんに困っておりましたが、以前、多湖先生の別の本を読んだことがあるのを思いだし、それをもとに少しばかり説明をさせていただきました.

 日本では定年という言葉は余生とか高齢に結びつきますし、実年とか熟年とかシニアライフ、シルバーエイジと変えてみてもいっこうに明るいイメージがわきません.
 しかし、これは人生50年時代の考え方です.日本人の平均寿命が伸びて、人生80〜90年の時代に職場からリタイヤする事は少しも暗い話ではありません.
 アメリカでは若いときから稼げるうちに稼いで、早く仕事からリタイヤして悠々自適の生活を送りたいということを願いながら働いているそうです.しかも定年のことをハッピーリタイヤメントといって喜ばしいことと考えています.
 ところが、現状では日本人の大多数が仕事に追いまくられて、定年後の人生設計を立てている方はごく少ないと思います.

 年をとると老人力がついてくるというか、記憶力が衰えます.このことを知能の衰えと勘違いされている方が意外と多いのではないでしょうか.
 知能は記憶力だけで決まるものではなくて、推理力、想像力、判断力などの総合力で決まるものなのです.また、経験も年をとるほど有利に働きます.この総合力や経験は何歳になっても伸ばすことができるのです.
 本宮会長がおっしゃったように今からでも遅くはないのです.ご自分に適した趣味や運動を見つけて、健康な人生を楽しみましょう.
 たとえばウォーキングもお薦めです.

 市民の森から今治城までのウォーキングコース改訂版です.
 区間距離を記してありますから、ご自分に適したコースを作って下さい.お気に入りのお店で珈琲ブレイクしてみるのもウォーキングを長続きできるコツかもしれません.
 来島大橋も季節や時間を選べばウォーキングコースとしておすすめです.


 中国や日本の古典にも参考になるお話しがでていました.

 中国の漢の時代の古典医学書黄帝内経素問の第1篇は上古天真論といい、「昔の人は健康で100歳までも長生きした.しかし今どきの人は50歳くらいで皆ヨボヨボになってしまうのはどうしてだろうか.」というところから始まり、その養生法が述べられています.

 1)食べ過ぎたり飲み過ぎたりしないようにする:好きなものでも食べ過ぎないように.
 2)心身共に過労にならないようにする:ストレスをためないように.
 3)酒に酔って無茶をしないようにする:陽気がとんでしまい、後でだるくなります.
 4)春夏秋冬の季節にあった生活をする:これについては、第2編四気調神大論に具体的に書かれていて、それはおおむね次のようなことです.

 春夏は気温が高く陽気も多くあります.それに合わせて人も活動的なのがいいのです.春に活動しないと陽気が沈んだままになり夏になっても汗が少なく冷え性になります.夏は草木が生長し陽気が最高潮に達する時期だから、適当に運動をして1日1回は発汗したり、気分的にも発散するように心がけるとよい.ついで秋冬は万物が実を結び全てが引き締まり収納され静かに貯蔵される時期.陽気も体内深く収納される.この時期は静かにしているのがいい.活動して発汗すると風邪を引きやすくなったりします.冬に無理をすると春になっても陽気が発動しません.手足がだるくなります.

 というように季節の働きに合わせた生活をすることが健康法として大切だと書かれています.
参考:素問ハンドブック/池田政一著/医道の日本社刊

 日本にも貝原益軒が84歳(1713)で著した医学書、生活の心得書養生訓があります.
 総論から飲食について、人間の生きている働き、病気になったときの心得、薬の用い方、老人の養生まで現代医学的にみても興味深く、重要な内容が含まれています.
 養生訓はたんに病気の予防や治療が書かれた医学書ではなく、「人生をいかに生きるべか」「健康に生きるということは人の生活にとって、どういう幸福を約束するものであるか」という人生の根本問題にふれ、人間の身体と自然とのかかわりを愛情を持って考察しています.

 「養生」とは尊い人間の生命を発揮させることであり、さらに生命を全う(長生き)することを意味する.
 その方法とは我々の体が持っている生きる力を自然にのびるように仕向けることであり、常にわが身の健康に心を配り、害あるものを近づけないようにするのが、養生の第一である.
 その具体的な方法とは、「心を平静に保ち、身体をたえず動かす」ことである.これは現代のストレスの多い生活にもぜひ取り入れていただきたい健康法である.
 杉靖三郎先生の養生訓を参考にしましたが、ご興味のある皆様はぜひ手に入る解説書をご覧下さい.

 私にとっては耳の痛い、ひょっとしたら日本人がそろそろ忘れかけているのではないかというようなお話しがたくさん出ています.
 たとえば...

 第8巻 養老(おいをやしなう)
 1)親を喜ばせて養う心得:親を養うことに、人としての道を楽しむこともできる.怒らせず、悲しませず、寒暑にしたがって居間と寝所を快くしてあげる。そして、美味しいものを気持ちよく食べさせてあげることである。孝養をつくすことが大切である.
 2)年寄りはあとを濁さず:孝の人間関係.親は子を思えば、老いて節度を失わぬことである.子供にだけ要求する親は、立つ鳥あとを濁すのとかわりがない.一方、子供は「親思う心に優る親心今日のおとずれ何ときくらむ」(吉田松陰の辞世の歌)の初心を忘れぬことである.
 3)老後の一日は千金の値:老人は,子の立場を考えるばかりか、人間としてまた、「自ら楽しむ」ところに、人生の本当の生き甲斐があるのであるから、「幸福な老年」を大事にしなければならない。老年は凋落の秋ではなく、実りの秋、人生の収穫の時なのである。老後とは人間完成のさいごの仕上げの時期である.

 今からでも遅くありません.健康で楽しい人生を目標にしましょう.

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